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数週間後。わたしはシオンハイトと共にオアセマーレ王国に来ていた。来ていた、のだが……。
――昔の知り合いに会いたくない!
その一心だった。
シオンハイトについてきて、わたしも王城に来ているのだが、用意されたドレスがドレスなのだ。
年相応じゃないのである。
なんとか頑張って、フリルやリボンを極力減らしはしたものの、最終的にドレスを用意してくれたのはシオンハイトなので、結果として若めなドレスになってしまった。
わたしは必死になって年相応のものを、と頼んだのに、シオンハイトの「可愛いよ?」という一言でこんな結果になってしまった。わたしのイメージが幼少期で止まってるのか、と思ったけれど、これは単純に、シオンハイトの女の服の趣味がこういうものなのかもしれない。よくよく考えたら、幼少期も別にフリフリなドレス着てなかったし。
対するシオンハイトは、かっちりと制服を着込んでいて普通に格好いい。ずるい。二重の意味でずるい。
シオンハイトが仕事で動いている間、わたしは王女様やその他侯爵令嬢とお茶会である。流石に護衛の仕事をしているシオンハイトの傍にべったりついているわけにはいかない。
王女様は、わたしがオアセマーレにいる間、あんまり交流がなかったからいいとして、侯爵令嬢の方々は……。敵対派閥だったご令嬢らに会ってしまったら、どういう反応をされるか大体想像がつく。嫌だなあ。
幼少期、あれこれ嘘を吹き込まれた記憶が蘇ってくる。まあ、今はもう、大体は嘘だと見抜けるようになったから、後で恥をかくことはないのだが……。元より彼女たちへの信用度も低いから、もう鵜呑みにすることもないし。
「それじゃあ僕は行くけれど、知らない人について行ったら駄目だよ?」
「むしろ知っている人でも簡単についていくと思う?」
わたしの性格を知っているだろうに。思わず聞き返してしまえば、「分かってるけど心配なの」と言われてしまった。そう言われると言い返せない。
「流石に、今の時期になにかあるとは思わないけど、気をつけてね。すぐに駆けつけたくても、難しい場合もあるから。もちろん、極力、何かあればすぐ行くつもりだけど」
「そこは流石に仕事を優先してよ」
わたしだって、そこまでの我がままをいうつもりはない。シオンハイトの護衛相手は王太子、つまりは次期国王なのだ。天秤にかけないでほしい。荷が重すぎる。
大丈夫、と言ってもなかなか離れたがらないシオンハイトを見送って、わたしも、お茶会のために呼ばれていた庭園へと向かうのだった。




