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彼女の部屋にたどり着くと、メイド二人は部屋から追い出されていた。人払いだ。
完全に二人きりになった部屋。メイドもいないから、お茶もない。
ソファに座るように案内されたけれど、緊張して、上手く行動できているか自信がない。
「あまり長々と雑談をして怪しまれるのも困るからね。単刀直入に聞くが――君はリンゼガッドに行って、リンゼガッドではこの戦争がどう扱われているか、見聞きしたかい?」
思ってもみなかった質問に、わたしは目を瞬いた。
「え、ええと……その。有益な情報、という話であれば、お茶会で言った通りなのですが……」
「いいや、そうではない」
彼女は、ことさら声をひそめ、周りを気にしていた。
「単純に、リンゼガッドがどういう扱いをしているのか、気になってね。……ここでの話は外に出さない。こういう話をしていると、母様にばれたらまずいのは、私も同じなのでね」
女王様とレギーナ様の考えは、イコールではない、ということだろうか。
わたしは少し迷った挙句、「リンゼガッドでは、オアセマーレから戦争をしかけたことになっているようです」と伝えた。
このこと自体は、別に少し調べれば分かることだろうから、言っても問題はないだろう。そもそも、レギーナ様だって、戦争の内容は自国にとって都合のいいように情報が歪められると分かっているだろう。
案の定、それは既に知っている、と言わんばかりに、「他は?」と聞かれた。
……リンゼガッドが優勢だと思っている、という話はしても大丈夫だろうか? シオンハイトに本を見せてもらった、『オアセマーレから戦争をしかけた』という情報と違って、狸寝入りをして聞いた、不確かな情報である。ビードレッドがそう思っている、主観的なものである可能性も十分にある。体は動かなかったが、意識はハッキリしていた――とはいえ、直前まで寝ていたのだ。夢だったと、と言われてしまえば、絶対にそんなことない、と否定しきれない。わたしの感覚では違うと思うのだが。
その情報をそのまま彼女に伝えていい物か、と迷っていると――。
「リンゼガッドでは、何が戦争の火種になったか、教えているのか?」
――と、彼女はわたしに問うてきた。
わたしとシオンハイトが気にかけていたことに、ぎくり、と思考が止まる。
「家庭教師から、戦争の話は教えられたものの、原因が何か言わなかったから、好奇心で聞いたんだ。そうしたら、母様に酷く叱られてな。……何かあるのでは、と思ったのだ」
リンゼガッドの第四王子であるシオンハイトだけでなく、オアセマーレの第一王女である彼女も知らないのか。
「私としては、休戦ではなく、一刻も早く終戦にしたいと思っている。リンゼガッドの技術力には目を見張るものがあるのでな。吸収できるところは吸収したい。奪うのではなく教えを乞うべきだ。原因が何か分かれば、終戦の手がかりになると思ったのだが――」
「……生憎ですが、わたしも知らないのです」
オアセマーレに来たら、リンゼガッドでは知りえない情報を入手できるだろうか、と期待して来たけれど、この分ではたいした情報は得られないだろうか。




