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401.協力


『さて。それは……何のために、でしょう』


「当然、私はその場にいたわけではありませんし、所詮は旦那様からお聞きした話を総合的に分析しただけのこと」


『……』


 あの夜に起こった出来事は“ベリル自身”と側で息を引き取るのを見届けたのだという“スピナ”しか知り得ない、真実。


「ベリル様。私のような者に話せる事ではないと、重々承知の上で申し上げました。ですので、お話しいただかなくても――」


 ジャニスティは恐らく誰よりも自分の立場を(わきま)えている。


 自身の身分に合った振る舞いをするように、出来るだけベリルの気に障るような発言や強い口調にならぬようにと努めはしたが、しかし。何と言っても今この場で初めて会った相手はベルメルシア家の血族でもある、尊き前当主。再度沈黙してしまった彼女の様子にこれ以上の負荷をかけるわけにはいかない、今この場でこれ以上の話をするべきではないと諦めかけていた。


 その時――。


『いいえ。あなたは私の可愛い娘が認めた、素敵な御方ですから』


「御嬢様が私を認めた……そのようなことは」


『(――ニコッ)』


(不思議だ。やはりこの御方といると深い安心感が身体中から溢れてくる)


 その美しい白肌が染まる桃色の頬で笑うベリルからは“少し待ってね”という思いが彼の中へと、伝心してくる。


 そう、彼女は決して彼からの質問へ答えないと言っているわけではない。それでもまだ、彼女の中で少しばかりの葛藤があった。この沈黙している時間にベリルはジャニスティの力がどれ程のものかを、測っていたのだ。


(強き信念を持つ、サンヴァル種族の中でも優秀な青年。そして何より――)

『ジャニスティさん。あなたには他者を思いやり愛する心があります。しかし未だに怒りの感情に飲まれ、心を見失いそうな瞬間がありますね?』


「……はい、仰る通りです」


『ではその誰しもが抱く“邪心”を、今後も抑えられると誓えますか?』


 瞬きも許されないその真っ直ぐな視線。彼は全身に走る電気のような緊張感に、(ひる)みそうになる。


(恐れるな、自分を信じろ)

 ゆっくりと深呼吸、彼は口を切った。


「誓います。何があろうと、決して自分を見失うことはないと」


 彼の答えにほやっと笑んだベリルもまた、決意をする。


『ご想像通り、お花を準備した協力者がいます』


「はい」


『その者は、ベルメルシア家のお手伝いであり私の親友でもある――“ラルミ”ですわ』


 その名を聞いた彼は不透明だった何かが、視えた気がした。


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― 新着の感想 ―
ラルミさんだったのですね!!!
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