465.未来
そんな彼女の様子を見て「あっ」という顔をしたフレミージュは少しだけ眉尻を下げる。
「なんていうか、その。アメジストちゃんもきっと、“いつかみんなが仲良く暮らせる世界を創りたい”って思ってるんじゃないかなぁーって……違う、かな?」
「……うん。ずっと、思ってきた」
(ジャニスにしかお話していない。この世界の未来を想い、秘めてきた私の願い)
声に出さず、そう心の中で呟く。
普段のアメジストであれば多少の警戒心を持つような出来事だ。しかしこの時フレミージュに対して不信感どころか違和感や敵意も感じなかった。それでも心を読まれ不思議に思ったのは、事実である。
「フレミージュちゃん……」
ふと、そこまで言葉にしたが口を閉ざしたアメジスト。その疑問にフレミージュは目を逸らし口籠りながら、答える。
「気持ち悪がられるから、あまり言わないようにしていたんだけれど。アメジストちゃんにはつい、うっかりしゃべっちゃった……えっへへ。なぁ~んかさ、私って昔から観察するのが得意で――」
「観察……」
「って! うっわー誤解しないでぇ、変な意味じゃないんだよ!!」
「うふふ、うん」
「この学校に来て、たくさんのお友達が出来て気付いたんだけれど、どうもフルフェデル族の特殊な力なのかも。相手が強く思っている事とか、感じ取ることが出来る? みたいな」
アメジストは初めて聞く話に「すごい……」と感激しドキドキとした好奇心が芽生える。その桃紫色に輝く美しい瞳はキラキラと、光っていた。
「いろんな力がこの世界にはあるんですね。気持ち悪がるだなんてあり得ないです。私、フレミージュちゃんの魔力は綺麗で、とても素敵な力だと思うわ」
嘘偽りのない素直な気持ちを口にしたアメジスト。周囲は光の粒が舞うように煌めき穏やかな表情で、微笑む。
すると――?
ぷる、ぷるぷる……むギュッ!!
「わッ!?」
「ふえーん、ありがとぉーアメジストちゃああん! 受け入れてもらえて良かったよぅ」
「え、えぇ?」
感情が表に出やすいフレミージュは嬉しさのあまり急にアメジストへ抱きつくとその切れ長な目にちょっぴり、涙を浮かべる。
「あーぢーがーどぉぉ」
「な、泣かないでぇ」
自分の能力について黙っているつもりが思わず感じた事を口にしてしまい一瞬後悔したフレミージュだがすぐに、思い直す。
そして意を決し話した力をアメジストは受け入れさらに『素敵な力』とまで言ってくれた。
その言葉に彼女は感動したのだ。




