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ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有のマイペースダンジョン配信~  作者: 北乃ゆうひ


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12/14

012.羽ばたき鰹の藁焼き

ジャンル別のランキングは維持しつつ、日間総合などにも顔を出し始めているようです。

皆さま、ありがとうございます٩( 'ω' )و


「目当てのモンスターを収穫できたので、今度は目当ての場所を目指します」


:収穫

:はやわざすぎて何がなにやら

:目当ての場所ってどこだろ


 セイジはカメラに向かって一方的に告げると、再び歩き出す。


:相変わらず静かだ

:こんなつまんないのいつまで見せられるの?

:ヘッドホンの音量大きめにして耳を澄ますとニキの息遣いが感じれて良き

:そうじゃなくてもこの静かな音が続くのいいな

:ムルちゃんに褒められていい気になってんじゃねーぞ


 配信がつまらないと感じたリスナーはすでに視聴をやめているし、逆に気に入ったリスナーは静かに音に耳を澄ませている。

 もはやコメント欄で暴れている場違いな者や、単に文句言って場を荒らしたいだけの者を気にしている者はいなくなっていた。


 そして相手にされなければ、ただ荒らしたいだけのリスナーは、リアクションのないセイジやリスナーに飽きたり、徒労を感じたりしてどこかへと消えていく。

 残ったリスナーの数はそう多くはないのだが、それでも興味を持って視聴を続けているリスナーはいるようだ。


「ふぅ、着いた」


:音量上げて息づかい聞いてたのに突然のイケボでゾワった

:ASMR感覚で聞いてたから声にびっくりした

:お前らヒーリングBGM扱いしすぎだろw


 セイジがやってきたのは、開けた場所だ。

 森の中に作られたキャンプ場のような雰囲気のある空間である。


「ここは事前にモンスターの出現率が低いコトを確認している場所です。そしてここでメインコンテンツの準備します」


:この配信にメインコンテンツがあったのか

:タイトルコールっぽいのがなくて気づかなかったけど配信タイトルにクッキングってついてるんだよ

:探索メインじゃないの?

:ほんとだ番組名はダウナー・ジャジー・クッキングってなってる

:羽ばたき鰹だな


 そうして、キャンプ用の簡易キッチンを準備した。

 さらに焚き火スタンドを用意し、そこに薪の代わりに(わら)を準備する。


:SAI容量デカいな?相当なアタリと見える

:何の説明もせず淡々と準備していきやがる

:結構本格的なキャンプ用品がでてきて草

:黙々と作業がすすんでいくけど喋らないなw

:なんか作業音ASMRって感じだ


「よし」


 準備が終わると、まな板の上にに羽ばたき鰹の一部を出す。

 セイジはそれを手際よく切り出してサクを作った。


 切り出したサクに串を打ちつつ、余った鰹はSAIに戻す。


 そして今度は、SAIから(わら)を取り出した。


:草じゃなくて藁

:笑が藁になってwになって草になったことを思うと原点回帰

:鰹に藁に火・・・それが揃っていてなにも起きないワケがなく・・・

:メシテロじゃないですかー!

:何一つ解説がないけどな!

:なんか何も言わないのがむしろ心地よくなってきた

:黙々と料理するダウナーイケメンの図が最高すぎる

:時々聞こえてくるイケボが良いんだよ

:謎に女ウケしてるの気のせいか?

:イケメンギルティ

:イケボジャスティス

:のどぼとけー!

:めかくれー!

:ゆびー!


 焚き火スタンドの中の藁に火を付けると、柱のように火が伸び上がる。

 その炎で羽ばたき鰹のサクを炙り始めた。


:あ~~~これはいけません

:なんで火柱に魚の身を当ててる姿だけでこんなに腹が減るのか

:藁が燃える音と身の表面が焼ける音いい……


「あちち……」


:額に汗のメカクレイケメンもいいぞ

:メカクレしてるのに額の汗わかるのか?

:火に照らされて赤と影を帯びた喉仏がツボすぎる・・・

:やたら喉仏にこだわるフェチストが混ざってない?

:フェチスト?


 表面の色が変わり、黒や茶の白というか薄茶色のようになっていくと、セイジはそれをまな板へと移動させる。


 それを包丁でスライスしていくと――


:うわあ

:これはいけません本当にいけません

:ダメぜったいダメ

:何の解説もないのに強すぎる


 ――焼けて白くなった身で縁取られた、(なま)めかしく輝くブラッディレッドの身が姿を見せた。


 セイジが丁寧にスライスして、皿に並べていく様子に、コメント欄はある意味で阿鼻叫喚(あびきょうかん)だ。


「よし」


 皿へと綺麗に盛り付け、野菜などの付け合わせも添えた鰹のタタキ一人前を、ドローンのカメラに向けて見せる。


「羽ばたき鰹のたたき、完成だ」


 ちなみに付け合わせの野菜は、サラダオニオンに、万能ネギ、大葉にガーリックチップだ。


:あああああああ

:やばい

:うまそう

:余計な解説がないのがかえってやばい


「さて」


 取り出すのは生姜とわさびのチューブ。


:わさびが見たことのないやつだ

:ツボヤのめっちゃ旨いお高めの粗挽きわさびじゃないか!

:しょうがも似たような高いやつだね

:ニキかなりのこだわり派では?


「あと、岩塩」


:いいよね岩塩

:通だなニキ


「ポン酢」


:食への本気さを感じて草

:どんだけ調味料もってきてるんだw

:いっぱい出てきて笑う


「さらに高知県のご当地品、タタキ鰹のタレもある」


:恐ろしいぞこのニキ

:こんな完全武装でダンジョンきてたのか!

:フル装備じゃないか!!


 そして、箸と複数の小皿を用意すると、両手を合わせた。


「いただきます」


 鰹の切り身に生姜とガーリックチップを少しのせ、岩塩を振りかける。

 最初はこれだけで行く。


:思わず声が出た

:うまそうがすぎる!


 それを口に運び、もぐもぐとゆっくりと咀嚼していく。


:じっくり噛んでる

:リアクションがないのがかえって美味そう


 藁の香り、炙られた表面の香ばしさ、羽ばたき鰹の旨味。

 それらをじっくりと堪能し、嚥下(えんか)する。


:飲み込んだときの喉仏の動きセクシー

:喉仏ニキ?いやネキ?常に喉仏見てるのか

:あまりにもそこにしか目がいってないの逆にすごいよな

:あ、自分ネキです 次も喉仏見たいからチャンネル登録しました

:自己申告草

:登録早くてえらい おれもしたけど


「……これは……」


:ぼそりと漏れた言葉の本気度の高さ・・・!

:ハデなリアクションないのに本当に美味そうなんだが!!


「次は定番のわさびと醤油で……」


 箸で小さくわさびを取り、切り身に乗せて軽く醤油を付ける。


「……うん。悪くない……」


:イケボウェスパー良すぎる

:飲み込む時の喉仏が良すぎる

:淡々とした空気がクセになってきた

:食べる横顔がえっちでは?


「次は野菜と一緒にポン酢で……」


:タマネギシャキシャキASMR

:イケませんこれはイケません!1

:ネキたちが暴れ出した

:何となく開いたらイケボのメカクレがダンジョンで咀嚼ASMRやってるんだけど何これ登録するしかないじゃん

:アリジゴクか何かのように女性たちが吸い寄せられてきてる??

:荒らしが減ってリスナーが増えるとか一番良いパターンじゃん

:確かに気がつけば荒らし消えてるな

:ワルドニキが完全に無視してるからな

:一般リスナーのコメントも途中から完全無視だけどな

:それはそれで草

:この瞬間は草でなく藁の方がよくね?w


「ガツンと来る味ではないが、噛みしめていると、とにかくしみじみ旨味が広がっていく……そんな鰹だ。手が止まらない……米か酒が欲しい……」


:残念だなコメならここにあるんだが

:好き勝手打ち込んでるコメントがな

:鰹となると日本酒か?

:焼酎もいいよな

:素直にビールでもいい

:酒なら何でもよい連中が多いのか

:美味けりゃなんでも良い派じゃないかな


 そのままセイジは黙々と食べ続け、気がつけば完食だ。

 もちろん黙々と食べ続ける光景にリスナーたちはツッコミを入れていた。

 だがツッコミを入れつつも、セイジのやり方を受け入れてくれたようだ。


:淡々としているASMRのようなヒーリングダンジョン配信だったな

:なんか既存のジャンルやカテゴリに当てはめるのが難しいな

:一応ダン材料理モノだとは思うが

:ハデなリアクションがないのは好みが分かれるだろうな

:みんな顔が光ったり服が脱げたりマジで溶けて液状化したりする光景に馴れすぎ

:改めて字で見るとなんなんだろうなあいつら・・・

:個人的には好きな感じチャンネル登録する

:当の本人はコメントそっちのけで片付けはじめてるし

:ダンジョン内部の音や片付けの音が完全に風景系のヒーリング配信

:耐久焚き火配信とかに近い何かを感じる

:それだ


「さて、片付けを終えたので今日の配信を終了したいと思います。

 ……あ。ダンジョン配信って時間に余裕がある時は、帰り道もやった方がいいんですかね?」


:どうなんだろ

:急なイケボやめろ画面の前で変な顔になる

:時間や内容次第かな

:あまりにも良い低音で声聞く度に昇天する

:やる人とやらない人がいるのでニキの好みで

:でもイレギュラー遭遇時なんかはオフでも情報残す意味でカメラ回す人多いよね

:そうでなくともトラブルの時の状況証拠として強いしな

:ムルちゃん絡みの炎上の沈静化早かったのも配信の切り抜きのおかげだし


「なるほど。勉強になります。

 ほとんど何も知らないまま配信を始めたから。

 友人に色々と教えてもらっているが、それで全部を教わったワケじゃないだろうし」


:そりゃあ友人も一気に全部教えられないだろうし

:ワルド氏だってすぐに全部覚えるのはむりっしょ


「まぁそれもそうだ」


 コメントに対して、セイジはうなずく。

 色々とツカサに聞きたいことも増えたし、また今度料理を作ってやるついでに質問をするとしよう。


「では、改めて今日はここまでにします。

 今後の配信もこんな感じの空気で進めていく予定なので、好みに合いそうならまたよろしく。それでは」


:おつ

:おつかれさまでした

:悪くなかった

:またイケボ聞かせてください!

:次も喉仏を見に来ます!

:おつおつ

:ブレないネキたち草

:最後までブレないネキが二人いたな

:次も見せてもらいます

:チャンネル登録したったー



===この配信は終了しました===



準備が出来次第、もう一話アップします٩( 'ω' )و

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