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刹那の風景 : 書籍関連  作者: 緑青・薄浅黄
刹那の風景6:暁

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22/28

『 カバーイラスト & 短編「 白い花 」 』

カバーイラストの感想は活動報告の、

『『刹那の風景6巻』発売のお知らせと『カバーイラスト』の紹介。』で、

語ってます!


できれば、6巻を読んでから読んでいただけると嬉しいです。


【 書籍:カバーイラスト & 短編「白い花」 】


sime様に描いていただいた、書籍のカバーイラストです。




挿絵(By みてみん)




転記・転載は禁止です。

よろしくお願いします。




『白い花』


【セツナ】


白い花に見送られて、

暁の下をアルトとサイラスと一緒に城に向かう。


アルトは、サイラスが手綱を引く馬をなで、

馬に何かを話しているようだ。


ときどき、サイラスにからかわれては、

アルトが文句をいっている。

僕はそんな、二人の姿をぼんやりと後ろから眺めていた。


この数ヶ月で、すっかり歩きなれた道をゆく。

ラギさんの家が見えなくなる辺りで、一度立ち止まり振り返る。


アルトとサイラスに、城にいこうと誘われて、

城にいくことにしたけれど、後ろ髪を引かれるのは……。


「師匠?」


明かりの灯らない家から目を離し、アルトへと顔を向けた。


「どうしたの?」


「何でもないよ」


そう答えて、前を向いて歩きだすと、

アルトが馬から離れ、僕の横にきた。


「馬をなでるのは、もういいの?」


「うん。ここまで乗せてくれた、お礼をいったんだ」


「なるほど」


馬の方を見て笑うアルトに、

ずっと気になっていたことを聞く。


「アルトはこの数日、何をしていたの?」


僕がラギさんの家を狙う、強盗達の相手をしている間、

アルトを王妃様とサイラスに預かってもらっていた。

城で、ずっと落ち込んだまま生活しているかもしれないと、

不安に思っていたが、「お城のご飯が美味しい」と話していたし、

目の下に隈などもないことから、しっかり食べて、眠れていたようだ。


それだけでも、王妃様達がどれほどアルトによくしてくれたのかがわかる。


だけど、王妃様に預かってもらう前の、

泣いているアルトしか記憶になかった僕は、

アルトの口からお城での生活を聞きたかった。


「うーん。王妃様とソフィアさんとご飯を食べたり、

 ジョルジュさんとフレッドさんと訓練をしたり、

 ノリスさんとエリーさんが、お花を持ってきってくれて、

 話をしたり、キースさんとユージンさんが勉強を見てくれた。

 あ、あと、大将軍とも訓練をしてる」


指を折って数えながら、お城での生活を話してくれる。


「王妃様とソフィアさんは、俺が寂しくないように、

 ずっと一緒にいてくれたんだ」


「そうなんだね」


「ジョルジュさんとフレッドさんは、

 大将軍にボコボコにされた俺を、いつも慰めてくれてた。

 そのあと、大将軍を倒すための訓練に付き合ってくれてたんだ」


眉間に皺を寄せて、大将軍の話をするアルトに、

サイラスが小さく笑う。


「大将軍は誰であっても、本気で相手をしてくれるからな」


「いつか絶対、俺は大将軍を倒す!」


拳を握って決意を固めるアルトの様子に、

大将軍がアルトに発破をかけてくれたのかなと想像する。


「大将軍の発言を、絶対、訂正させてやる!」


先ほどよりもさらに眉間の皺が深くなっているが、

僕とサイラスが、大将軍に何をいわれたのかを聞いても、

アルトは「いわない!」といって、話すことはなかった。


大将軍に何をいわれたのか気になるけれど、

アルトがいいたくないということを、無理に聞きだそうとは思わない。

だけど『訂正させてやる』といっていることから、

かなり、アルトの嫌がることを告げたのだろう。


(多分、アルトの悲しみの感情を、怒りに変えるために、

 わざと、嫌われるようなことをいってくれたのかもしれない……)


やりきれない感情の行き先を、アルトの内面に向かわないように、

外に発散させる方法を取ってくれたのだろう。

なんとなくそんな気がする。


「それでね、キースさんとユージンさんが勉強を見てくれるんだけど……」


そこから語られるアルトの話は、聞かなかったことにした。

ユージンさんも聞かれないことを願うはずだ。多分……。


でも、サイラスがお腹を抱えて笑っているから、

ユージンさんは、サイラスにからかわれるかもしれない。

ツボに入ったのか、中々笑うのを止められないサイラスを、

馬がうるさいというようにみているが、

サイラスは気が付かず笑い続け、馬に軽く噛まれていた……。


「それからね、ノリスさんとエリーさんが、

 毎日花を持ってきてくれたんだ」


「そうなんだ。後でお礼をいわないとね」


内心でお店は大丈夫だったんだろうかと気にしていると、

アルトが続きを話す。


「王様が、ノリスさんとエリーさんに、

 お仕事として頼んでくれたから、

 王様にもお礼をいってほしいんだ」


「うん。王様にも、王妃様にも……。

 お世話になった全員に、ちゃんとお礼をいうよ」


僕がいないあいだ、

アルトは沢山の人に支えられていたんだと感じた。

多分、僕とアルトだけでは、

ここまでの人間関係は、築けなかったと思う……。


ラギさんが、僕の相談にのってくれたことで、

行動したことがあった。


ラギさんも、人間が嫌いなはずなのに、

アルトのためにと、人間と親交をもってくれた。

だから、僕とアルトの周りには優しい人達がいてくれるんだ。


ぎゅっと胸が引き絞られるような気がして、苦しくなる。

だけど、アルトやサイラスに心配をかけるのは嫌だから、

その痛みを胸の底へと鎮め、アルトとサイラスの会話に耳を傾けた。


「あ、そういえいば、サイラスさんとお昼に会わなかったのは、

 どうして?」


アルトの問いに、サイラスがニヤリと笑う。


「城を抜けだすなら夜だろうなって、思っていたからな」


そういって笑うサイラスに、

アルトは「昼間はずっと、ソフィアさんや王妃様が一緒だったから、

逃げるスキがなかったんだ」とちょっと困ったように笑っていた。


困ったように笑ってはいたけれど、

一緒にいてくれたことは嬉しかったのだろう。

その心情を表すように、アルトの尻尾は朝の日差しの中で、

機嫌よく揺れていたのだった。



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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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