表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元軍人の俺は最強のFPS系配信者として再び戦場で無双する  作者: ゆずけんてぃ
配信者デビューと弟子になりたい少女
18/59

初配信とくしゃみ助かる

【元軍人配信者 kakitaの初配信 (ニューウィーク所属)】


1分後にライブ配信 ・2021年5月26日 22:00  


・56822人が待機しています


開始一分前にして配信枠に集まる5万人以上の視聴者達。

いざその数を目の当たりにすると、思わず笑いが零れてしまった。


「少なく見積もっても6万以上……やっぱ見通しが的確だな。宮園は」

最先端を生きる社長の慧眼にはつくづく感心させられる。

更にここからもう2~3万人増える覚悟すらしておくべきだろう。


【あと一分】

【もうすぐか】

【ざわ……ざわ……】

【マジで本人なの?】

【楽しみすぎてヤバい】

【待機57000はえぐいて】

【軍人って何だよww】

【既に情報量が多すぎる】

【さすがに企業所属と銘打って偽物はないでしょ】

【仕事早退して見に来ました!】


待機してくれている人達はそれぞれ思い思いのコメントを打ちながら開始を心待ちにしている。

皆の興奮や息遣いまでもが画面越しに聞こえてくるようだった。


……俺、案外注目を浴びることが好きなタイプなのかもな。

絶大な期待を受けて、承認欲求が満たされていく感覚を味わいながらそんな事を思う。

緊張が消えた訳じゃないが……今ならもう大丈夫な筈だ。




そして。


21:59という数字がぱっと切り替わり。



俺の初配信が……始まったのだ。





「えー皆様、本日は配信までご足労いただき誠にありがとうございます」


マイクに向かって、精一杯胸に力を込めながら話しかける。

当然モニターには俺の顔がはっきりと映っていた。


【きちゃ!】

【うおおおおおお】

【はいマジでした】

【顔イメージそのまんまやわ】

【きたああああああああ】

【kakitaキタ――(゜∀゜)――!!】

【声が本人】

【顔も声も渋いですね】

【本人やんけ草】

【割と好きなタイプの顔立ち】

【今夜は祭りじゃあああああ】

【伝説の幕開け】

【待ってたよ】

【スカルブラザーズの切り抜き1万回は見ました!】


「うお……勢い凄いな。盛り上がってくれてるみたいで何よりです」


画面がkakitaの姿を捉えた瞬間、コメント欄は目で追いきれないレベルに加速する。

その様は正にいくつにも連なった流星群だ。

具体的な文章までは読めないが……概ね高評価なことが伺えた。


良かった、とそっと胸をなでおろす。

話術や振る舞いはまだしも根本的な声質と顔立ちは変えられない。

故にその二つに不快感を示されたらどうしようもなかったが……この様子なら問題なさそうだ。


安心すると同時に素早く挨拶に移る。


「えー改めまして。株式会社ニューウィークに所属させていただいているkakitaと申します」



真っ直ぐカメラを、リスナーを見つめながら。



「何よりもまず先に一言…………これから何卒宜しくお願い致します。」


そう言って、深々と頭を下げる。


【よろしく!】

【いやもうほんまにこれから一生推すわ】

【よろ】

【よろしくお願いします】

【こちらこそよろしく】

【ニューウィーク……ありがとうな】

【よろしくお願いします<(_ _)>】





そこからは当初の段取り通りに話を進めていく。


まずは配信デビューの経緯についての簡単な説明。

次にこれからFPSを中心とした配信を行っていく予定であることを報告。


特に異常も無く、滞りなく進めることが出来た。



しかし問題が発生したのは次の話題に入った瞬間である。


「えー……では、そろそろタイトルにもある元軍人という部分について語っていきましょうか」


【そこ気になってた】

【え、本当だったの?】

【軍人だからあんなに上手かった……ってコト!?】

【現役時代の話聞けるんか】


やはり食いついている。

宮園の言う通りタイトルにちゃっかり入れておくのは正解だったという訳だ。


『配信者にとって一番重要なのは個性です。先輩の場合は軍人であった点も全面的にアピールしていきましょう』


本当に彼女には助けられてる。今度お礼にスイーツでも持っていくとしようか。




まずは軍学校へ入学した際の思い出から語ろうと口を開く。


「地元の高校を卒業してですね……そのま……むぁ」


何故だか呂律が上手く回らず、最後の文字が崩れた。


その瞬間、鼻の内を駆け巡るむずがゆい感覚。

同時に無意識のうちに顔が吊り上がってしまう。



これは……まずい……!

慌ててせき止めようと試みるが無駄な抵抗である。

既にそれは放出される寸前だったのだから。



「ふ、ふぇっくしょん!!」



室内に響く、盛大なくしゃみ。

それはマイクを伝って視聴者の耳にも響いていく。

反射的に口元と鼻を手で抑えることは出来たが音ばかりはどうしようもなかった。


慌てて謝罪を行う。

「……!す、すいません!皆様に不快な音を……」


たちまち罪悪感と自嘲の念が胸に溜まっていく。



何やってるんだ俺は……折角来てくれていると言うのに……!

比較的落ち着き払っていた俺だが、ここに来て初めて焦りが生じてしまう。


当然コメント欄は汚いの一色に……


【助かる】

【くしゃみ助かる】

【びびったと同時に助かった】

【気にしないで大丈夫ですよー】

【可愛い】

【気にすんな!むしろありがとう】

【凛々しい見た目の割には随分と可愛いくしゃみやんw】


「……え?」


繰り広げられている光景に目を丸くした。


そこには誰一人として突然のくしゃみを不快に思ってる者など居ない。

皆温和な態度でアクシデントを受け入れてくれている。


……それどころか感謝をする者まで現れ始める始末だ。



いや気にするなって意見は普通に分かるしめっちゃありがたい。


でも……何だ?くしゃみ助かるって。

助かる要素はどこにある?俺は何を助けたと言うんだ?

しかも可愛いって……もう28のおっさんだぞ?



疑問符が次々と頭の中に浮かんで来る。



一体皆にとって……俺はどういう認識なんだ?


【元軍人配信者 kakitaの初配信 (ニューウィーク所属)】22分前から配信中


72871人が視聴中




評価やブックマークをして頂けると大変励みになります。


くしゃみ助かるって言う独特の文化を知ってこの話を書きました。

実際分からなくもない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 外でくしゃみするときは人が居ない時にしたいです 何言ってくるかわからない恐怖!(笑)
[一言] 流石にやり過ぎだしゲームプレイしないのかよって思う 視聴者はゲームプレイを見にきてるのに雑談だけってのはおかしすぎると思いませんか?それで5万6万人がホイホイ来るわけない。 まず、初配信なら…
[一言] 面白すぎて明日以降が待ち遠しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ