466.故郷
「うしゅー! はぅ。お話し続きするよ!」
「えぇ? ふふ、ハイ。お願いします」
ホッと胸を撫で下ろしたフレミージュはアメジストの質問に心を込めて答えるべく気合を入れ本題へと、戻る。その早過ぎる気持ちの入れ替えに置いていかれそうと微笑しつつアメジストは元気よく、返事をした。
和やかな雰囲気になり笑い合う二人は再度、話を始める。
「えっと、故郷はこの街のお隣でね、そこにはフルフェデル族の者しかいなかったの。でも私、親に内緒でこっそりとお店が並ぶ街中へ出かけてみたりもしてたんだけど」
「まぁ、そうなの!? 見つかると叱られちゃいそうだけど……」
「何度も見つかった! 一人で行くなーってすごい怒られたよ~。えっへへ……でも、おかげでフルフェデル以外のお友達が出来て、すっごい楽しかったんだぁ」
「そっかぁ。フレミージュちゃん、お友達多いものね」
「うーん、でもなかなか会いに行けなかったから……その頃の友達とは交流続かなかったんだよねぇ」
「そう……」
ふとアメジストは自分の過去を、思う。
(考えてみたら私、兄弟も姉妹もいなくて、ずっと一人だった。学校でも、あまりお友達と深くは関われずに)
――お継母様のことが、怖くって。
外部との交流を避け続けてきた継母スピナ。
アメジストは授業が終わればすぐに帰宅するよう命じられていた。そのため学校の友人とどこかで遊んだ記憶は無く当然、ベルメルシア家の屋敷に誰かを招いたことは一度もない。
たとえ『親に内緒で』だとしても自身の意思を貫き友人を作ってきたフレミージュの積極性を尊敬し心の中では、羨ましいとまで思ってしまう。しかし今の自分はこれまでとは違いきっと変われるはずだとアメジストは、顔を上げた。
「せっかく仲良くなれた友人と会えなくなるのは、寂しいわ」
「うん、その頃も友達と会えないのは寂しかった」
アメジストは静かに頷く。
「このままだと私は辛いばっかりで、いつまでたっても成長出来ないような気がして。もっともーっと、堂々とたくさんの種族の方と接して関わって、お友達になって、みんなの事を知って、違いとかを理解したい……ってね! 言い出したらきりないけど」
「そっかぁ。じゃあそれは、フレミージュちゃんの夢……なのかな?」
「うーん、夢……そうかも?」
フレミージュがキラキラと輝く淡緑色の瞳で熱い思いを語る姿を見聞きしたアメジストの心臓は経験のない好奇心になぜか、ドキドキと高鳴る。
その真意は――。




