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ルークの謎

「アカツキを再生させる?」

「そうだ。そのためにどうしても必要なのが、世界最強と言われた再生師の力。……お前の力だ、ターロイ」

「世界最強って……え!? 俺!?」

 思わぬ話に俺は目を白黒させた。未だに血を見てへなへなになる俺が、最強とか言われても、何かの間違いとしか思えない。


「何の冗談……」

「こんな時に冗談のわけがあるか」

 横から突っ込む親父に目を向ける。

「……親父もそのこと知ってたの?」

「……まあな。そもそも八年前お前のことを預かって欲しいと言って連れてきたのはウェルラント様だし」

「ええ!?」


「おかげでミシガルに来たお前が偶然トウゲンたちに連れられて来た時は、つい気が急いてアカツキの祠に連れて行ってしまった。あの時はすまなかったな」

「いや、それはいいんですけど、ええ? いろいろ話が衝撃的過ぎて……」

 俺が一人困惑していると、ウェルラントが親父と目配せた。


「……ふむ、ターロイを混乱させるだけだし、今必要のない話は今度にしよう。とりあえず目下の重要事項はアカツキの祠の解放。それから教団の目的をお前たちに伝えることだ」

 ウェルラントの言葉に、スバルが横から口を出す。

「アカツキ様の祠を開くのはスバルの悲願でもありますが、お前たちはもしアカツキ様が復活したとして、どうするつもりです? ニンゲンの都合で使役しようなどと考えているなら、スバルは黙ってないです」


「使役をしようとは思っていない。だが、今のアカツキがどのような状態か、ターロイの力を引き出すために力を貸してくれるのか、確認できないと何とも言えない。……スバルはもしアカツキが敵対したら、そっちに付くつもりか?」

 ウェルラントの探るような視線がスバルを刺した。しかし彼女は特に狼狽える様子もなく、屹然と答える。


「アカツキ様を守るのはスバルの使命ですから。でも他のニンゲンを敵に回したとしても、ターロイやカムイと敵対することはない。種族間で線を引くことの馬鹿らしさは、アカツキ様も知っていらっしゃる……。お前たちがアホなことをしない限り、出会い頭に何かあったりはしないです」

 スバルにはアカツキに対する絶対的な信頼が見て取れた。千年前に封じられた狼王と、まるで会ったことがあるみたいだ。


「……まあ、解放の時にスバルが同席してくれれば、アカツキの反応も違うだろう。私たちだってあまり時間がないし、余計ないさかいは避けるさ。……じゃあ、明日には封印を解きに向かうぞ」

 スバルの返答を受けて、ウェルラントはすぐに話を進めた。

 けれど。


「ま、待ってください。封印を解除しろと言われたものの、俺どうすればいいのか分からないんですけど」

 簡単に明日行くぞと言われても困る。封印扉の魂方陣を解くどころか、あれが何を意味しているかも分からないというのに。

 しかし慌てた俺をよそに、ウェルラントは冷静に続けた。


「解放に同行するのは私とお前とスバルと、そしてルークだ。詳しいことはあいつが知っている。お前は心配しなくていい」

「ルーク?」

 俺は思わぬ名前に目を瞬いた。ルークと言えば、カムイの第三の目に宿る人格……。


「ルークって誰だ? 俺知らないな」

「スバルも名前しか知らんですよ」

 親父とスバルが首を傾げる。そういう俺も、結局全く正体を知らないと言っていい。

 三人でウェルラントに疑問の視線を投げかける。

 それに少しだけ口ごもったウェルラントだったが、仕方ないといった様子で話し出した。


「……これは最重要機密だ。他言をしたら死を覚悟しろ」

 一度そう前置き、俺たちが頷くのを確認して続ける。


「ルークはカムイに寄生した神の欠片……。グランルークの一部だ」

「グランルークの一部? え? 神様って分割できるものなの? それに残りはどこに……」

「……そういや、俺が王宮勤めしてた時に噂があったな。教団の塔のどこかに、ご神体として、壊れたグランルークが祀られてるって。もしかしてそれが本体か」

「ニンゲンなのに『死んだ』じゃなく『壊れた』という表現なのです?」


「王都に流れていた噂は大体合っている。ご神体として祀られているというよりは、利用するために教団が保管しているという状態だが。壊れたと言われるのは、一部が欠けて動かないからだ。……ここに、その核があるからな」

「それがルーク?」

「そうだ」

 なるほど、グランルークにしか操れない魂方陣を使い、魂のデータを書き換えるなんて所業ができたのは、彼が神の一部だったからなのか。


 しかし、何故彼はグランルークから分離して、カムイの中にいるんだろう。誰が、どうやって、何のために?

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