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63.依頼 +


「間に合わせにあの子が明日、皆の前に出てもおかしくない服を、見繕ってほしい」

「あぁ、なるほど。お安い御用でございます」


 助けると心に決め全ての責任は自分がと心に誓った、あの瞬間から。先に何が必要になり何が起こるかを様々に予測し、考えて動く。それが例え無駄に終わったとしても……全ての可能性を視野に入れ、手を尽くしていた。


 クォーツの特徴を簡単に伝えたジャニスティは次の時刻を、伝えた。


「では、二時間後にまた此処で」

「えぇ、承知しました」


 そう言うとエデはジャニスティから受けた依頼遂行の為、まるで風のように足早に去っていった。


 その後ろ姿を横目で見つめながら彼は、昔の自分を思い出す。 


――『私と取引をしないかい?』


 アメジストの父であるベルメルシア=オニキスから声を掛けられエデと初めて、顔を合わせた。


 人生の分岐点となった、あの日。

「あの頃に比べれば『偉くなったものだ』……な」



 街のはずれにある、暗闇の住む“終幕村”。そこで荒れた生活をしていたジャニー(ジャニスティ)に声を掛け取引をしたオニキスは彼をある場所へと、連れて行った。


 コンコン、コン、コンコン。

 ガチャ。


「……」

 指一本入るか入らないかという程の狭い隙間を開けた扉の向こうからは、扉を叩く音への返事はもちろん、物音一つしない。


 オニキスはそこで、小さく一言。


「ベルだ」


 キィー。

「……どうぞ」


 ガチャン(カチャリッ)。


 ゆっくりと扉は開かれオニキスたちは中へ、通された。その案内役は顔を隠した黒具(くろぐ)の姿で、言葉少なに話す。


「こちらです」


 カンカン……――。

(鍵をかけられた? それに地下に行くのか……こいつらは一体、俺をどこへ連れて行く気だ?)


 急な取引の申し出に内心戸惑いつつも、了承。黙って此処までついて来た彼だったが、さすがに少し不安になっていた。


「どうぞ」


 ようやくある扉の前で立ち止まる。そして開けられたその奥でジャニーが見た、信じられない光景。


 キィー、ガチャンッ。


 ざわざわざわ、ザワザワ。


「わっはは〜! そりゃ何だ?!」

「いやぁ~、それが昨日な」

「この酒、うまいじゃないか! うちにはないぞ」


 そこでは様々な種族の者たちが言葉や姿も多種多様に、たくさん集まっていた。仲良く酒を酌み交わし、楽しそうに笑い歌い踊る者、カウンターの片隅でしっとりと語り合う者も。


「――!!!!」

(なっ、なんだ? 此処は?!)


 そこは生きる事を諦めたジャニーにとって、驚く事ばかりであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] こちらのお話も面白そう!! この様な奥行のある世界観が物語をしっかりと支えているのですね(#^.^#)
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