表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の風景 : 書籍関連  作者: 緑青・薄浅黄
最新話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

X(Twitter)掲載『 階段 』

【 セツナ 】


「かいだん、ながい」


僕達の眼前にある階段を見て、アルトがポソリと呟いた。


「そうだね」


なだらかな坂道に敷かれている階段は、

遥か先まで続いているように見える。

ところどころ風化しているのを見ると、

この階段はかなりの年代物だとがうかがい知れた。


新しい街道ができる前はこの道も往来があったようだけど、

今はほとんど使われていない道だ。

新しい街道ができた理由は、

元の街道がなだらかとはいえ坂道であることと、

道幅が狭く魔物と遭遇した場合に、対処が取り辛かったからだ。


そんな旧街道をなぜ歩いているのかといえば、

獣人の子供であるアルトの姿を見られることを、

できるだけ避けたかったためだ。


近辺に魔物の気配は感じないため、軽い雑談を交えながら、

アルトが疲れない程度の速さで階段を上っていく。

途中で休憩を入れ、また階段を上るということを何度か繰り返し、

頂上が見える場所までたどりついた。


「やっと、おわりが、ちかづいたー」


代わり映えのしない景色と階段に、飽きていたのだろう。

アルトが軽く尻尾を振るが、その表情はあまり嬉しそうではなかった。

風の魔法を使い、周囲に人がいないかをざっと調べる。

すぐに確認がとれたので、僕はアルトに話しかけた。


「アルト。遊びながら、頂上を目指そうか」


「あそび?」


「うん。この前、じゃんけんをしたのを覚えている?」


「おぼえてる!」


「じゃあ、じゃんけんをしながら階段を上っていこう」


その言葉にアルトは、意味がわからないと首をかしげているが、

その瞳には興味が宿っているように思えた。


僕は、『じゃんけんグリコ』という遊びを説明していく。

じゃんけんで勝ったときに、その手に紐づいた物の名前の字数だけ、

歩るくことができる遊びだ。


ただ、説明する際にこの世界にない言葉は違う言葉に置き換えた。

チョキは、『チョコレート』。

パーは、『パイナップル』。

グーは、『ハンバーグ』というように。


「ししょう、ちょこれぇとって、なに?」


「とっても甘いお菓子だね」


お菓子と聞いてアルトの目が輝くが、

残念なことにチョコレートは持っていない。

売っているのを見つけたら、一緒に食べようと約束をする。


「ぱいなっぷるは、しってる。たべたことは、ないけど」


パイナップルは、ガーディルでは交易品で高価だったため、

手が届かなかった。アルトに「そうだったね」と笑う。


「でも、はんばーぐは、しらない」


「そういえば、ハンバーグはまだ作ったことがなかったね」


「たべもの?」


「うん。肉料理の一つだよ」


「にく!」

 

肉料理と聞いて、アルトの尻尾が盛大に振られた。

だけどアルトは、まだ僕に遠慮しているようで、

自分から食べてみたいとはいいだせない。


だから返事はわかっているけれど、

こんなときは僕から聞くようにしていた。


「食べてみたい?」


「たべてみたい!」


元気のいい返答に、僕は笑って頷く。


「じゃあ、僕に勝てたら作ってあげる」


「え!?」


「僕より先に頂上にたどりつけたら、

 今日の夜ご飯はハンバーグにしよう」


勝負に勝たなければ、食べることができないと知ったアルトは、

気合いを入れるように拳を握った。


「おれ、ぜったいに、まけない!」

 

負けず嫌いのアルトがそう宣言し、

ハンバーグをかけた戦いの火蓋が切られたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



html>

X(旧Twitter)にも、情報をUpしています。
『緑青・薄浅黄 X』
よろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
アルトが勝っても負けても 夕ご飯はハンバーグな気がします♪
かわゆい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ