表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/471

39.声風


 コクッ、コクッ!!


 ジャニスティの教えをきっちりと受け止めた様子のクォーツは頭を上下に二回、大きく振ると興奮気味に澄んだ瞳をキラキラ輝かせる。


「よし、良い子だ」

 天使のような可憐さを醸し出すクォーツの頬はりんごのように丸く赤く、ジャニスティはその()()()()()()のツルツルンとした顔に、滑るくらいの(つや)を感じた。


(アメジスト様がいらしてから、ずいぶんと血色が良くなったな。この子は自己治癒力が非常に高いようだ)


――しかし、どうやって? 何も食べずに体力を回復しているのだろうか?


 疑問を(いだ)きながらも余裕なく、そのまま視線をアメジストへ向ける。少しだけ震えながらそれでも、クォーツを守らなくてはというその思いが強く表われていた。


 カツーン、コツー……ン、カツ。


 そして特徴あるその足音はジャニスティの部屋の前らへんで、ピタリと止まる。


 コン……コココン……コンコン。


「ジャ~ニスティ~、いるのかしら? んっふふ、いるに決まっているわよねぇ」

 変に気持ちの悪い間の取り方をする、扉の叩き方。嬉しそうに話しかけ、高笑いをしている女性。


 そう、アメジストの予感通り――足音の主は継母スピナであった。しかし何かがおかしいと感じた彼女の心身はまるで、拒否反応を示すかのように鳥肌が立ち始める。嫌味たっぷりジャニスティの事をあまり良く言わない継母の、声のトーンではない。


(え? 本当にお母様……いえ、間違いなく“スピナお母様”なのだけれど)


 なぜアメジストはそのようなおかしな事を、感じたのか?


 それはいつもの冷たく低めの声を出すスピナとは思えない甘ったるさ。アメジストの父、オニキスにも聞かせないような声風(こわぶり)をしていたからである。どんな顔をして扉の前にいるのかも全く想像がつかない程に、不気味だった。


「はい、そのお声は奥様……?」

 ジャニスティはその違和感にも動じない。冷静沈着、何の迷いもなく普段通りの言葉で返事をする。


「まぁ~ジャニス、元気なの~? (わたくし)、心配で心配で。だってぇ、あなたが此処に来てから初めてでしょ? 魔力が枯渇(こかつ)したのは」


 ジャニスティがアメジストに伝言を頼んだ『魔力回復をする』という魔法の言葉は、オニキスとの取引の際にジャニスティの方から提案したものだ。彼の力が一時的に失われた場合に使ういわば“合言葉”としたのである。


――その、一時的に失われた力の意味とは?


 何よりジャニスティが血のサンヴァル種族である事をスピナは知っているのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんだろう?? とても気になりますが、しばらくお預けの様です(:_;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ