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死神騎士様との初夜で双子を授かりました【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 氷雨そら


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騎士団長任命式 10


 騎士団長様たちの輪に近づいていく。

 彼らは武器を持てば王国でもトップクラスの実力を持つだけでなく、歩くだけで周囲からの注目を集めるような美貌を併せ持つ。


 ――もちろん、それは旦那様も同じことだ。


 魔力がまったくないために戦う力を持たず、容姿もごく平凡な私が隣に立っていることが今でも不思議で仕方がない。


「フィアーゼ卿。このたびは騎士団長任命式おめでとうございます」

「ありがとうございます。イースト卿」


 一番に祝辞を述べたのは、辺境騎士団長シノア・イースト卿だ。

 美しい金色の瞳と青みを帯びた黒髪。精悍な顔立ちをしている彼は、私と顔見知りでもある。


「おめでとう、リアム」


 気安く旦那様の方を叩いたのは、先ほど会話した第三騎士団長ハロルド・スフィーダ卿。

 ほかの騎士団長様と並んでもやはり大きい。


「おめでとう。フィアーゼ卿」


 第二騎士団長ラペルト・リーゼ卿は紫色の瞳も相まって神秘的な印象だ。

 そういえば彼は弓使い同士、妹のベルティナとも親交があるという。


「ああ、ありがとう。これからもよろしく頼む」


 旦那様は私たちの前と違って、感謝の言葉を述べていても笑みの一つも浮かべない。

 これが旦那様の普段の様子なのだろうが……ルティアとハルトが不思議そうに見ている。

 二人の前では旦那様はよく笑うし、少しだけ頼りない。

 よそ行きの顔を見るのが珍しいのだろう。


 最後に歩み出てきたのは、近衛騎士団長ロイス・ベルセンヌ卿だ。


「おめでとうございます。フィアーゼ卿」

「ベルセンヌ卿……ありがとうございます」


 人によって好みはあるかもしれないが、ベルセンヌ卿は騎士団長様たちの中でも一番の美貌を持つだろう。

 まるで太陽の光を具現化したような美しい金色の髪、晴れ渡った日の空の眩しいほどの青を映したような瞳。公爵家の三男である彼の所作は美しく、何もかもすべてが完璧だ。


「――よろしければ、ご家族を紹介していただけますか?」

「ああ、妻のエミラと息子のハルト、娘のルティアです」

「はじめまして、夫人」

「ええ、はじめまして、ベルセンヌ卿」


 私に挨拶を終えると、ベルセンヌ卿はルティアとハルトの前で膝をつき目線を合わせた。


「はじめまして」

「は……はじめまして。ルティア・フィアーゼです」

「とても可愛らしいね。フィアーゼ卿にも夫人にもそっくりだ」

「……っ!!」


 ルティアは美貌の近衛騎士団長様を前に頬を染めた。

 私は知っている。彼女は騎士団長様たちの姿絵を大切にしているが、ベルセンヌ卿の姿絵を特別大事にしているのだ。


「……」


 ハルトは黙り込んだままだ。

 緊張しているのかと思ったが、よく見れば不機嫌そうに少し眉根を寄せている。

 そして、おもむろに口を開いた。


「はじめまして、ベルセンヌ卿。ハルト・フィアーゼです」

「ロイス・ベルセンヌだ。会えて嬉しいよ」

「……こちらこそ光栄です」


 ベルセンヌ卿はにこやかに微笑んだ。

 ハルトは珍しいことに笑みの一つも浮かべない。

 もしかすると、ルティアが興味を持っているから嫉妬しているのかもしれない。


「さて、陛下が待っていらっしゃる。ご案内いたしましょう。ご家族もご一緒にとのことです」

「――家族も、ですか」


 旦那様まで不機嫌な声音だ。

 ルティアが興味を示しているのがやはり気に入らないのかもしれない。


 二人の様子が気にならなくはない。

 だが、それよりも陛下の御前に呼ばれたことに緊張が走る。

 そういえば、ロレンシア辺境伯家に行くことは陛下の配慮であると同時に命令でもあった。

 旦那様の腰には、魔剣とともに聖剣が下がっている。

 そのことについて、私にも質問があるのかもしれない。


 旦那様が私に再び手を差し出してきた。

 そっと手を重ねると、守るように引き寄せられる。


「では、ルティア嬢は私がエスコートいたしましょう」

「わわ……ベルセンヌ卿が私をエスコート!?」

「レディをご案内する栄誉をいただけますか?」

「わ~!? あっ、そうじゃなくて。光栄ですわ!!」


 ハルトは頬を膨らませ、ルティアは頬を染めながら差し出された手を取った。

 ベルセンヌ卿は背を屈めてくれているが、大きさの差があるから子どもを引率しているようにしか見えない。

 けれど、憧れの騎士団長様にレディとして扱われたルティアはご機嫌だ。

 その様子は確かに小さなレディと言えるだろう。


 一方、ハルトはベルセンヌ卿を睨めつけ頬を膨らませていたが……。


「よし、陛下の御部屋までハルトのことは俺が案内してあげよう」

「わ……わわ!?」


 スフィーダ卿が、ハルトをヒョイッと抱き上げて肩に乗せた。


「すごい!! 高いよ~!!」


 ハルトの目線が見上げるほど高くなる。あっという間にハルトの機嫌は直ってしまった。

 ルティアがちょっぴり羨ましそうな表情を浮かべた。

 けれど、すぐにすました表情を浮かべしずしずと歩き出す。


「行こうか」

「ええ……」


 私も旦那様に手を引かれ、歩き出した。


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