表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
434/471

434.団欒


「ねぇねぇ、お姉さまぁ。この赤いまんまるのは、なぁにですの?」


「え? うふふ! これはね、トマトっていうのよ」


「とまて、とま……トナト!」


『コソッ――(と、ま、と、だ。クォーツ)』


「あっ! と~まーと、ですのね♪」

「そう! 『トマト』――とても美味しいのよ」


 ジャニスティが話した限りでは食材の種類をほぼ知らないクォーツはアメジストから赤く丸い野菜を、教えてもらう。しかし初めて聞くその名称が一度では声にならない。そこへ兄であるジャニスティが、こっそり耳打ち。


 すると二度目はきちんと、言えた。


「わぁー! おぃしぃですのぉ!」


――キラキラ……!


「あっ」


 喜びで無意識に光り輝きを増した魔力の粒を纏うクォーツ。それをアメジストは心配そうに見つめ彼の顔を窺うが、動じていない。


 そしてクォーツへ「力を抑えるように」とまた、耳打ちしていた。


 そんなジャニスティは――仮にこの光の粒が周囲に見えていたとしても、自分の妹であるクォーツが魔力を使えてもおかしいことなどない。不思議に感じる者はいないだろうと心の中で、呟く。



――しかしあの時に視た【白く美しき夢想の世界】は。


 自分とアメジストにだけ見えていたのだろうかと、ジャニスティは思う。

(まぁ、こればかりはクォーツ本人へ力の根源を聞くしかない)


 だがそれはまだ、無理な話。

 そう、未だ【レヴシャルメ種族の力】については謎が多く、不明なままなのだ。



「ウフフ」

「ん、御嬢様? いかが……なさいましたか」


 いつの間にかぼーっと考え事をしていたジャニスティは彼女の笑う声でハッと、我に返る。


「いいえ、何でもないの。ただ、ジャニスは本当に優しくて、面倒見がいいなぁって」


「いえ、そのような……私は何も。お気になさらず。お食事をお楽しみください」


「ふふ、そうね。ありがとうジャニス」


 その二人が話す何気ないやり取りに「ほぅ、なるほど」と、オニキス。


(そうか。アメジストもだが、ジャニスも柔らかな表情をするようになった)


 父にとっては未来を想う微笑みの種である。


 屋敷で働く皆の笑顔、可愛い愛娘アメジストの笑顔、新しく家族となり溺愛するクォーツの笑顔。

 そして、全幅の信頼を寄せる心強い味方――サンヴァル種族のジャニスティの存在。



「私は、一人ではない」

(君の大切な者たちを、私なりに護ってみせるよ。ベリル……)



 各々が、様々に考え、思ったこの日。

 オニキスもまた、いつもとは違う充実した朝の時間を過ごしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>「とまて、とま……トナト!」 キャー♡ クォーツちゃんが可愛すぎるぅ(⁎˃ᴗ˂⁎).。.:*♡ ジャニスティさん紳士ですね♬✧*。 ホント、一家団欒ですね(#^^#) みこと
わあああ 皆んな皆んな素敵です!(#^.^#)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ