表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/471

430.扉口


「思いのほか」


(旦那様からの任務。その中でも一番知りたかった情報――花を置いたのが誰であったのかという問題については、思っていたよりも早めに知ることができた)


「根底にある芯、真の自分。そして闇へと進んだ理由……原因……」


――その他、さらに深まった謎や疑問もある。


「お二人の話を、聞いた限りでは」


(いくらスピナの嫉妬心が強いとはいえ、その豹変ぶりは常軌を逸している)


「少々、気になるところだが」


 倉庫で一人になったジャニスティは朝の短い時間で聞いた話を、思い出す。得た情報の詳細を確かめなぞるように声を出し呟き、心の中では思案してを繰り返した。


「はぁ……」

 そうして、最後に深い溜息をつく。



 かちゃ、キィー……。



 ラルミが出て行った後しばらくして扉を開けた彼はサッと振り返り、もう一度倉庫内を見渡す。その瞬間ハッとした天色の瞳は見開き、煌めく。


「まさか、そんなことが……」


 ジャニスティが驚いた理由。

 それは自分が隠し扉から出口として開けた、倉庫へと繋がっていた扉は消え白壁と化し、影も形もなくなっていたからである。


 彼はゆっくりもう一度、中へ戻ると倉庫に出た扉口だったはずの場所へそっと、本を持っていない手で触れた。


「……扉どころか、何かがあったような形跡すら全くない」


(何度か調査のために入ったはずの隠し扉。なぜか今日は、此処へ出たが)


――もしや、ベリル様の?


「なるほど、そういうことか」


 この時ジャニスティは出口がこの倉庫だったこと。そして偶然ラルミが現れたのはベリルの計らいであったのだということに、気付く。


(私が話したことで、ベリル様がラルミさんとの会話を望んでくださったのだろうか。それで、この倉庫で会えるようにと何らかの力を発動なさったのかもしれない)


 隠し扉内でその姿を維持する力の限界を迎えていたベリルと別れる直前、彼が話したこと。


 枕元へ花を置いた人物ラルミへ確認したい事があるので本人と話をしたいと、その内容を話す許可を申し出た際の情景を、思い出す。


 最後にベリルの微笑む表情は見えたものの、応答はなかった(正確には声を聴かせることもすでに出来なかった)のだが、きっとこの事象はベリルが起こした奇蹟――導きだったのだろうと感謝の意を感じる。



「ありがとうございます、ベリル様。微力ながら尽力いたします」


 その気持ちを声に、言葉に――。

 壁からゆっくりと手を離し振り返ったジャニスティは笑むと、倉庫を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ベリル様のお力によるものだったのですね(#^.^#)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ