467.心機
(いつか私も。今までの自分を、もっともっと、超えられたなら……)
アメジストは心奥でその声を響かせる。そして『種族関係なく皆仲良しでいられる世界』を願う者が友人にもいたのだという嬉しい気持ちが、溢れた。
「でも私って、難しいこと考えるの苦手だからさ。その思いを実現するためにはどうすればいいか~とか、そういう世界を創るために必要な技術や方法とか、今はまだ全く見えてないのが正直なところなんだよねぇ。きゃはっ!」
「そんな、それでも……」
人族とは違った感覚を持つフルフェデル種族。
そんな素晴らしい特性があるのだと初めて知りまた相手の考えや思いが視えるような力がフレミージュにはあるということに驚いたアメジストだが、しかし。
――同じ志(世界を変えたいという思い)を持つ者同士、どこか通じ合える何かがあるのかもしれないと訳もなく納得していた。
「とても勇気ある、思い切った行動だから。きっと考えても思いつかない……私には、到底出来ないことです。だから、今まで以上にフレミージュちゃんの事をすごいって思って、心から尊敬しているの」
ニコッと笑うアメジストの正直な言葉にまたフレミージュの心はくすぐったいような、恥ずかしいような気持ちが流れる。
そして赤く染まる頬を両手で隠すようにくるりと背を向けた彼女は素早く自分の席へ。
不思議そうにアメジストも隣に座る。
すると片目を瞑り咳払いを一回、口を開いた。
「ごっほん! えー私の頭で考えた結果、その第一歩がこの学校ってわけでして。今のところ、お友達作りは順調そのもので……ふっふっふーん」
「え? まぁ! ウフフ」
(フレミージュちゃんって、お話上手で本当に可愛い!)
彼女の魅力に柔らかな空気が漂いアメジストは「本当に素敵」と応えた。フレミージュはその表情をじっと数秒間見つめると少しだけ、真面目な顔で言葉を発する。
「アメジストちゃんはそう言ってくれるけど。私は、アメジストちゃんの方が行動力があると思う」
「そんな、私は何も――」
いつも控えめに、目立たないように。
自然とそう行動していたアメジストは自身が周囲へ与えている良き影響について思ったり、気付いたことがない。そんな彼女の考えをこの機会に変えたい! と思ったフレミージュは必死に話を続ける。
(伝えたいことはたーくさんあるけれど)
「いーやっ、何もなくない!」
「え?」
彼女に自信を持ってもらおうというフレミージュの声はとても、力強かった。




