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古代の武器

「どういうことだろう・・・・・・一体、あの後に何があったんだ?」

「あの後って?」

 俺が呟いた言葉に、カムイが訊き返してきた。

 そう言えば彼にはモネでのことを話していなかったっけ。


「カムイが追っていたサーヴァレット、今はサージが持ってるのは知ってるんだよな?」

「あの男はサージと言うのか。もちろん知っている。僕が追いついたときにはすでに彼は剣に囚われてしまっていて、取り戻すことができなかったから」

「その男とスバルたちはモネで戦ったです」

「君たちがサーヴァレットを相手に戦ったって?」

 カムイはスバルの言葉に目を瞠った。


「サージがその剣で・・・・・・親方と、自分の連れの教団の僧兵を消したんだ。殺されたというのか分からないんだけど。跡形もなく消えてしまったから。・・・・・・それでその後、サージが俺たちも消してやると言ってきて、戦うことになってさ」

 そのときのことを思い返しただけで腹の底に、何かどろどろとした気持ちがわき上がる。

 思わず顔を顰めると、それを見たスバルが引き継いで続けた。


「そのときは奴が持っていた充魂武器を使ってどうにか撃退して、逃げることが出来たです。そのまま急いでモネを出てきてしまったですが・・・・・・」

「充魂武器? そうか、オリハルコンで対応したのか・・・・・・。でもサーヴァレットを持った人間と渡り合って、よく逃げ果せたね」

 関心したように言う彼に、俺も頷く。

「うん、スバルのおかげだよ。俺はスバルに一旦逃がしてもらって、でも心配で助けに戻ったんだけど、結局血を見て卒倒しちゃってさ。何の役にも立てなかった」


「・・・・・・血を見て?」

「あー・・・・・・えっと、ターロイも役に立たなかったわけじゃないですよ・・・・・・?」

「役立ってないよ。まあ強いて言えば、俺のハンマーが役に立ったくらいだろ?」

「スバルがハンマーを使って撃退したの? ・・・・・・へえ、ちょっとそのハンマーを見せてもらっていいかな?」

 カムイがちらとスバルを見て、それから俺にそう言った。

 そう言えば俺のハンマーにはオリハルコンのハンマーヘッドが填まったままだ。彼は古代に関する研究をしていたと言うし、興味があるのかもしれない。


 別段隠す理由もないのでそれを素直にカムイに渡すと、彼はそのヘッドを焚き火の明かりにかざした。

「・・・・・・この印は硬化と防御の封呪だな。今は魂のエネルギーが空のようだが、そのときは入っていたんだね?」

「術が発動出来たですから、入ってたですよ」

「そう・・・・・・。また誰かを犠牲にしたのか。彼らはどこまで・・・・・・」

 ぼそりと独りごちて、彼はハンマーから俺に視線を戻す。


「ターロイ、このハンマーを一晩預かっていいだろうか。今後のために、魂のエネルギーを込めておくから」

「えっ、そんなことできるのか?」

「・・・・・・僕にはこういう碌でもない能力ばかり備わっているんだ」

 自嘲気味に笑ったカムイがオリハルコンをコツンと叩いた。

「これには持ち主の防御力を上げる付呪がなされている。ターロイの身を守るにはちょうどいい。術による力の解放をしなければしばらくは君の役に立つだろう」

 防御力を上げる、と言われて、このハンマーを持ったサージと戦ったときに、奴がやたらに硬かったことを思い出す。あれはこの充魂武器のせいだったのか。

 そしてマルロとスバルが使った術で力が解放された。


「力を解放する術って俺も使えるのか?」

 自分の防御の心配ばかりするより、あの力が使えるのなら俺にも何かできるかも。

 そう考えて訊ねると、カムイは少しだけ逡巡して、でもすぐに口を開いた。


「・・・・・・アイテムに込められた術は、真語句という言語で造られた魂言を発すれば、誰でも使える。自発的な術が使えなかったドワーフ族が、自分たちにも使えるように加工したアイテムだからね。・・・・・・ただその力故、使い方を間違えると危険なんだ。君は自分の判断の責任を負える?」

 探るような視線が俺を捉える。彼の瞳の強さに、俺は少し後込みしてしまった。


「まだちょっと、戦い慣れしてないから自信がないな・・・・・・」

「ちなみにこのハンマーに施された術は、大防御と反射の二つだ。これはアイテムによって決まっているもので、他のものとは術の内容も強さも属性も、それから込められる魂のエネルギー量も違っている」

 大防御というのはマルロの使った術か。そして反射がスバルの発動した術だろう。


「そして術を使わずに充魂されたままの武器は、アイテム自体の能力が上がり、持ち主の身体能力も上げる。魂のエネルギーから出る波動で自身のエネルギーも増幅されるんだ。使用するたびに少しずつエネルギーは減っていくけど、僕としては君にはこちらの方がいいと思う」

 そう言って、カムイは少し声のトーンを落とした。


「・・・・・・さっきの話を聞いて、モネの封鎖にサーヴァレットが関わっていると僕は推察する。もし再びあの剣と対峙するときに、安易に力に頼って解放するようでは、君は簡単に消されてしまうだろう。今やサーヴァレットは宿り主を操って、どんどん力を付けている」


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