第16話 『 私と出会えて良かったですね 』
天メソの原稿やってたら更新遅れました。本当にごめんなさい!!
美月みたいな子と結婚したい人生でした。(諦めるのはまだ早いぞ)
登場人物紹介~(そろそろネタ無くなってくる)
八雲晴 童貞
瀬戸美月 嫁
浅川慎 友達。同僚。以上ww
二人で過ごす初めての休日が訪れた。
「おはようございます、晴さん」
「はよ」
珍しく十時前に起きれば、既に着替えを済ませていた美月がエプロン姿でリビングにいた。
自分の家にエプロン姿の女性が居る事は以前にもあった光景なので驚きはしないが、その実態が女子高生ともあれば話は別だ。違和感が凄い。
「バタバタ五月蠅かったですか?」
朝から洗濯とフローリングの掃除をしていたのであろう。それを晴を起こしてしまった原因だと思った美月が眉尻を下げる。
しゅん、と顔を俯かせる美月に晴は「気にすんな」と前置きすると、
「たまたまセットしたアラームが鳴って起きただから。お前のせいじゃない」
家事をしてくれているのに、五月蠅いから止めろというのも理不尽だ。それに、眠くなったら昼寝でもすればいい。
晴の言葉に美月は安堵したのか小さな吐息をこぼす。それから柔和な笑みを見せると、
「朝ご飯、今日はどうしますか?」
「用意してあんのか?」
「トーストと簡単なものであればすぐに用意できますよ」
「お前ホント有能だよな。俺には勿体ないくらいだ」
「私と出会えて良かったですね」
「本気でそう思ってるわ」
正直に答えれば、美月が頬を朱に染めて俯いてしまった。
「あ、ありがとうございます」
ぎこちない感謝に、晴もなんだかむず痒くなってしまう。
その反応はズルい。
美月にとっては冗談のつもりだったのだろう。それを晴が本気に捉えてしまったばかりこのなんとも甘酸っぱい空間が生まれてしまった。
「あー。なんだ。メシの準備してくれるなら、頼むわ」
「は、はいっ。分かりました」
空気を変えるように言えば、美月が慌てて返事した。
それからぱたぱたとリビングにキッチンに向かっていく美月を眺めながら、晴は辟易とした風にため息を溢した。
「よく分からん生き物だ」
黒髪を後ろで束ねたエプロン姿の女子高校生に向かって、そう呟いたのだった。
▼△▼△▼▼
「うまうま」
十分程で用意された朝食は、頬が落ちるという表現がしっくりくるくらいには美味だった。
用意されたのは、トーストとスクランブルエッグ、それとベーコンだ。飲み物にはブラックコーヒーを頂戴したので、それも晴の前に置いてある。
「さっきも言ったけど、お前ってホント有能だよな。高スペック過ぎて俺恨まれそう」
「誰に恨まれるんですか」
「世の男どもに」
大袈裟ですね、と美月は一蹴するが、実際美月ほど家事万能な女子はいないだろう。
女性であれば一人暮らしをしている人も多いだろうからある程度はこなせると思うが、美月のようなまだ子どもがここまで家事を出来るのは正直言って敬服ものだ。
大人顔負けの美月の有能さに舌を巻けば、晴はようやく自分の生活能力の無さを実感された気がした。
「俺って本当に家事できなかったんだな」
「できない、というよりやらないだけでは?」
「いや。お前の仕事ぶりを見てたらできるなんて大口叩けねぇわ」
「そこまで立派な事はしてないですけどね」
美月にとっては、家事が出来るのは当たり前という思考なのかもしれない。それが晴にとってはさらに驚愕させられるのだが。
「お前と結婚できてラッキーだわ」
「結婚はしてません。婚約者です」
きっぱりと否定されて、そうだったと思い出す。
「でもまぁ、お前が婚約者であれ妻であれ、俺にとっては有益そのものでしかないな」
「良かったですね。良い相手を見つけられて」
「お前で良かったわ」
「その返しはずるいですっ」
うぐ、と呻く美月に、晴はトーストを齧りながら何やってんだ、とジト目を向ける。
「(人のご飯を食べてこんなに美味いと思ったのは、いつぶりだろうか)」
ふと脳裏に過った疑問。けれどそれはすぐに、咀嚼したトーストと一緒に胃の中へと飲み込まれていってしまった――。
「うま」
人の手料理とか何年も食べてねぇや。晴が羨ましい定規。




