表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神騎士様との初夜で双子を授かりました【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 氷雨そら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/83

初めての家族旅行 5


 私の着替えを手伝い終えると、アンナはどこかへと消えていった。

 彼女は、神出鬼没だ。

 いつの間にか現れ、いつの間にかどこかへと消えている。


 ガタンッと天井から音がした。

 ――まさか、天井裏に隠れているなんて……ないわよね。


 ないと言い切れない、だってアンナは王家の影に所属している可能性があるのだ。


「……とりあえず、部屋に戻りましょう」


 今は、旦那様が双子を見ているはずだ。

 ルティアとハルトは、いまだに寝起きが悪いことがある。

 もし起きてしまって私がいなかったら、泣き出してしまうかもしれない。


 軽くノックすると、扉がそろそろと開いた。


「ゆっくりできたか?」

「ええ……」


 旦那様の顔を見た途端に浮かぶのは、先ほどの色気ある姿だ。

 五年前にもすでに見たはずなのに……だって、あのときはまだこんなに大好きではなかった。

 そんなことを考えるうちに、私の頬はどんどん上気していく。

 俯いていると、忍び笑いが聞こえた。


「おいで」


 手を軽く引き寄せられ、部屋に入る。

 大きな部屋は、寝室と壁で区切られている。


「子どもたちはぐっすり眠っている」

「そうですか……」


 泣き出していなかったことにホッとしながら手を引かれソファーに座る。

 旦那様は、小さなテーブルにお酒を用意して飲んでいたようだ。


「君も少し飲むか?」

「……実は飲んだことがまだないのです」


 成人してすぐに結婚、妊娠、子育てをしてきたため、実はお酒を飲んだことは今までない。

 だが、旦那様と一緒なら安心だろう。


「そうだったのか。……では、薄くして少しだけにするか」


 旦那様は立ち上がると、魔道具の保冷庫からジュースを取り出した。

 毎回魔力を持ったものが、魔力を補充しなくてはいけない保冷庫は、とても高価で扱いが難しい。

 そんな物を置いてあるなんて、よほど高級な宿なのだ……。


 ぼんやりと考えていると、旦那様がグラスにほんの少しのお酒とジュースを注いだ。


「この辺りは小麦の産地だから、それらを使った蒸留酒が有名なんだ」

「そうなのですね」


 聞いたことはあったが、実物を飲む日が来るとは考えていなかった。

 少しの緊張と期待を込めて、淡い紫色のお酒を見つめる。


「……ジュースで割れば飲みやすいが、美味しいからと勢いよく飲まないようにな」

「ありがとうございます」


 二人でグラスを掲げたあと、一口飲んでみる。

 普段のジュースとは違い、ほんのり苦味を感じる。これがアルコールの味なのだろうか……?


「君と少し話がしたい」

「ええ、どんな話をしますか?」

「はは……構えなくていい。夫婦なんだ、いつも深刻な話ばかりしているわけではあるまい」

「それもそうですね」


 お酒を飲みながら、会話を楽しむ……平凡ではあるが、そんな日々は私の憧れでもあった。


「――ルティアとハルトが生まれてからの話が聞きたい」

「……ええ、もちろんです」


 目を閉じれば、今も浮かぶ。

 あの苦しみと、痛みと、言いようもない感動と、それからの想像を絶するほどの日々。

 私は、ルティアとハルトを産んでからの双子の子育ての日々を話すのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>この辺りは小麦の産地だから、それらを使った蒸留酒が有名なんだ >ジュースで割れば飲みやすい  アップルハイボールかな? と想像し、これ、めちゃウマ要注意! 飲み過ぎ注意のカクテルの一つかと存じますで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ