425.見極
◆
ベリルとの約束と秘密を守り続けるという苦しい立場で過ごしたラルミの、十六年間。しかしその忠誠心と信念は二人の信頼関係が成した、無駄のない時間であっただろう。
そんな中ベリルから託された命――ベルメルシア家の血を継ぐアメジストが紆余曲折ありながらも無事に成長しまたその愛心に満ち溢れた性格は知らないはずの実母ベリルに、よく似ている。大切な御嬢様が自分の意志と真心を強く持ち立派になってゆく姿を見守ることは、彼女にとって心からの喜びであり何よりの楽しみでもあった。
永眠するまでに起こった出来事をベリル本人から実際に聞いていたジャニスティはラルミの口からは語られなかった事実を自分だけが知っているのだろうかと密かに、気を揉む。
ラルミもまた極秘事項とされている『ベルメルシアの血に眠る隠された力』についてはアメジストにだけ伝えており現段階では、話していない。
◆
「――以上です」
時間の限りで質問に対する答えを話した彼女は場を締めるようお辞儀しひとまず終了したことを告げ、その声に彼もまた「ありがとうございます」と頭を下げる。
その後すぐ「これは言っておいたほうがいいだろう」とジャニスティはぽつりぽつりと、話し始めた。
「最後に確認……と言いますか。一応、お伝えしておきます」
「はい、どうぞ」
「では。オレンジ色のマリーゴールドを置いた方が貴女であったということは、ベリル様へお会いした際に聞き、花の事も含め伺った内容は痛切。そんなベリル様から心を託された唯一の御方――ラルミさんへ、私は直に話をしたいという確認をしました。それで偶然にも今此処で……こうして話をお伺いした次第です」
「そうだったのですね」
「失礼な発言がありましたら、どうかお許し下さい」
「いいえ、そんなこと仰らないでくださいませ。私は、たとえ光であってもベリル様のお姿にジャニスティ様が会ったとお聞きし……安堵しているのです」
「?」
首を傾げる彼へ彼女はにこりと微笑み自分の右手を胸の前でぎゅっと、握る。
「今回、スピナ様が突如主催なさった茶会……その事にベリル様が何かしら不審な点を感じられ反応し、今出来るお力を振り絞り光のお姿を現したのだとすれば。今後のベルメルシア家を護るため、全てを明らかにする時が来たのだということでしょう」
「ではこの茶会、やはり――」
「いえ、そこまでは。しかし余程の事かと」
二人の真剣な眼差しは互いの思考を確かめるようだった。




