表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世悪役令嬢。現代OLに転生して、幼馴染みの年下彼氏に溺愛されてます。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/14

第13話 前世悪役令嬢。現代OLに転生して、幼馴染みの年下彼氏に溺愛されてます。

 私たちが関わったプロジェクトは、新商品の発表当日すぐに、あっという間に話題になった。

 雑誌やネットニュースで取り上げられて、駅ビルや大手百貨店の店舗では行列ができるほどの売れ行き。

 期間限定だったはずの商品だったけれど、売り切れ続出の声に押されて、常設販売に切り替えられることが決定した。


「すごいよなぁ、こんなに注目されるなんて」

「チームの皆さんの努力の賜物です。それに今回のプロジェクトは、広瀬の頑張りで成功したものですよ」


 後日行われた成果報告会で、上層部が何度もそう言っていた。

 総責任者の早河チーフが壇上でまとめの言葉を述べると、会場は拍手で包まれる。

 広瀬衛も上層部からねぎらいの言葉を受けていた。


 あれから――……広瀬衛は、私に過剰な仕事を押し付けることがなくなり、それ以外でも関わらなくなった。

 本人はプロジェクトリーダーだし、私はサポートに入ってるメンバーだから、プロジェクトが終わるまでは、仕事のことで接することはあったけど、扱いは他のサポートメンバーと同じ。

 あの過剰なアプローチや接触が、ぴたりと止まったのだ。

 表面上は何でもないような顔をしていたけれど、私が横切ったりすると、わずかに身体を強張らせていたから、相当ビビっていたに違いない。

 根性ねーな。

 そうやって逃げるぐらいなら、最初から関わってこなきゃよかったのにさ。


 私としては、てっきり、自分を受け入れないなんて許さない!って、嫌がらせされることも想定してたんだけど、それもなし。


 まぁ、王子だった時も、前世の私を罵ったのは、仕事の邪魔をされたときとか、罪のない相手に、前世の私が嫉妬して虐げたのを知った時だったもんね。


 悪役令嬢が主役のラノベみたいにさ、王子が自分から嫌いな悪役令嬢に近づいてきて、冤罪をでっちあげてぎゃんぎゃん喚く、みたいなことはしなかったんだよ。

 根は善良だったんだよねぇ、王子様。

 だから償いたいとか、わけのわかんねーこと考えてたんだよ。


 根本的に、合わなかったんだよねー、相性が。

 前世の私は、王子の顔が好きで、あの性格が優しいって思って、それで夢中になったんだけれど、そもそも度量のない王子には、嫉妬の塊だった前世の私を受け止める余裕がなかったんだもん。

 どう頑張ったって、結ばれるわけなかったんだよねぇ。


 ともかく、この成果報告会をもってプロジェクトチームは解散して、ようやく私は庶務課に戻れることになった。



**********


 プロジェクトチームが解散し、庶務課に戻った私は、不在の間の庶務課を回していた茉莉に泣きつかれた。

「千束がいなくて大変だったんだよぉ! なんか千束の変な噂も流れてきたしさぁ! もうそんなんだったら、こっちに千束を戻せって、何度怒鳴り込みに行こうと思ったことか!!」

 あー、やっぱあの私の悪い噂、他の部署にも広まってたんだぁ。

 まぁ、庶務課であの話を信じる者は居まい?

 庶務課のみんなは、私が兵吾にしか眼中にないの知ってるし、そのうち消えるでしょう。


 通常業務に戻った私は、他の部署に書類を届けに行ったときに、ふと耳に入った会話に顔を上げる。


「ねぇ、聞いた? 企画の広瀬さん、ロス本社に転属するらしいよ」

「この間のプロジェクトで評価されたんでしょう?」

「送別会やるのかな?」

「まだ先の話だからどうだろうね」


 へー? ロサンゼルス本社に転属ねぇ。

 ()ってことは、もう日本には戻ってこないで、あっちに腰を据えるってことかな?


 広瀬衛が私にしてたことって、見方を変えれば、嫌がらせと同じ。

 祐実さんだけじゃなくって、サポートからも報告されてたみたいだし、たぶん、上の方では問題になってたはず。

 でもプロジェクト成功したじゃん?

 だからさぁ、表向きはその手腕をよりよく生かすために本社にって形だけど、実情は、本社の厳しいコンプラを体験して反省しろってことなんだよね。

 あと日本でそこそこの業績でも、海外本社でどこまでそれが通じるかわからないっていうのもある。だって海外の方が日本よりもいろいろ厳しいからさぁ。


 結局、潰し合いはなしか。

 プロジェクトは終わって接点はなくなったけど、振られた(?)腹いせに、なんか仕掛けてくると思ったら、それもないしね。

 ちぇー、つまんないのぉ。

 まぁ、海外に行って、金髪美女に食われるか、ガチムチマッチョに掘られれば、人生観変わるんじゃねーの?

 なんか王子様の延長で生きてたみたいだったしね。


 庶務課のフロアーに戻る途中で、声がかかった。

「萩原さん」

 名前を呼ばれて振りむくと、そこにいたのは、咲村こころ。

「咲村さん?」

 親し気な笑みを向けながら、咲村こころが近づいてきた。

「ちょっと、時間、よろしいですか?」

「えっと、はい。大丈夫、です」


 そのまま休憩スペースに移動すると、咲村こころにミルクティーを渡される。

「どうぞ」

「ありがとう」

 私がミルクティー好きなの、知ってたのかな?

「何か、話、あるのかな?」

 ミルクティーを受け取りながら訊ねる。

「私、来月から地方の支社に移動することになりました。そのことを、直接、萩原さんにお伝えしたくって」

 報告してくる咲村こころは、憑き物が落ちたような感じ。私を見る目も、あの敵愾心がきれいさっぱり消えていた。

 ここで、なんで私に報告にきたの?って聞くのは野暮な話だよね。


「そう、なんだ……急に決まったの?」

「いいえ。プロジェクトの終わりごろに、希望を出してたんです。それで、今日、正式にそれが通って……」

 ってことは、もうあのプロジェクトの終盤辺りでは、広瀬衛への踏ん切りはついていたのか。


「萩原さんには、いろいろご迷惑をかけたから……」

 そう言って小さく息を吐きだしてから、咲村こころは頭を下げる。

「いろいろ酷いことして、ごめんなさい」

 何も言わないで、黙って移動することだってできたのに、律儀な女だなぁ。

「酷いことは――、私の方もしてたけど?」

 私がそう言い返すと、咲村こころは、面を食らった顔をする。


「泣き寝入りして逃げ出す、か弱い女だと思った?」

「だってあなた、普通あんなこと言われたら……」


 男と寝て仕事を取ったとか、押し付けたとか、そんなこと言われたら、傷付いて泣きだすって思うんだろうなぁ。

 まぁ、私はそう言うのを利用して、相手にカウンター与えるのが大好きだけどね。


「悪魔を呼び出して、やりたい放題やってた女が、あの程度で逃げ出すわけないじゃない。そんな可愛げのある性格してたら、処刑なんてされなかったわよ」

 前世の私は、倫理感もぶっ飛んでたけどね。

 言いたい放題言われて、癪に障ったのか咲村こころは、顔を真っ赤にして言い返してきた。

「が、外見詐欺だなんて気づかなかったんだから、仕方がないでしょっ」

「つまり、リサーチ不足だったわけね」

 私がそう言うと、咲村こころはグッと声を詰まらせた。


「それで、広瀬……さんのことはもういいわけ?」

 あぶねーあぶねー。危うくフルネームで呼ぶところだったわ。

 私の問いかけに、咲村こころは苦笑いを浮かべる。

「もう、いいっていうか……」

 口ごもりながら、咲村こころは話し出す。

「あなたの、言う通りだったし。それに、なんか、アレを見てたら気持ちが……」

「言う通り?」

「……ペット扱いだったって言ってたじゃない」

 あぁ、それか。

「前世の話しでしょ? 今は違うんだから、ペットから昇格狙えばいいじゃない」

「やってたわ。でも、広瀬さんあなたに執着して、無駄だったでしょう?」

 なんか変な風に思い込んでたところ、あったような気もするけれどねぇ。

「でももう、私のことは諦めたみたいだし、言い寄ってもきてないよ。今ならいけるんじゃないの?」

 そう言ったのに、咲村こころは首を横に振る。


「冷めたのよ。あの人のあなたに対しての執着を見てたら、こんな人だったっけ?って思ったの」


 え、う~ん。これはどう言えばいい?

 気持ちが冷めるっていうのは、私もそうだったから、そのことに何か言うつもりはないんだけど、でもそんな簡単に諦められるもんなのかな?

 それこそ好きだったのに殺されたとか言うならまだしも、咲村こころは王子に危害を加えられたわけじゃなかったし、それは今世でもそうじゃない?

 まぁ、相手にはされてない感じはしたけどさ。


「好きだったのは、本当よ。前世だってずっと好きだった。生まれ変わって広瀬さんを見た時、今度こそって思ったわ」

 あ、それも不思議だった。

 ちょっと聞いてみたい気もするんだけど、先に、なんで冷めた?っていうか、広瀬衛を諦めたのかを聞いておこう。


「だから頑張って、何とか私を見てもらおうと思ったけれど、広瀬さんは全然振り向いてくれないし……。あなたに対しての態度が、どんどん執拗になっていくし、なんか変だと思ったわ。それで、あんなこと言って……」

 あんなことって、最後のあれだよね。

 前世のこと話し出して、私が覚えてないと思って大嘘ぶっこいたやつ。


「アレを見たら、勝手なんだけど、幻滅しちゃったのよ。この人こんなに自分勝手な人だったの?って」

 咲村こころは大人だなぁ。素直に気持ち悪いって言えばいいのに、幻滅したってマイルドな言い回しするの、すごい。

「そうしたら、もう、全部、どうでもよくなったの。前世のことも、広瀬さんのことも、それからそのことに拘ってたことも」


 それで、もういいってなっちゃったのか。

 まぁ、好きなのに振り向いてくれなくって、じゃぁもういいってなるその気持ちはね、わからないでもない。


「広瀬さんが王子の生まれ変わりだって、なんでわかったの?」

 どうしても疑問だったことを訊ねたら、咲村こころは不思議そうな顔をして答えた。

「え? だって、見えたわよ? 王子だった頃の姿が」

 見えたのか。

「じゃぁ、私も?」

「あなたは最初はそうじゃなかったんだけど、やり返されたときに、姿がダブって見えたわ」

 ふ~ん、まぁおおむね私と同じ状態だったわけか。

 ってことは、たぶん広瀬衛も同じだな。

 むしろ、悪魔が何かしていた可能性ありそう。でも、それを確かめる方法なんてないから、本当はどうなのかなんて、わからないままだね。



********************


 本人に移動の話を聞かされてから一か月後、私は兵吾と一緒に、咲村こころを見送りに駅へ向かった。

 入場券を購入して、ホームで電車を待っている咲村こころへ声をかける。


「やっほー、こころちゃーん。お見送りに来たよー」


 見送りに行くとも何も言ってなかったから、手を振りながら近づいてくる私の姿を見た咲村こころは、目を見開いて固まっていた。

「な、なんで?」

「はい、これー」

 そう言って持っていた紙袋を差し出す。

「え?」

「前に言ったじゃん。『ざまぁフラグ王子』貸してあげるーって。だから餞別にあげる」

 単行本が入った紙袋を受け取りながら、咲村こころは戸惑った様子を見せる。


「あとさー、前に聞かれた質問、答えてなかったじゃん? だから答えておこうと思って」

「質問?」

「なんで王子を諦めたのかって質問」

 思い出したのか、「あぁ、あれ」と、小さく呟く。


「咲村さんはさ、王子に嫌われていたわけじゃないし、普通に可愛がられてたじゃん?」

 ペットとしてだけど。

「王子との思い出は、優しくされて、楽しかったいい思い出だけでしょ? でも私は、王子との思い出ってあんまいいモノじゃないよ」

 罵られて、蔑まれて、貶められて、馬鹿にされて。

 そういうことしかされなかった。

 そういうことをされるようなことしか、してなかったんだから、当たり前なんだけどね。

「それで、挙句の果てに、断罪ざまぁされて、首ちょんぱ。首ちょんぱは王子にやられたわけじゃないけど、指示したのは王子だし、心情としては、王子にやられたようなもんよ」


 広瀬衛の海外転属は事実のようで、準備として、転属先の方へ何度か行っているようだ。

 もっとも部署も違うし、全く顔を合わせることがないから、奴の情報は、他の社員がしている会話からのもなんだけどね。

 王子に対しては確かに恨み辛みはある。そして自分の都合の為だけに、私に付きまとった広瀬衛にもムカつく。


 けれど、じゃあ、今やり返したいか?というと、どうでもいい。って感じだ。

 特に今回のことは、私が自分の手でちゃんとケリをつけたし。


「自分を嫌って殺した奴、生まれ変わっても好きになる?」

「……無理、かも」

 かも、じゃなくって無理なんだよ。

「まぁ、そーゆーことよ」


 もし前世の私が婚約者の王子に愛されていたらってことは、あえて言わないことにした。

 だって後ろから私を抱きしめてる兵吾が、そんなこと聞いたら嫌な気分になるじゃん。


 私、好きな人には一途なのよ。


 他にどんなにイケメンが傍にいたって、好きな人以外は眼中にないの。

 それは前世もそうだった。

 王子の傍には、イケメンの側近が何人か側にいたけど、前世の私は王子にしか興味がなかった。

 浮気性じゃないのよ。逆ハー願望もないの。


「じゃぁね。向こうに行っても元気で」

 言いたいことは全部言ったので、お別れを言って背を向ける。

 兵吾と恋人つなぎで手を繋ぎ、歩き出すと――……。


「ありがとう! それから、本当にごめんなさい!」


 振り返ると、咲村こころ―――……、いや、()()()は涙を流しながら、私たちを見ていた。


「ま、また……、またね!!」


 “さようなら”じゃなくって、“またね”か。

 兵吾と繋いでない方の手を大きく振って、私も返事をする。

「またね!!」

 私の返事を聞いて、こころは手を振り返した。




「まぁ、これが永遠のお別れってわけじゃないんだけどー」

 こころとは、スマホのトークアプリの連絡先を交換し合ってるからね。

 とりあえずのお別れ。再会があるお別れ。


「それにしても、ほんっと疲れた~」

「おつかれさん」

「もっと労わってー! よしよししてー! だって私、巻き込まれ損じゃん! 広瀬衛は前世前世でしつこかったし、こころには変な対抗心持たれるし。ろくなことなかったぁ!」


 ぶーぶー文句をこぼしたら、兵吾が前から覗き込むように顔を近づけてきて、軽く唇にキスされる。

「本物のご褒美は家に帰ってからな?」

 うひゃ~! 今夜はいっぱい可愛がられる予感~!

 ハッ! しまった! 忙しかったから、まだエロかわベビードール買ってない!!

 まぁいいや。あぁいうのは、もっと吟味して買わなくっちゃね。


「そーいえばさぁ、ひーくん。ひーくんはどう思う?」

「何が?」

「今の人生が終わって、生まれ変わったら。来世で私と会いたい?」


 私は会いたい。

 まだまだこの先、兵吾とずっと一緒だし、きっと死ぬまで一緒だと思う。

 その先のことなんてわかんない。

 死んだあとどうなるかなんて、わかんない。

 でも――……。


「来世もひーくんの傍にいたいよ」


 そう呟けば、兵吾は愛しいものを見るかのように目を細めて、口元に笑みを浮かべる。

「そんな心配、する必要ない。未来永劫、千束の魂は俺のものだからな」

「え?」

「ん?」


 まじまじと兵吾の顔を見るも、兵吾はどうした?って顔をしていた。


 ん?




END


(。´・ω・)ん?

お付き合いありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
伏線はありましたが、うーん、そっかー、そうだったかー、というオチ。 これは魂の相性もとても良かったんでしょうねえ。 転載おつかれさまでした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ