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わたしはシオンハイトの持っていた植木鉢から、ゼナミントをちぎって一枚口に放り込んだ。
「あ」
ピン、とシオンハイトの耳が動いた。
洗いもせず食べたけれど、鼻が完全に詰まっているので、あんまり土っぽい匂いはしない。舌の上において舐めていると、すーっとしたものを感じる……気がする。
鼻がじわっとしたので、すん、と鼻をすすると、少しだけ鼻の通りが良くなった。いまだに口で呼吸しないと苦しいけれど。
「も、もっと食べる?」
そわそわとした様子のシオンハイトに、わたしは「いらない」と答えた。ゼナミントは一度に何枚も摂取したからといって、そんなに効果が変わるわけではない。そもそもミントはそこまで好きな部類じゃないし。効果がないのなら、進んで食べようとは思わない。
まあ、今は風邪のせいで舌がばかになっているから、そこまで露骨に嫌でもないんだけど。ゼナミントの味があんまり分からないなんて、そうとう味覚も終わっている。
舌の上にあったゼナミントの葉が、わたしの唾液でふやけてきたのを確認して、そのまま飲み込む。
「これ、ここに置いておくから、いつでも好きなときに食べて」
そう言って、シオンハイトはわたしのベッドのすぐそば、手を伸ばせばベッドに寝たままでもゼナミントが摘める場所に鉢植えを置こうとして、ピタッと固まった。
「あ、でも、ここじゃない方がいい? 僕がずっと見張っていられるわけじゃないし、貰ってきちゃったからもう兄上のじゃないし……君も寝るでしょ?」
シオンハイトもわたしも、ずっとこのゼナミントを意識していられるわけじゃないから、誰かに何かされるかも、と言いたいのだろう。
正直、その疑いがない、わけではない。
「……もう、いらないからいい。あんまり効かないっぽい、し」
ゼナミントは結構即効性のあるものだ。口の中に入れて比較的すぐに鼻が少し通り良くなったように、本来なら口に含んで少ししただけで鼻水がひくはずなのだ。でも、これだけしか効果がない、ということは、やっぱり本格的な風邪には気休め程度しかならない、ということだ。
「……でも、持ってきてくれて、ありがと」
そう言うと、ぱあ、と、分かりやすくシオンハイトの顔が明るくなった。まるで演出のように、ものすごい変化である。
「ううん! なんでもするから言ってね!」
百点満点の満面の笑み、とでも言うべき笑顔を、シオンハイトは浮かべた。
風邪を引いて、心細くなっていたのか、その笑顔にちょっとだけ励まされたのは、内緒だ。




