441.色度
エデの洗練されたサンヴァル族の血が起こす力は次元が違い過ぎると同種族であるジャニスティでも未だ、測り知れない程で未知数だ。
「みゅぃー……お姉さまはがっこ、行くですの?」
「うん、そうね……昨日と同じ所。これから学校へお勉強に行くのよ」
「ゥ゙にぃー。そうですのネ……」
クォーツの中で“学校”とは様々なことを学べる場所だという認識でありそれはジャニスティから簡単な説明を受け教わったことだ。しかし可愛い妹は大好きな姉と学校が終わるまでの数時間でも離れ離れになってしまうことをとても寂しく思い、その気持ちを隠さず表情と声色に出す。
シュンと、下を向いて黙りこくってしまった。
そんなクォーツの姿に彼女の心はキュンと熱く愛おしい気持ちが溢れてくる。
(元気になれるように、何か言葉を――)
ずっと傍にいてあげたい、そう思う気持ちは募るばかり。
しかし学校へ行かないわけにはいかずだからといって連れて行くわけにもいかない。心の中で一生懸命に考えたアメジストはクォーツの小さな手をギュッと包み込み明るい声と笑顔で、話しかけた。
「ねぇ、クォーツ。お勉強は好きかしら?」
姉の手から伝わってくる優しい温もりに「んぅ!」と顔を上げ喜ぶ仕草を見せるクォーツはにこ~っと笑い「ハイッ! 大好き!!」と答えルンルンと自分が覚えた言葉や歴史を話し始めた。たった一日二日で学んだとは思えない内容の多さも去ることながらその成長の速さにアメジストは、目を丸くする。
「クォーツ、そんなにたくさん覚えただなんて……とてもすごいわ!」
「えっへへへ~すごいーですか? わぁーいなのですわぁ♪」
とはいえまだ、クォーツは自身の力と頭と心を使いながらレヴシャルメ種族と他種族の違いを感覚で埋めようとしていた。それも無意識に相手の口角の動き、目元の緩み、声の高低差、そして何より目の前にいる者たちから浮かび視える“色彩”を瞬時に読み取る。
“心から生まれる喜怒哀楽。そこから染まる、陽と闇”
その他諸々、俗にいう“感情”というものが色で表されクォーツにはその“色”が視えていた。そのため今自分がアメジストに『褒められた』と、理解できているのである。
――どの種族にも、他に明かされていない魔力や能力はある。
『レヴシャルメ種族のみ』が持つのはその特殊かつ特異な能力の一つ――各々が放つそれぞれの色の度合いで相手を視れるという、不思議な力。
それを知るのは同種族以外に、いない。




