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(辛い記憶を呼び起こすには、誰しも苦痛を伴うものだ)


――かく言う私も、未だに思い出したくもない過去があるのだからな。


 心の中でそう呟いたジャニスティは静かに彼女の言葉を、待つ。



 それからすぐラルミの話は、再開される。



 「あの夜……スピナ様とお顔を合わせる前のことですが。ベリル様が御嬢様をご出産なさってからしばらくすると、旦那様がお見えになりました。その時のベリル様はとても血色が良く、大変お元気で」


 ベルメルシア家の屋敷は幸せの言葉と愛で溢れかえる。

 その悦びは小さな光となり輝き舞い、皆が祝福しているのだと分かった。



 それから数時間後、スピナが見舞いだと部屋へ入って行くのを遠くから確認したというラルミ。だが当然、扉の外から会話の詳細までは聞こえない。それでも研ぎ澄まされた彼女の五感は敬愛し仕えるベリルの危機を、察知しないはずはなかった。


 が、しかし――。


「……結果がどのような方向へ進んだとしても、望まない出来事が起こったとしても。どのような場面でも対処できるようにと考えておられました。そんな中、私はベリル様から命じられていたのです」


「何と、仰られたのですか」


 フッとラルミは厳しい目になる。


(この空気感、ひしひしと苦しみが伝わってくる。息が詰まるようだ)


「私が花を枕元へ置き部屋を出ようとした際、呼び止められました。そしていつもと変わらぬ、あの穏やかで美しい表情と優しく素敵なお声で『何あろうと決して入ってきてはいけない、関わってはならない』、と」


 事態がどのように動いたとしても、たとえ危機的状況だと判っても――部屋に声をかけない、姿を見られてはいけない。そしてベリルの側近に【ラルミ】という仲の良いお手伝いがいることを、今はまだスピナに認識させてはならない。当時、そう命じられたという。


「おそらくベリル様は……そうですね、きっと、そう。まさにこのような事態が起こる事を危惧し、万が一ご自身がいなくても、何とか私を守ろうとして下さったのだと思います」


「なるほど……その後、ベリル様は」


 一瞬ピクッと微動したラルミは俯きゆっくりと頭を左右に二度、動かす。そしてジャニスティからの問いへ申し訳なさそうに答えた。


「あの時ベリル様ご自身が願いと力を込め育てたオレンジ色のマリーゴールドが、どのように作用したのか。詳細は不明ですが、しかし――」


 ラルミの話は光の姿で現れたベリルから聞いたものとおおよそ、一致していた。


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