表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神騎士様との初夜で双子を授かりました【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 氷雨そら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/83

家族 4


「ベルティナ様!」

「ごきげんよう皆さま……もしやこちらのお子様は」

「甥と姪ですわ」

「ルティア・フィアーゼです。……ほら、ハル」

「……ハルト……フィアーゼです」


 貴婦人たちがざわめき、視線がハルトとルティアに集まった。

 ハルトの声は完全に尻すぼみで途中から消えてなくなった。

 ルティアは微笑んだがハルトはルティアの陰に隠れている。だが、四歳なのだ。そんな姿も可愛らしい。


「――姉と義兄ですわ」

「……リアム・フィアーゼだ」

「エミラ・フィアーゼですわ。皆様、これからよろしくお願いいたします」


 ――もう少し愛想良く、旦那様。

 家ではあんなにニコニコしているのに。


 けれど貴婦人たちは、旦那様の無表情さは気にしていないようだ。

 皆、頬を染めている。


 人が次々と集まってきた。

 お義母様の視線が痛い。


 音楽が流れ始める。

 皆が踊りの輪に加わっていった。


「……ハルト、がんばりなさい」

「……うん」


 ハルトが大きく息を吸い込み、それから笑みを浮かべた。


「……君と踊る栄誉を僕に」


 まだ踊り始めていなかった参加者の間にざわめきが広がった。

 そう、ハルトの小さな貴公子があまりに可愛かったからであろう。


 私も心の中であまりの可愛さに悶えた。


「――とても光栄ですわ」


 二人は洗練された仕草でダンスの輪に加わっていった。

 子どもとは思えないほど滑らかに踊りだす。


「先を越されたが……踊ろうか」

「ええ……」


 お祭会場のような赤い光と淡い水色の光。

 キンキンギラギラまぶしくて。

 けれど、これくらいでちょうど良いのかもしれない。

 旦那様はやっぱり今日も格好良すぎて、踊るとき緊張してしまいそうだから……。


 * * *


 そしてパーティーはお開きとなる。

 私たちはもう一度お義父様とお義母様に挨拶をし、フィアーゼ侯爵邸をあとにする。


「「疲れたね〜!!」」

「二人とも立派だったぞ」

「「うん!!」」


 旦那様に褒められると二人はニコニコと笑った。


 馬車に乗り込もうとすると、ベルティナが声をかけてきた。


「姉様」

「ベルティナ、今日はありがとう」

「いいえ、お役に立てたのなら何よりです」


 彼女のおかげで知り合いもたくさんできた。社交界参加の足がかりになるだろう。


「……気をつけてくださいね」


 扇で口元を隠し、ベルティナが私の耳に唇を近づけてくる。


「……どういうこと?」

「フィアーゼ侯爵夫妻が王弟殿下と近づいているという情報を得ております」

「……王弟殿下と」


 王弟殿下……現在の国王陛下と苛烈な王位継承争いを繰り広げていたお方だ。

 フィアーゼ侯爵家は、現在の国王陛下の王位継承に尽力してきたはずなのに……。


「私は辺境伯領に戻らねばなりません。くれぐれも用心なさって……」

「わかったわ」

「彼女がいるから大丈夫だと思いますが」


 ベルティナの視線の先、アンナが眼鏡を外しこちらを見ていた。

 彼女はいったい何をしていたのだろう……。

 もしかして、王家の影であるはずの彼女が私の侍女になったのは、そのことも関係しているのだろうか。


「姉様、またお会いしましょう」

「ええ、次に会えるのを楽しみにしているわ」


 ベルティナは踵を返すと颯爽と去って行った。


「――行こうか、エミラ」

「ええ、旦那様」


 恐らく旦那様はすでにその情報を得ていたことだろう。

 騎士団長である彼は、私に話せないこともたくさんあることだろう。


 ――あるいは過保護すぎるせいか。


 馬車が動き出す。

 子どもたちは疲れていたのだろう。屋敷に着く前に眠ってしまった。

 何となく波乱を感じながら、私は車窓を眺めた。

 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ