ダンジョン
次の日は、すっきりと目が覚めた。トールが疲れを取ってくれたおかげだ。
とりあえず塩を作りに海岸に行き、貝殻集めはそこそこにして、森の民の村、マイラの集落を廻って、種を蒔いたり要望を聞いたりする。
最後に西の町に行くと、ゴーバンは追い出されていた。こんな荒れ地に放り出されたら辛いだろうけど、魔物と戦う力はあるんだろうし、圧政を強いてきた自業自得な所もある。
西の町にも鍛冶が出来る人がいたので、今日は鉄鉱石を採りに行く事にする。
それと燃焼石があれば取っておきたい。ガイアによると、同じダンジョンにありそうだけど、鉄鉱石よりは深い所にあるらしい。
それと魔石だ。今まで知らなかったけど、この世界の魔物にも魔石があって、魔道具も作れそうだ。
ダンジョン1階層には、鉄鉱石がなかった。説明書によると、入る度に魔物が違ったり、採掘ポイントも移動したりするらしい。これは邪神関係ではなくて、ホトス様が創ったシステムらしい。どうりで魔物を倒しても、ポイントが入らないはずだ。
ダンジョン1階は、今回はゴブリンだ。ドロップアイテムは、爪の先程の魔石で、たまにしか出てこない。さすが異世界の嫌われ者。異世界のGだ。
2階層はウルフで、たまに毛皮を落としてゆく。鉄鉱石はこの階層にあって、土魔法で壁を作って採取する。
何とか私のレベルでも対処出来る階層にあればいいけれど。薪の要らない燃焼石は、料理に便利だから採っておきたいと思ったのだ。
「ガイア、燃焼石は遠いかな?」
「下の感じはするが、正直判らん。他の鉱石もあるし、そいつも採りながらでいいんじゃね?」
まあ、対処出来ない魔物が出ても、亜空間の中に逃げ込めばいいんだけど。
五階層は森林ステージ。植物がうねうね動いて襲ってくる様は、恐怖だ。剣で叩き切ると、中身の入った小瓶を落とした。
鑑定 赤花の雫 甘くて美味しい。
おお!異世界初の甘味!これで紅茶も美味しく飲める!
亜空間の部屋には、甘味料が一切なかった。単にトールが嫌いなだけかもしれないけど、結構悲しかった。
小瓶を開けて中の液体を舐めると、水飴みたいな感じだった。クッキーとかも作れるかな?調理に必要な材料は、大概揃っているのだ。
よし!花を倒しまくるぞ!
気合いを入れていたら、50㎝位の巨大な蜂が襲って来た。風魔法で切り裂いたら、羽根や毒針に混じって蜂蜜の小瓶を落とした!
まるで楽園のようだ。
「おうミノリ、先に進まねぇのか?」
「ん、もうちょっと!」
この機会に甘味ゲットだ!
集落の人たちはダンジョンの存在を知らないのだろうか?色々採れるのに。
鑑定して食べられるキノコや山菜採りもして、ミノリは笑顔満点だ。
「何かただならぬものを感じるわね」
「とっても嬉しそうでしゅ」
「まあ、暖かく見守るのも俺らの仕事かな」
「馬鹿っぽく見えますわ」
「ふふふ!やっと見つけた甘味!総取りだー!」
「こ、こえぇ…」
「ミノリ、あんた人格変わっているわよ」
だって次来たら魔物変わっているかもだし、だったら採りまくるしかないよね!収納庫が満タンになるまで採ってやる!
「キラービーが雑魚になったわね」
「ふふっ、ミノリちゃん、当初の目的を忘れちゃっているわね」
「そう!それよドライアド!ミノリー!燃焼石はいいの?」
「んー」
ミノリはスマホで時間を確認する。
「あと一時間位したら下の階層に降りて、明日は六階層から始められるようにするよ」
「一時間て何だ?」
「刻の経過を言ってるみたいでしゅ。ミノリしゃまは七刻近くまで頑張ると言ってると思うでしゅ」
「つまりは半刻って事ね。夕食を忘れないだけ良かったわ」
そして次の日。六階層には銀鉱石があった。
十階層のボス部屋で、ミノリは大騒ぎ。
「無理!絶対に無理!!」
2メートル近い大きさのムカデに、ミノリは悲鳴を上げる。
黒光りする体に沢山の赤い脚、無理。生理的に受け付けない。
何とか離れた所から、魔法で遠くから倒したけど、出てきた大きめの魔石は嬉しかったけど、鳥肌が直らない。
次の階層で、心が完全に折れた。オークが、ミノリを見ると目の色を変えて襲ってくるのだ。対処出来ない強さじゃないけど、前日に比べての落差に、攻略への意欲が完全に消えた。
「また明日来れば、次は違う敵かもよ?」
「うう…魔物嫌い」
「でも、肉を落としたぜ?旨いかもよ?」
「いいじゃねぇか。そんなんでも女として見られたんだから」
「イフリート!酷い!」
まだ成長期、だもん!これから女らしくなっていく…はずだ。
「とりあえず今日は戻る。ガンボさんの言っていた魔鉄も探せてないけど、銀は見つけたし」
西の町のリーンさんに、魔法を教える約束もしていた。残念ながら集落で聞いた魔法使いのおばあさんは亡くなっていたけど、親しくしていた何人かの人は、魔力操作出来るようになっていたから、その人達は、魔法も使えるようになるだろう。




