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村の秘密

「ところで、ミシガルへの隠し道が知りたいんだったな? 地図を持ってくるからちょっと待つんだぜ」

 ようやく俺たちの頼みを思い出したトウゲンが、一人で砦に戻っていった。

「砦の中には俺たちの一存では入れてあげられないんだよう。すまんねえ」

「いえ、どうせ俺たちも急ぐので。突然来て手間を掛けさせて、俺たちこそすみません。ここや隠し道路も、本来なら秘密なんですよね?」


「んん? この砦は別にそれほど秘密でもないねえ。昔の王宮の詳細地図には普通に載ってたし。ただ教団が作り始めた新版の地図から消されて、さらに王宮も機能しなくなっちゃったせいで、忘れ去られちゃってるだけなんだよねえ」

「・・・・・・マジすか」

 思いの外、王宮側は教団に相手にされていないようだ。

「まあ、隠し道は俺たちが歩いて開拓したから、そういう意味ではトウゲンの持つ地図は稀少なものだねえ。だから教団には知られたくないんだけども、ターロイに教えるのは平気だよう」

 ありがたいけど、そんな簡単に俺に情報をくれて大丈夫なのか。


「おう、お待たせだぜ。ターロイ、このルートを暗記して行くのは難しいぜ、自分でも地図持ってるなら写していきな」

 早足で砦から戻ってきたトウゲンが地図を開く。確かに少し込み入った道のようだ。

 俺もさっきカムイにもらった地図を開いた。

「ありがとうございます。とりあえずミシガルまでの道だけ写させてもらいますね」

「これな、道を逸れるとすぐに崖に当たったり沼地にはまったりするから、慎重に進むんだぜ」

「き、気をつけます」


 彼らの地図を見ながら慎重に写していく。すると、それを覗き込んだホウライが何故か、怪訝そうに口を開いた。

「・・・・・・ターロイ、この地図・・・・・・失われし村二つが書いてあるねえ? ここはもう人間がいない、入ってはいけない村。記入しても意味が無いよう?」

「え? あ、はい、知り合いに教えられて、もう無い村だとは聞いていますけど。確か、ここに不用意に近付くと死ぬって・・・・・・」

「おい・・・・・・その話を聞いた知り合いって、誰だぜ?」

 向かいでトウゲンも眉を顰める。

 あれ? 俺もしかして、何か余計なこと言った? 今更のようにカムイがあまり無駄話をするなと言っていたことを思い出す。


「その村の状況を知るのは王宮と教団の、一部の人間のみだぜ。それを知っているとは」

 これは、隠し道路なんかよりこっちの方がよっぽど秘密事項だったようだ。それを何故カムイが知っていたのかはさておき、彼らにどう言ったものか困惑した。


「ええと、教団のグレイの研究所にいた人から聞きました。細かいことは全然知らないんですけど」

 一応、嘘は言っていない。カムイの名前は出さずに答えると、彼らは即座にグレイの名前に反応した。

「お前たちグレイに会ったのか! ・・・・・・まあ、やりたい放題のあの男の関係者なら、村の現状を知っていてもおかしくないか・・・・・・。ターロイ、とりあえずその知り合いとやらに忠告されたのなら、行かないようにするんだぜ」

「あの、村には何かあるんですか?」

 何なのだろう、トウゲンたちの少し焦った様子。

 不思議に思って訊ねると、その答えは彼らではなく何故か俺の横から返ってきた。


「・・・・・・ターロイ、村に近付く気にならないように、先に言っておくです。あそこにはニンゲンではない者がいるのです」

「えっ?」

 驚いてスバルを見る。同時にトウゲンとホウライも目を丸くして彼女を見た。

「嬢ちゃん、何でそれを・・・・・・」

「思い出したくもないですが・・・・・・、スバルはファラの生まれなのです」

 本当に嫌なことを思い出しているようで、眉根を寄せて渋い顔をしている。


「スバルちゃんがファラの!? ということはよう、もしかしてあの例の小屋の・・・・・・」

「そうです、あそこに閉じ込められてたです。・・・・・・だから、村のことを隠しても無駄です。それに心配しなくても、ターロイをあんな危険なところに連れて行ったりしないです」

 スバルの言葉で商人二人が肩の力を抜いた。

「嬢ちゃんが知ってるならまあ大丈夫か」

「スバルちゃんを信用するよう」


「えーと・・・・・・どういうこと?」

 理解ができない俺を置いて三人で話がまとまってしまった。

「ターロイは嬢ちゃんに守ってもらってればいいんだぜ。とにかく村には危ないから近付かない、で終わりだぜ」

「そういうことだよう」

 二人はただ頷き、スバルはしかめっ面をして、これ以上何を語る気もないようだ。

 まあ、今すぐ知らなくてはならないことでもない。諦めの早い俺はすぐにため息を吐いた。


「・・・・・・分かりました。とりあえず目差すのはミシガルですし、村には行く予定もありません。地図ありがとうございました」

 トウゲンの地図を返して礼を述べる。

「おう。隠し道はほぼ獣道みたいなもんだぜ、気をつけて行けよ? 野宿の際は一人見張りを立ててな。三人いればどうにかなるだろ」

 ん? あれ? 俺、三人旅って言ったっけ?


「じゃあな、ターロイ。今度は王宮で会おうぜ!」


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