『 カバーイラスト & 短編「光の先に」 』
書籍のみ読まれている読者様へ。
四巻のネタバレがありますのでご注意下さい。
もしよろしければ、四巻を読まれてから、
お時間のあるときに、覗いていただけると嬉しいです。
Web(ブータンマツリ : いたずら心)までを、
読んでいただいている読者様は大丈夫です!
【 書籍:カバーイラスト & 短編「光の先に」 】
sime様に描いていただいた、書籍のカバーイラストです。
転記・転載は禁止です。
よろしくお願いします。
心に優しい灯が灯るカバーイラストです。
sime様、いつも僕に勇気とやる気を与えてくれる、
イラストをありがとうございます。
心から感謝しております。
《* Webと書籍では設定が違っています。
この段階(セツナが花屋で働いている)で、
アルトはノリスとエリーと面識があり、交流を持っています》
【アルト】
じいちゃんとの生活もかなり慣れた。
師匠に助けてもらってから、ずっと師匠と一緒にいたのに、
リペイドではじいちゃんといる時間の方が長い。
最初は落ち着かなかったけれど、今はそうでもなくなっていた。
師匠の弟子になってからは、
そのほとんどが旅の空での生活で、
奴隷だったころは檻の中で過ごしていたから、
普通の家での生活は、俺にとってはとても新鮮だった。
宿屋では、借りた部屋しかはいれなかったけど、
じいちゃんは好きな部屋で好きなように、
過ごしていいっていってくれた。
だから、最初はいろんな部屋に入れることが楽しくて、
じいちゃんが本を読んでいるときなどに、
一人でうろうろしていたけれど、
数日もしたら楽しくなくなった……。
どうして、楽しかったものが楽しくなくなったのかを考えて、
そして気付いたんだ。俺は、一人で部屋にいるより、
じいちゃんや師匠のそばで過ごす方が好きなんだと!
そのことに気付いてからは、じいちゃんが本を読んでいても、
一人でうろうろするのはやめた。
じいちゃんのそばで、
俺も本を読んだり勉強することに決めたんだ。
本当は、師匠も一緒にいて欲しいけど、
師匠はノリスさんの依頼を受けたから、
花屋さんがお休みの日と夜しか、家にいなかった。
寂しくないといったら嘘になる。
だけど、じいちゃんの依頼を最後まで頑張ると決めたのは俺だから、
弱音は吐きたくなかった。
じいちゃんの手伝いをしたり、お話ししたり、
獣人のことを教えてもらったりしながら、時間が過ぎて、
師匠が帰ってきてから、
今日あったことを師匠に色々と話しながらご飯を食べる。
じいちゃんのご飯はすごく美味しくて、
師匠は俺の話をいつもと同じように、
優しく笑って聞いてくれる……。
俺は、師匠とじいちゃんがいるこの時間が大好きだった。
すごく眠くなるまで、師匠とじいちゃんと一緒にいて、
起きていられなくなったら、師匠の部屋か俺の部屋にいって寝る。
師匠と一緒に寝るのは1日おきだと約束している。
昨日は師匠の部屋で寝たから、今日は自分の部屋に戻った。
一人の部屋は寂しいけど、最初よりは寂しくなくなった。
それにすごく眠いから、
ベッドに潜ると朝まで起きないから平気だ。
そんなことを考えながら、
ベッドに入って目を閉じるとすぐに眠りが訪れる。
「……」
いつもなら、朝まで起きることなくぐっすり寝ることができるのに、
今日はお手洗いにいきたくて目が覚めた……。
でも、眠い。すごく眠い。
起きたくない。ベッドからでたくない。
だから、我慢して寝ることに決めた……んだけど、無理だった。
でもあともうちょっと……。
ギリギリまで我慢して、諦めてお手洗いにいく。
眠くて、欠伸がでる。早く寝たい……。
用を足したその帰りに、居間の扉が少しだけ開いていて、
光がもれているのを見つけた。
「だれか、おきてるのかな?」
誰が起きているのか気になって、
ちゃんと開かない目を手の甲でこすりながら、
そっと扉の向こうを覗いた。
部屋の中では、師匠とじいちゃんが、
静かな声で何かを話しながら、お酒を飲んでいた。
机の上には、お酒の瓶と、美味しそうなおつまみがある。
師匠とじいちゃんは、話すことに集中しているのか、
俺には気付いていないようだった。
小さく欠伸をしながら、部屋に入るか、入らないか少し悩む。
正直、すごく眠い。でも、おつまみも食べてみたい。
しばらく考えて、おつまみに心惹かれて、
一口食べたらすぐに寝ようと決める。
だけど、扉を開くためにあげた手を途中で止めた。
そして、足音を立てないようにそっと扉から離れて、
俺は自分の部屋に戻ると、ベッドに入って眠ったのだった。
「アルト」
師匠を見送って、
家の中に入ろうとしたところでじいちゃんが俺を呼んだ。
「昨日の夜、どうして部屋に入ってこなかったのかの?」
「おれが、いたことに、きがついていたの?」
「獣人は耳がいいからの」
そうだった。じいちゃんは、多分俺の足音で気が付いたのだろう。
「ししょうも、きがついていた?」
「どうかな? セツナさんのことだから、
気が付いているような気もするが……」
じいちゃんがわからないというように、少し首をかしげた。
「私は、アルトがどうしようか悩んでいるみたいだったから、
声をかけるのはやめたのだよ。
何度か欠伸をしていたようだったからの」
「そっか」
声をかけられていたら、
俺は眠いのを我慢して部屋に入っていたと思う。
「それでどうして、部屋に入ってこなかったのかな?
入ろうとしていただろう?」
「うーん。すごく、ねむかったのも、あるんだけど、
ししょうが、たのしそうだったから」
「……楽しそうだった?」
「うん」
じいちゃんと話をしていた師匠は、
とても穏やかな顔をして笑っていたんだ。
「ひとりで、おさけをのんでいるときの、ししょうは、
あまり、たのしそうじゃないから」
「……」
旅の途中で、俺が寝たあとに、
師匠が時々お酒を飲んでいるのは知っていた。
昨日の夜みたいに夜中に目が覚めて、
俺にホットミルクをいれてくれたことがある。
ふと、目が覚めて、薄ぼんやりとした視界の中で、
お酒を飲んでいる師匠を見たこともある。
じっと手元を見ていたり、どこか遠くを見ていたり……。
そのときの師匠の表情は、どこか寂しそうに見えた。
だから気になって半分寝ぼけながら、
『師匠』と声をかけるんだけど、
俺の呼びかけに気が付いた師匠は、
いつも俺の頭を優しくなでてくれるから、
安心してすぐに眠ってしまっていた。
「ししょうが、じいちゃんとのじかんを、
たいせつにしていると、かんじたから、
じゃましたくなかった。
それに、じいちゃんもやさしいかお、してた」
俺の言葉にじいちゃんが、軽く目を見張ってから瞬いた。
昨日の師匠とじいちゃんの姿は、
サイラスさんと一緒にいるときのような、
賑やかな感じじゃなかった。
大声で話しているわけでもないし、
声を上げて笑っているわけでもなかった。
それでも……。
俺には二人が、
その時間をとても楽しんでいるように見えたんだ。
あの部屋の雰囲気は、
なぜかゆったりと流れているように思えたんだ。
上手く言葉にできないけれど、警戒することなく、
暖かい安全な場所でくつろいでいるような、
そんな感じに……。
「そうか」
じいちゃんが、
柔らかい笑みを浮かべながら俺の頭をなでる。
その手がとても温かくて自然と尻尾が揺れた。
「アルトが成人したら、
セツナさんと一緒に酒を飲んであげるといい。
きっと、セツナさんは喜んでくれると思うからの」
俺の頭を何度も優しくなでるじいちゃんに、
俺は上手く返事できないでいた。
俺は、大人になりたくなかったから。
だけど……ちょっとだけ、ほんとうにちょっとだけ、
大きくなって、大人になって、師匠とじいちゃんの隣で、
俺も静かにお酒を飲んでいる姿を想像してみたのだった。
-Endー
ありがとうございました!





