表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/89

グレイとの再会

「俺のデータが登録されてるって、何のこと?」

「グレイが君を研究対象としてそのうち捕獲する心づもりがあるということだよ。今回は予定外だったろうけど」

「ほ、捕獲!?」

 俺が目を丸くすると、カムイは小さく息を吐いた。


「門扉にあった魂方陣に乗っただろう。あれは人間の魂と体を生成しているデータを読み取り、個人を特定するためのものだ。そこで読み取ったデータを登録されている情報と照合し、転送先が振り分けられる。・・・・・・今はたまたま僕が気付いたから途中で遮ったけど、君の本来の転送先は研究用カプセルの中になっていた」

「グレイが、何でそんなことを・・・・・・」

「別に意外でも何でもない。あの人はそういう人だよ」

 肩を竦めた彼が、再び部屋の外を気にする。


「ターロイがここに来たことはもうグレイに知れてしまっているだろう。多分間もなく戻ってくる。その前にどうにか君を外に・・・・・・」

 どうやらカムイは俺をグレイに会わせたくないようだ。しかしそれではここに来た意味がない。

 グレイが俺を捕まえる理由も分からないし、とにかく俺は彼と話をしたかった。


「ちょっと待って、俺グレイに話があるんだ。それとは別にカムイのことも、ウェルラントに頼まれてて・・・・・・」

「・・・・・・僕のこと?」

 ウェルラントの名前を出した途端に、カムイの様子が変わる。

 どこか困惑したような、怯えたような表情が浮かんだ。

「ここにいるかもしれないから捜して欲しいって言われた」

「そう・・・・・・。勝手にミシガルを離れてしまったから、怒ってるだろうな。でも僕は呪いを解かないと・・・・・・」

 いつもは落ち着いていて冷静な彼が、視線を落とし、ひどく萎れて気弱な声音で呟く。この反応、一体カムイとウェルラントはどういう関係なんだろう。


 目線を伏せた彼の額にあるもう一つの目は、今は閉じられていた。


 異形の姿を持つカムイ。ウェルラントはこの姿を他のものに見せるわけにはいかないと言っていたけれど。

 忌み子だからと言うのなら、本当に災厄を招くのだとしたら、放っておいて、閉じ込めずに出て行ってもらった方がいいはずだ。

 何であの人は今まで彼を手元に隠し、今また取り戻したがっているのか。


 そもそも、彼は何者なんだ?


 黙り込んでしまったカムイを前に思案していると、唐突に部屋の扉が開いた。それに驚いて目を向ける。

「やあ、久しぶりですね、ターロイ。何ですかそのメガネ。アホっぽくて全然似合ってないですよ」

 当然ながら、入ってきたのはグレイだ。軽くひとをディスるのも忘れていない。そんな彼を見ただけで、カムイの表情がいつものものに戻った。


「カムイ、見てましたよ。ターロイの転送途中に手を出すなんて、無茶をしますね。彼のデータが壊れたらどうするんですか」

「僕だってこんな危険なことしたくてしたわけじゃない。あなたが『約束』を破ろうとするからだ」

「おや・・・・・・ふふ、バレてましたか。手っ取り早いと思ったんですけどね」

 二人の間で交わされる何か含みのある会話は、俺にはわけが分からなかった。いや、もしかするとわざと俺に分からないように会話しているのかもしれない。


「そう言えばターロイ、教団に指名手配されてるそうですね。本来なら君の身柄を引き受けていた私に報告が来そうなものですが、先日まで全く知りませんでしたよ。まあきっと、あの糞どもには後ろめたいことがあるんでしょうねえ」

 俺が話に入れずに外したメガネをしまっていると、カムイのきつい視線をはぐらかすようにグレイがこちらに話を振ってきた。

「・・・・・・グレイが俺を捕まえようとしたのって、そのためですか?」

「はは、私があんな下衆どもの保身のために動くわけないでしょう。純粋に研究材料として、そろそろターロイ捕獲の準備をしようと思ってただけですよ」

 その言葉が全く悪意を乗せていないのが逆に恐ろしい。


「グレイ! 『約束』を違えてターロイに余計なことをしたら、僕はもちろん、エルも黙っていないよ」

「分かってます。準備をしていただけで、今の彼をどうこうしようとは考えていませんよ。そもそも目覚めていない彼には、それほど興味はありませんので」

「目覚めていない?」

 また何か意味のわからないことを言っている。問い返すと、隣にいたカムイがそれを遮って首を振った。

「君は分からなくていい。この人は揺さぶりを掛けているだけだ」


「でも、そろそろターロイに動いてもらわないとまずいでしょう? サーヴァレットは愚者に奪われ、賢者の石は魂を吸って生き返ってしまった」

「あ! サーヴァレット! そう言えば、あれサージの手に渡ったままだったけど・・・・・・。取り返さなくていいのか? 俺が動かないとっていうのは、俺に取りに行けってこと?」

「・・・・・・違うよ。グレイ、余計なことを言わないで。サーヴァレットは僕が追いついたときにはもう、あの男に取り付いていた。ああなってしまっては取り戻すのは難しい。今のターロイでは、無理だろう」

「今のターロイでは、ね」

 グレイが意味ありげに笑う。それをカムイが横目でじろりと睨んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ