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29:1 - 抗争じみた睨み合いにて

オープニングラップ(opening lap)

:レース開始直後の最初のコース一周のこと。走り出しということで順位の変動やアクシデントが発生しやすいとされる。

「待った」


 ひし形クラフト(よくよく考えてみたらずっとこのダサい云々以前の呼び名のままだった、まぁ気取った名前つけてもしゃーない)からウチのメンバー達がアリアドネ号に降り立つのを待って、船橋ブリッジを占拠していたΠ(パイ)小隊の中からあの低くて荒々しい野獣みたいな声が響いた。タヴァナー少尉だ。見回すと、リュー軍曹やフローラ……軍曹といった相手方の幹部連中は全員この場に揃っている。


「こんな無茶な突撃してくるたぁ、お前らも随分な焦りようじゃねぇか? ま、取り敢えず先に話でもして落ち着こうぜ。俺らはここで派手に暴れられたかねぇし、お前らだってこのクラフトをこれ以上壊したかねぇハズだ。ここはヘーワ的に行こうや」


「平和的だぁ? 他人ひとのクラフト無理やり占拠しといて良く言うわ。親日家か何かみてーだし言っとくが、日本語じゃこういうの“面の皮が厚い”とか“盗人猛々しい”っつーんだよ」


「んー、クロサワ映画かなんかで聞いたことある気がするな……あ? 別のヤツか? まぁいいや、何にしてもお前らは“こっちの提案には乗る以外に無い”んだろ? 悪あがきはやめときな」


 俺の返答に、対する少尉は黒い肌とは正反対の真っ白い歯をニッと剝き出しにしながら言う。ぐッ、足下見やがって。とはいえその言葉が間違ってるなんてことは一切ないワケで。結局俺は大人しく交渉のテーブルに(つっても立ったままだが)着くことになった。相手の思うツボなのが実に忌々しい。



「じゃ、質問はこっちから行かせてもらう。お前らがここ占拠してんだ、文句言わせねーぞ。……で、なんでアリアドネを占拠した? まずお前らの正体、それと目的・要求言えよ」


「へぇ、そっちからソレ聞いてくれんのな? 協力でもしてくれんのかねぇ……つってもまぁ、目的自体はそっちと変わりゃしねぇよ、つまりアイテリウム鉱脈の採掘権の確保とエリア・ニュクス(ここ)からの脱出。ただし、こっちは先に敵対者(おまえら)を他の参加者ごと殲滅してからゆっくりやることにしたっつーだけだ。ま、ウチの軍門に下ってくれるってんならまた別だが」


 タヴァナー少尉の言葉に合わせて周りから野卑やひた笑いが上がる。たぶんうっかり従うことになれば、“協力”なんて穏やかな言葉とは全く違う境遇が俺らを待ってるんだろう。命と引き換えに従えっつーんだから、向こうが相当重いことを要求してくることは想像に難くない……そうなることは避けなければ。


「おい、質問に全部答えてねーぞ。お前らは誰、いや『何』だ? とっとと言え」


 相手の軽口にますますイラつきながら俺は静かに要求した。少尉も余計に笑みを強くしながら目を細める。


「おいおい、ケンカ腰は良くねぇな極東猿アジアンよぉ。糸みたいな目が余計に細くなってんぜ」


「あ? テメェ何——


「おいケンゴ、安い挑発に乗んな。お前もわざわざこっちに合わせて目細めてくれてどーも。ついでに二度とその目閉じられなくなるか両腕切り落とされるかどっちが良い?」


 俺はそう吐き捨てながら、すかさず腰のホルスターに挿していた方のレーザーガンを少尉の眼前に突きつけた。自衛官時代から銃の扱いには自信がある。まぁ、こんな西部劇のガンマンよろしく拳銃を素早く構えるなんて技能は隊じゃ教えてくれないし、実際自前で身に付けたところで何の役にも立たなかったが。



ガシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャッ



 俺の動きに応じて当然周りも行動を起こす。しかし周囲の小隊隊員たちが慌てて俺に射線を集中させるのと、背後でウチのメンバーたちが小隊の全員に銃口を突きつけたのはほぼ同時だった。ベイファンもイヴもケンゴもミセスも、手に握った拳銃を向けている。腕が翼になっていて銃を持てないラッシュですら例外でない。リュックみたいに背負い込んだ鳥類系亜人用の射撃ガジェットの箱から左右二本のマズルが両肩から腕に沿って伸び、翼の先にあるヘルメットの下の頭を狙っていた。

 ……ちょうどフチザキとの一悶着のときのイスルギ組がやったことの再演、なんて言っても今のメンバーですら知ってるヤツと知らないヤツで分かれちまうが。


 相手方はともかく、味方のこの動きはクラフトを降りる直前、事前に打ち合わせてあった動きだ。つまり“俺が銃を抜いたら、全員『俺の狙いとは別の』隊員を狙って牽制しろ”っていう指示。状況にこうも上手くハマってくれると妙な満足感すら感じるが、まぁ今はそれどころじゃない。

 横に控えていたイスルギがドスの効いた低い声でうなる。


「悪ィけど、この期に及んでお前らと遊んでられるほどヒマじゃねェんでな」


「おら、とっとと吐け」


 少尉の顔に銃口を向けたイスルギに続いて俺も少し凄んでみる。

 が、現役の軍人相手にそんなもの効くとは思えないし、実際銃を突きつけてから一瞬遅れて少尉が笑いながら手を上げるのを俺は見逃さなかった。

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