『 カバーイラスト & 短編「 白い花 」 』
カバーイラストの感想は活動報告の、
『『刹那の風景6巻』発売のお知らせと『カバーイラスト』の紹介。』で、
語ってます!
できれば、6巻を読んでから読んでいただけると嬉しいです。
【 書籍:カバーイラスト & 短編「白い花」 】
sime様に描いていただいた、書籍のカバーイラストです。
転記・転載は禁止です。
よろしくお願いします。
『白い花』
【セツナ】
白い花に見送られて、
暁の下をアルトとサイラスと一緒に城に向かう。
アルトは、サイラスが手綱を引く馬をなで、
馬に何かを話しているようだ。
ときどき、サイラスにからかわれては、
アルトが文句をいっている。
僕はそんな、二人の姿をぼんやりと後ろから眺めていた。
この数ヶ月で、すっかり歩きなれた道をゆく。
ラギさんの家が見えなくなる辺りで、一度立ち止まり振り返る。
アルトとサイラスに、城にいこうと誘われて、
城にいくことにしたけれど、後ろ髪を引かれるのは……。
「師匠?」
明かりの灯らない家から目を離し、アルトへと顔を向けた。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
そう答えて、前を向いて歩きだすと、
アルトが馬から離れ、僕の横にきた。
「馬をなでるのは、もういいの?」
「うん。ここまで乗せてくれた、お礼をいったんだ」
「なるほど」
馬の方を見て笑うアルトに、
ずっと気になっていたことを聞く。
「アルトはこの数日、何をしていたの?」
僕がラギさんの家を狙う、強盗達の相手をしている間、
アルトを王妃様とサイラスに預かってもらっていた。
城で、ずっと落ち込んだまま生活しているかもしれないと、
不安に思っていたが、「お城のご飯が美味しい」と話していたし、
目の下に隈などもないことから、しっかり食べて、眠れていたようだ。
それだけでも、王妃様達がどれほどアルトによくしてくれたのかがわかる。
だけど、王妃様に預かってもらう前の、
泣いているアルトしか記憶になかった僕は、
アルトの口からお城での生活を聞きたかった。
「うーん。王妃様とソフィアさんとご飯を食べたり、
ジョルジュさんとフレッドさんと訓練をしたり、
ノリスさんとエリーさんが、お花を持ってきってくれて、
話をしたり、キースさんとユージンさんが勉強を見てくれた。
あ、あと、大将軍とも訓練をしてる」
指を折って数えながら、お城での生活を話してくれる。
「王妃様とソフィアさんは、俺が寂しくないように、
ずっと一緒にいてくれたんだ」
「そうなんだね」
「ジョルジュさんとフレッドさんは、
大将軍にボコボコにされた俺を、いつも慰めてくれてた。
そのあと、大将軍を倒すための訓練に付き合ってくれてたんだ」
眉間に皺を寄せて、大将軍の話をするアルトに、
サイラスが小さく笑う。
「大将軍は誰であっても、本気で相手をしてくれるからな」
「いつか絶対、俺は大将軍を倒す!」
拳を握って決意を固めるアルトの様子に、
大将軍がアルトに発破をかけてくれたのかなと想像する。
「大将軍の発言を、絶対、訂正させてやる!」
先ほどよりもさらに眉間の皺が深くなっているが、
僕とサイラスが、大将軍に何をいわれたのかを聞いても、
アルトは「いわない!」といって、話すことはなかった。
大将軍に何をいわれたのか気になるけれど、
アルトがいいたくないということを、無理に聞きだそうとは思わない。
だけど『訂正させてやる』といっていることから、
かなり、アルトの嫌がることを告げたのだろう。
(多分、アルトの悲しみの感情を、怒りに変えるために、
わざと、嫌われるようなことをいってくれたのかもしれない……)
やりきれない感情の行き先を、アルトの内面に向かわないように、
外に発散させる方法を取ってくれたのだろう。
なんとなくそんな気がする。
「それでね、キースさんとユージンさんが勉強を見てくれるんだけど……」
そこから語られるアルトの話は、聞かなかったことにした。
ユージンさんも聞かれないことを願うはずだ。多分……。
でも、サイラスがお腹を抱えて笑っているから、
ユージンさんは、サイラスにからかわれるかもしれない。
ツボに入ったのか、中々笑うのを止められないサイラスを、
馬がうるさいというようにみているが、
サイラスは気が付かず笑い続け、馬に軽く噛まれていた……。
「それからね、ノリスさんとエリーさんが、
毎日花を持ってきてくれたんだ」
「そうなんだ。後でお礼をいわないとね」
内心でお店は大丈夫だったんだろうかと気にしていると、
アルトが続きを話す。
「王様が、ノリスさんとエリーさんに、
お仕事として頼んでくれたから、
王様にもお礼をいってほしいんだ」
「うん。王様にも、王妃様にも……。
お世話になった全員に、ちゃんとお礼をいうよ」
僕がいないあいだ、
アルトは沢山の人に支えられていたんだと感じた。
多分、僕とアルトだけでは、
ここまでの人間関係は、築けなかったと思う……。
ラギさんが、僕の相談にのってくれたことで、
行動したことがあった。
ラギさんも、人間が嫌いなはずなのに、
アルトのためにと、人間と親交をもってくれた。
だから、僕とアルトの周りには優しい人達がいてくれるんだ。
ぎゅっと胸が引き絞られるような気がして、苦しくなる。
だけど、アルトやサイラスに心配をかけるのは嫌だから、
その痛みを胸の底へと鎮め、アルトとサイラスの会話に耳を傾けた。
「あ、そういえいば、サイラスさんとお昼に会わなかったのは、
どうして?」
アルトの問いに、サイラスがニヤリと笑う。
「城を抜けだすなら夜だろうなって、思っていたからな」
そういって笑うサイラスに、
アルトは「昼間はずっと、ソフィアさんや王妃様が一緒だったから、
逃げるスキがなかったんだ」とちょっと困ったように笑っていた。
困ったように笑ってはいたけれど、
一緒にいてくれたことは嬉しかったのだろう。
その心情を表すように、アルトの尻尾は朝の日差しの中で、
機嫌よく揺れていたのだった。





