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刹那の風景 : 書籍関連  作者: 緑青・薄浅黄
刹那の風景4:68番目の元勇者と訳ありの依頼

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18/28

『 カバーイラスト & 短編「光の先に」 』

書籍のみ読まれている読者様へ。

四巻のネタバレがありますのでご注意下さい。

もしよろしければ、四巻を読まれてから、

お時間のあるときに、覗いていただけると嬉しいです。

Web(ブータンマツリ : いたずら心)までを、

読んでいただいている読者様は大丈夫です!

【 書籍:カバーイラスト & 短編「光の先に」 】


sime様に描いていただいた、書籍のカバーイラストです。




挿絵(By みてみん)




転記・転載は禁止です。

よろしくお願いします。


心に優しい灯が灯るカバーイラストです。

sime様、いつも僕に勇気とやる気を与えてくれる、

イラストをありがとうございます。

心から感謝しております。


《* Webと書籍では設定が違っています。

 この段階(セツナが花屋で働いている)で、

 アルトはノリスとエリーと面識があり、交流を持っています》



【アルト】


じいちゃんとの生活もかなり慣れた。

師匠に助けてもらってから、ずっと師匠と一緒にいたのに、

リペイドではじいちゃんといる時間の方が長い。

最初は落ち着かなかったけれど、今はそうでもなくなっていた。


師匠の弟子になってからは、

そのほとんどが旅の空での生活で、

奴隷だったころは檻の中で過ごしていたから、

普通の家での生活は、俺にとってはとても新鮮だった。


宿屋では、借りた部屋しかはいれなかったけど、

じいちゃんは好きな部屋で好きなように、

過ごしていいっていってくれた。


だから、最初はいろんな部屋に入れることが楽しくて、

じいちゃんが本を読んでいるときなどに、

一人でうろうろしていたけれど、

数日もしたら楽しくなくなった……。


どうして、楽しかったものが楽しくなくなったのかを考えて、

そして気付いたんだ。俺は、一人で部屋にいるより、

じいちゃんや師匠のそばで過ごす方が好きなんだと!

そのことに気付いてからは、じいちゃんが本を読んでいても、

一人でうろうろするのはやめた。


じいちゃんのそばで、

俺も本を読んだり勉強することに決めたんだ。


本当は、師匠も一緒にいて欲しいけど、

師匠はノリスさんの依頼を受けたから、

花屋さんがお休みの日と夜しか、家にいなかった。


寂しくないといったら嘘になる。

だけど、じいちゃんの依頼を最後まで頑張ると決めたのは俺だから、

弱音は吐きたくなかった。


じいちゃんの手伝いをしたり、お話ししたり、

獣人のことを教えてもらったりしながら、時間が過ぎて、

師匠が帰ってきてから、

今日あったことを師匠に色々と話しながらご飯を食べる。


じいちゃんのご飯はすごく美味しくて、

師匠は俺の話をいつもと同じように、

優しく笑って聞いてくれる……。

俺は、師匠とじいちゃんがいるこの時間が大好きだった。


すごく眠くなるまで、師匠とじいちゃんと一緒にいて、

起きていられなくなったら、師匠の部屋か俺の部屋にいって寝る。

師匠と一緒に寝るのは1日おきだと約束している。

昨日は師匠の部屋で寝たから、今日は自分の部屋に戻った。

一人の部屋は寂しいけど、最初よりは寂しくなくなった。


それにすごく眠いから、

ベッドに潜ると朝まで起きないから平気だ。

そんなことを考えながら、

ベッドに入って目を閉じるとすぐに眠りが訪れる。


「……」


いつもなら、朝まで起きることなくぐっすり寝ることができるのに、

今日はお手洗いにいきたくて目が覚めた……。

でも、眠い。すごく眠い。

起きたくない。ベッドからでたくない。

だから、我慢して寝ることに決めた……んだけど、無理だった。

でもあともうちょっと……。


ギリギリまで我慢して、諦めてお手洗いにいく。

眠くて、欠伸がでる。早く寝たい……。

用を足したその帰りに、居間の扉が少しだけ開いていて、

光がもれているのを見つけた。


「だれか、おきてるのかな?」


誰が起きているのか気になって、

ちゃんと開かない目を手の甲でこすりながら、

そっと扉の向こうを覗いた。


部屋の中では、師匠とじいちゃんが、

静かな声で何かを話しながら、お酒を飲んでいた。

机の上には、お酒の瓶と、美味しそうなおつまみがある。


師匠とじいちゃんは、話すことに集中しているのか、

俺には気付いていないようだった。

小さく欠伸をしながら、部屋に入るか、入らないか少し悩む。

正直、すごく眠い。でも、おつまみも食べてみたい。


しばらく考えて、おつまみに心惹かれて、

一口食べたらすぐに寝ようと決める。

だけど、扉を開くためにあげた手を途中で止めた。

そして、足音を立てないようにそっと扉から離れて、

俺は自分の部屋に戻ると、ベッドに入って眠ったのだった。



「アルト」


師匠を見送って、

家の中に入ろうとしたところでじいちゃんが俺を呼んだ。


「昨日の夜、どうして部屋に入ってこなかったのかの?」


「おれが、いたことに、きがついていたの?」


「獣人は耳がいいからの」


そうだった。じいちゃんは、多分俺の足音で気が付いたのだろう。


「ししょうも、きがついていた?」


「どうかな? セツナさんのことだから、

 気が付いているような気もするが……」


じいちゃんがわからないというように、少し首をかしげた。


「私は、アルトがどうしようか悩んでいるみたいだったから、

 声をかけるのはやめたのだよ。

 何度か欠伸をしていたようだったからの」


「そっか」


声をかけられていたら、

俺は眠いのを我慢して部屋に入っていたと思う。


「それでどうして、部屋に入ってこなかったのかな?

 入ろうとしていただろう?」


「うーん。すごく、ねむかったのも、あるんだけど、

 ししょうが、たのしそうだったから」


「……楽しそうだった?」


「うん」


じいちゃんと話をしていた師匠は、

とても穏やかな顔をして笑っていたんだ。


「ひとりで、おさけをのんでいるときの、ししょうは、

 あまり、たのしそうじゃないから」


「……」


旅の途中で、俺が寝たあとに、

師匠が時々お酒を飲んでいるのは知っていた。

昨日の夜みたいに夜中に目が覚めて、

俺にホットミルクをいれてくれたことがある。


ふと、目が覚めて、薄ぼんやりとした視界の中で、

お酒を飲んでいる師匠を見たこともある。

じっと手元を見ていたり、どこか遠くを見ていたり……。

そのときの師匠の表情は、どこか寂しそうに見えた。


だから気になって半分寝ぼけながら、

『師匠』と声をかけるんだけど、

俺の呼びかけに気が付いた師匠は、

いつも俺の頭を優しくなでてくれるから、

安心してすぐに眠ってしまっていた。


「ししょうが、じいちゃんとのじかんを、

 たいせつにしていると、かんじたから、

 じゃましたくなかった。

 それに、じいちゃんもやさしいかお、してた」


俺の言葉にじいちゃんが、軽く目を見張ってから瞬いた。


昨日の師匠とじいちゃんの姿は、

サイラスさんと一緒にいるときのような、

賑やかな感じじゃなかった。


大声で話しているわけでもないし、

声を上げて笑っているわけでもなかった。


それでも……。

俺には二人が、

その時間をとても楽しんでいるように見えたんだ。

あの部屋の雰囲気は、

なぜかゆったりと流れているように思えたんだ。


上手く言葉にできないけれど、警戒することなく、

暖かい安全な場所でくつろいでいるような、

そんな感じに……。


「そうか」


じいちゃんが、

柔らかい笑みを浮かべながら俺の頭をなでる。

その手がとても温かくて自然と尻尾が揺れた。


「アルトが成人したら、

 セツナさんと一緒に酒を飲んであげるといい。

 きっと、セツナさんは喜んでくれると思うからの」


俺の頭を何度も優しくなでるじいちゃんに、

俺は上手く返事できないでいた。

俺は、大人になりたくなかったから。


だけど……ちょっとだけ、ほんとうにちょっとだけ、

大きくなって、大人になって、師匠とじいちゃんの隣で、

俺も静かにお酒を飲んでいる姿を想像してみたのだった。


-Endー


ありがとうございました!


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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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『緑青・薄浅黄 X』
よろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[良い点] イラスト見ただけでも物語を思い出して泣きそうになる。  アルトの優しさや気遣い、何よりセツナが楽しそうにしてることで自身も喜びを感じる関係性がすごく良かった。
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