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近ごろの魔法使い  作者: 風待月
《魔法使い》の旅行
135/640

035_0020 【短編】総合生活支援部校外活動記録Ⅲ 交錯! 漁船VSクルーザーVS地獄の魔獣!

「なんてザマだ……」

「す、すいやせん……」


 (いきどお)猿渡(さわたり)に、解放されたばかり鬼瓦(おにがわら)巨躯(きょく)(ちじ)めて、角刈りの面構えに似合わない小さな声で謝るしかない。手首にはきつく縛られた縄の痕が残り、口元にはガムテープを無理矢理はがして赤くなり、顔を打撲の痕が埋め尽くしている。


「建設現場でカッパらってきたダンプで突っ込むだけの簡単なお仕事もお前にはこなせないのか!」


 怒り心頭だった。

 それもそうだろう。猿渡が言う通り、ダンプカーで建物に突っ込むだけならば、ギアを入れてアクセルを踏めば誰にでもできる。目標は動くわけはないのだから技術は必要なく、人間を直接()くわけでもないのだから、良心の呵責(かしゃく)も幾分は少ない。

 

「邪魔が入ったんだす……」


 だが、そう思われたままではたまらないと、鬼瓦は小さい声ながらも反論する。ダンプカーを盗難した建設会社の前に放置されたため、発見した血気盛んなガタイのいい男たちに殴られたのだから。普通ならば盗難した当人が縛られて乗っているはずないから、濡れ衣を主張して解放されたが、その恨みは彼の心に残っている。


「コンビニ前でオラたちを殴り倒した、あのガキたちだす……あいつら、あの旅館に泊まるみたいなんだす……」

「なにぃ……!」


 サル顔を驚愕に染めて、猿渡は(うめ)く。


「あと、バイクが一人でに動いて、オラを跳ね飛ばして……」

「…………」


 だが続く鬼瓦の弁明には、無言の一瞥(いちべつ)を返された。『コイツ頭を打ったのか? それとも熱射病で夢でも見たか?』的な意味が込められた、お世辞にも好意的とは呼べない視線で。

 それが普通の反応だろう。誰もそんな話を信じはしない。近年には、総理大臣が大手自動車メーカーの完全自動運転の試作車に試乗したことがニュースになり、販売計画も発表されているが、自動運転の二輪車については(おおやけ)な開発計画は発表されたことがない。

 しかも、どこかの学校では、ガレージハウスで無造作に駐車されていたり、部員の送迎や備品の買出しとなにかと男子高校生の便利な足にされていたり、国際免許を持つ部員以外の外国人女子高校生が茶菓子を買いに行く時の足にもされたりしているが、《使い魔(ファミリア)》は一応、秘匿(ひとく)された最新鋭軍事車両なのだから。


 明らかに猿渡が信じていない空気を感じ取ったため、鬼瓦は続きの言葉は飲み込んだ。『あの正体不明のバイクがなければ……』という言い訳をしたくとも、信憑性のない話を続けて意味があるとは思えない。そもそも勝手に動くオートバイがなかったとしても、やる気なさげな顔の割に猛獣のように動く青年と、見た目まるきり子供のくせにやたら強い少女がいて、果たして目的が遂行できたか、かなり怪しい。

 とはいえ、黙っているのも気まずい。怒りのオーラを振りまく猿渡の前に、巨躯を縮めているのも窮屈(きゅうくつ)だろう。


「あの、おやびん……」

「室長と呼べ!」


 猿渡からすかさず訂正が入ったため、鬼瓦は言い直して。


「室長……毒島(ぶすじま)は、どこに行ったんだす?」


 この場にはいない同僚のことを問うた。


「海だ。連中は二手に分かれている。だから今のうちに、片方だけでも痛い目を見せると言って出ていった」



 △▼△▼△▼△▼



 離れた場所でそんな会話がなされている頃、南十星(なとせ)(さとる)と共に、岩場にほど近い海に揺られていた。


「時間が時間だから、釣れるなんて思わない方がいいぞ」

「りょーかーい。釣れたらラッキーくらいに思っとく」


 十路はダンプカーの荷台にオートバイと人間ひとりを載せて、建設会社の近くへ乗り捨てに行った。なので南十星はその間の暇つぶしに、定員六人程度の小型漁船から釣り糸を垂らしていた。

 獲物や場所にもよるが、一般的には釣りの狙い目は早朝と夕方だ。夏の日差しが降り注ぐ午後に、釣果が期待できるとは思えないが、そもそも彼女が海に出た目的は魚ではない。


「ほのかのヤツ、食い物くらい用意しとけよ……」


 悟がこぼす内容が原因で、沢浦(さわうら)兄妹(きょうだい)の妹と、堤兄妹の兄が、共に外出したからだった。


「メシ足りなくなったのは、あたしたちが泊まることになったからだし、そーゆーふーに言うのはどうかと思うなー」


 南十星は水中でエサを躍らせるように、竿を上下させながら、真相を欠片も見せずに考える。


(ボディガードには、これが一番だろーしね……)


 無免許でダンプカーを乗り捨てに行くのだから、全員一緒というのもよくない。そして沢浦兄妹と別行動をするのを、現状では危険だ。

 だから買い物のついでになるが、十路はほのかと行動させることを提案し、南十星はおいそれとアルマデル社の人間が手出しできないよう、悟を海の上に連れ出し、別行動を行っている。


(それにしても兄貴、オセッカイする気なんかね?)


 南十星は自分を、冷酷で非情な人間だと思っている。

 物事に優先順位をつけ、もし収拾選択が必要な時が来たら、順位の高いものを守るため、低いものを容赦なく切り捨てる。非常時においては必要な思考回路だが、会社の経営不振から社員をリストラするような、実行すれば(ののし)られても仕方ない考え方だ。

 言い切ってしまうなら、十路に何事もなければ、あとはどうでもいいと思っている。土地買収がらみで嫌がらせを受ける行きずりの兄妹がどうなろうと、南十星の知ったことではない。饅頭(まんじゅう)で十路の口を物理的に(ふさ)いだのは、彼がいらない恨みを買うことを心配したからで、悟へ気を遣ったわけではない。

 もちろん南十星も相応には人情を持ち合わせているし、他人の不幸を目にすれば、思うところがないわけではない。だが兄とは違うと、彼女は思っている。


 十路はトラブルご免などと言いつつも、お節介な性格をしている。当人に聞けば否定するに決まっているし、手助けする時には『頼まれたから仕方ない』というスタンスを取っているが、南十星は兄をそういう人間だと見ている。

 今回のことでも『警察沙汰になって面倒に巻き込まれたくないから』という理由はあるが、ダンプカーの運転までする理由としては弱い。アルマデルの人間を殴り倒した傷害事件の経緯は、まだ正当性を主張できるが、無免許運転は完全な犯罪行為であり、警察にバレればそちらの方が確実に面倒になる。


(ま、兄貴ならいつもどーり『ンなコトできるか』ってことでも、へーきでやっちゃうんだろうから、だいじょーぶだろーけど)


 当然ながら()められたことではないが、彼女たちは国家権力に管理されていない《魔法使い(ソーサラー)》であるために、警察など屁とも思っていない部分がある。

 しかも十路は、色々と常人とは異なる。これが銃弾飛び交う戦場ならば話が別だが、足手まといになりうる一般人が一緒でも、日本国内でパトカーから逃れる程度ならば、南十星は心配しない。


「どこのウマのホネともつかない男と、妹ちゃんが一緒で心配だろーけどさ。ちっとは落ち着いたらどーよ?」


 十路の考えがどこにあるのか、ひとまず置く。とりあえず今は彼を守ることに傾注しようと、落ち着きなく操舵回りをいじっている悟に声をかける。


「別に心配なんてしてねぇ」

「そですか」


 本心を隠した強がりにしか聞こえなかったため、南十星は全く信じず軽く流す。

 それに悟は不機嫌そうに鼻を鳴らしたが、反論はせず、逡巡(しゅんじゅん)するような間をやや置いて、質問を発した。


「お前の兄貴……というか、お前ら、何者だ?」


 常人とは思えなくなった十路よりは、一般人の気配を(ただよ)わせる南十星の方が、まだ話しやすいと思ったのだろう。


「兄貴は旅のコーコーセー。あたしは通りすがりのチューガクセーでーす」


 やや舌足らずな声でおどけて答えると、悟のものすごく懐疑的な視線が、南十星の頭からつま先まで走った。オーバーオールでは特に平たく見える胸元に、一瞬だけ止まった気がしなくもない。


「…………中学生?」

「チビいからよく間違われるけど、ショーガクセーじゃないかんね」

「大の男を軽々と蹴り飛ばしといて、無理あるだろ?」

「あたしちょっと前まで、アクション俳優の養成所にいたんだ。それなりに格闘技やってっし、こんなガキでもおにーさんよりはケンカ強いよ」


 予想ではなく断定で、子供にしか見えない少女に言われ、プライドが傷つけられた瞬間的な怒気が発生した。


「おにーさんさぁ、昔、中二病(ヤンチャ)してた人?」


 しかし南十星は気づかなかったふりをして、構わず振り向かず話を続ける。魚信(あたり)を感じたのでリールを巻き上げたが、針にはエサすら残っていない。


「マンガのネタにされる妄想ドップリなタイプは論外として、一匹オオカミ気取ってたタイプじゃない? タイヤキの型にはまるのがイヤってツッパッてたかは知らないけど、友達で群れてるの嫌って『オレは他のヤツらとは違うんだ』とかって、どマイナーな音楽とか聞いてた? あとそんで、どーしょーもなくブキヨーで、素直になるの恥だと思ってるっしょ。あ、ちなみに図星つかれたからって、怒んのはナシね。そーゆー反応ガキっぽいし。若さゆえの(あやま)ちなトシ過ぎた大人なら、笑って流すトコだよ」


 口を挟めないように、反論を封じるように、失礼を構わずまくし立ててながら、新たに魚の切り身を釣り針につけて、もう一度仕掛けを海に放ってから振り返る。

 きっと南十星が見ていない間に、過去を思い出してしかめたり、嫌なことを言われて怒ったり、百面相をしていたと思える複雑そうな表情が、タオルで鉢巻(はちまき)した顔に浮かんでいた。


「……なにが言いたい?」

「なんかさー、おにーさん、兄貴とけっこー似てる気がすんだよね。ま、兄貴の場合は特殊すぎるけど……お?」


 竿の上下が停止した。魚信(あたり)を感じたが、魚がエサに食いついた強い反応でなく、触れる程度の弱い感触だったため、南十星も動きを止めて様子を(うかが)う。


「だからさぁ。妹ちゃんの気持ち、なんとなーくわかんだよね」

「なにがわかるってんだ……」

「おにーさん、口では邪険にしてるけど、妹ちゃん大事にしてるよね。守るためなら、けっこーなムチャでもしちゃうでしょ。だから妹ちゃんは、それが心配なワケですよ」


 悟相手に語りながら、南十星は思い出す。

 一緒の時は兄に対して、なにか言いたいけど言えないといった、オドオドした態度を見せるほのかの姿と。

 彼女を社会の闇に関わらせまいと戦っていた、十路と離れて暮らしていた五年の時間を。


「そんなワケで、もーちょっと素直になったほーがいいと思うな」

「なにを素直になれって言うんだ」

「たとえば、今の状況が苦しいとかって。こーゆーのって、いっそ弱音を吐いてくれた方が、かえって安心できるんだよね」


 五年間の南十星と、今のほのかの心情は、異なるだろう。

 辛い戦いを強いられていた兄の心情は、南十星も理解できなかった。しかし別口から情報を与えられていたため、想像することができた。

 だから十路が知らぬ場所で涙を流し、実際に彼と顔を合わせる時には、なにも知らない無邪気な妹を演じて、笑顔でそれとなく励ますこともできた。

 しかしながら目前の男の心中を、その妹は(うかが)い知る情報を持っていない。


「……別に。連中が嫌がらせしてこようと、大したことない」


 そして兄がこの調子ならば、心中を知ることなどできないだろう。心配しながらもそれを口できず、そっと見守ることしかできない。


「にはは。おにーさん素直じゃないね。オトコの人って、たいてーミエっぱりかもしんないけど」

「余計なお世話だ……」

「うん。ヨケーなお世話だよ。だからついでに、あとふたつ言っとく」


 そして、天真爛漫(てんしんらんまん)な少女が豹変し、戦士としての顔を垣間見せる。


「家族ってっても、言葉にしなきゃ伝わらないことの方が多いから、『言わなくてもわかってくれる』なんて思ってると、取り返しのつかないことになるよ。あと、なんでも自分ひとりでなにかできるだなんて、ガキの考え方だからね」

「…………」


 少女に似つかわしくない獣の空気に、悟が息を呑んだ。話す内容が人生の先輩からの説教じみているが、それを語る少女の雰囲気が普通ではないため、なにも言い返すことができない。


「兄貴に伝えなきゃいけないことを伝えなくて、ひとりでなんとかしなきゃって突っ走って、ガキだったあたしは冗談抜きで死にかけたから、忠告しとく」


 そこで竿に重い衝撃が走り、大きくしなった。


「おっしゃー! 来たー! 大物だー!」


 南十星は意気込んで立ち上がり、リールを巻く。数日前に死戦を繰り広げた少女は、一瞬にして無邪気で活発な女子中学生へと帰還した。

 やがて海の中から影が浮かび上がり、水面を割って飛び出した大物は。


「ゴム長かよ!?」


 飾り気などなにもにない、女性がファッションとして履くには程遠い、実用性オンリーの黒いゴム製長靴サイズ二七センチが釣り上げられた。

 そのまま海に放り捨てたくても、釣り針から外す必要ある。そもそも豊かな自然に恵まれたオーストラリア育ちの南十星は、こういうゴミは放置しないタイプだったりする。


「お?」


 だが長靴を手にすると、中身に気付いた。

 傾けると海水と一緒に軟体がビシャリと音を立て落ち、船の甲板を八本の足で這いずり回る。

 海底で長靴を住処としていたのだろう、タコが一緒にあがってきた。


「なんつーか、ビミョー……」

「タコがか?」


 言葉通り微妙な顔をする南十星に、ようやく再起動した悟が声をかける。

 獲物には違いないが、少女が軟体動物を、しかも間接的に釣り上げて嬉しがるとは、普通は思わないだろう。


「それもだけど、もっとこー暴れる魚とファイトして、ガツンとゲットしたいわけですよ」

「岩礁があるからカサゴなんかはここでも釣れるし、運がよければイシダイが釣れるんだけどな」

「ま、タコも今日の晩メシには違いないか」


 そう言って南十星は納得し、長靴を外した釣り針に、新たなエサをつけようとして。

 ふと顔を上げた。

 水平線の向こうから、船が高速で近づいてくるのに気付いた。船のサイズはこちらの漁船より大きい、『モーターボート』と呼べば想像するレジャー目的で使われるような、喫水線が高い船体だ。

 近づくにつれて、風防がある運転席には、見覚えある禿頭(とくとう)長身の男が確認できた。


「アイツ……!」


 悟も気付き、舌打ちをする。

 ボートはまっすぐに彼らが乗る船を目指す。嫌がらせに波をぶつけるか、船体そのものをぶつける気か、それはわからないが、相手の意図がわかった時には遅い。


「おにーさん。船あっち向けて停めて」


 だから南十星は指示を出す。さすがに無邪気さは消えているが、その声は落ち着いた何気ないものだった。


「停める?」

「ん。向けるだけでいいから。とゆーか、それ以上なにもしないで」


 逃げるわけでも、避けるわけでもない。

 悟は迷った様子を見せたが、船に乗せているのはただの少女ではないと考え、彼女がする行動を信じたらしい。指示通りに船のエンジンをかけて回頭させただけで、他はなにもしなかった。

 ボートはどんどん近づいてくる。その間に南十星は、甲板を這い回っていたタコを捕まえて、船の後方へと距離を取る。


「我が(にえ)から解放してしんぜよう! 地獄の魔獣ザ・シー・オブ・ジャパン・デビルフィッシュ! ()くがよい!」


 なんだかテキトーな前口上を述べて、獲れたて新鮮な地獄の魔獣の胴体(あたま)を掴んで振りかぶり、(とも)から舳先(へさき)へと助走をつけて。


「きゃっち・あーんど・りりーーーーすっ!」


 力いっぱい投げた。

 刺身か酢ダコか唐揚げになる運命から解放され、慣性を計算された放物線を描く日本海産ミズダコはというと。

 なんとなく親近感を抱きたくなる、『禿頭痩躯』の顔面に着弾した。

 エンジン音によってかすれたうめき声を上げながら、男はタコを引き剥がそうするが、かえって吸盤で顔面に貼りついてしまう。ハンドルから手を離してもがいても、なかなか引き剥がせない。


「ばっははーい」


 衝突コースをはずれ、手を振って見送る南十星の目前を、ボートは空しく過ぎ去っていく。


 そして、飛んだ。

 車が衝突したような派手な音は発生しなかったため、『事故』という言葉とはイメージが異なる。しかし波で水面が盛り上がったところに、岩礁の出っ張りにジャンプ台のように乗り上げたため、奇跡のタイミングで岸壁と船縁(ふなべり)が水平になるのは、立派な海難事故だろう。

 一際高いエンジン音を残した後、スローモーションになったような錯覚の中、ボートはトビウオのように優雅に空を舞って。

 偉大なる地球の重力に導かれて、落ちた。五メートル以上ある岸壁を飛び越えたため、海面から見上げる南十星たちの視界から消え、その行く末を見届けることはできない。しかしスクラップ処分場か建物解体現場で聞こえるのと似た、メキャゴシャバキガコなどという音が届いたので、船体が四散したことは推測できる。


「…………………………………………」

「…………………………………………」


 南十星は予想外の惨事に、悟はあまりのあっけなさに、絶句した。

 タコを投げたのは嫌がらせへの意趣返しで、まさかボートを破壊しようなどと考えるはずもない。


「……とりあえず今の、見なかったことにしたいなぁ……」

「いいんじゃないか……?」

「いやぁ、アレ放置はマズくない?」


 さすがに顔を引きつらせる南十星が指差す先には、ボートが岩礁に乗り上げた際に振り落とされた、海面を叩いている丸い頭が二つある。ひとつはもちろん『禿頭痩躯』で、もうひとつはその禿げ頭に乗ったタコだ。


「た、助……! がぼっ! 泳げ……!」


 なにを言いたいかなど、態度を見ればわかる。救命胴衣など着けていないため、このまま放置した場合の未来も予想できる。


「せめて浮き輪くらいないと、たぶん死ぬよ?」

「…………仕方ねぇなぁ」


 本当に嫌なのだろう。だが、ここで見殺しにした場合のことを考えると、いくら気に食わないことをする相手でも、後味悪くなると思ったのだろう。

 悟は船に積んであった浮き輪を、おぼれる男に放り投げた。


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