表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/471

363.散会


 二人の会話にピクリと反応を示したジャニスティは感情を顔に出さぬよう努める。そんな彼の内心はこの十年で一番という程、荒れていた。


「今回カオメド氏が起こした街での一件は、由々(ゆゆ)しき事態。その上、ベルメルシア家へ乗り込もうというのであれば尚の事。彼がどのような弁明をしようとも、許される行為ではありませぬぞ」


「あぁエデ、君の言う通りだ。このまま彼の好きなようには絶対にさせない」


「ですな。さて、旦那様。私は通常通り動きます故――」

「旦那様。そしてエデ。私も、精一杯……力の限りを尽くします」


 エデとジャニスティの言葉に頷き応えたオニキスの目頭は、熱い。それはこれまで以上に彼らの事が心強く感じられたからである。


――この街を、皆の生命((精神))を……家族を。


「必ず、護る」

 ベルメルシア家当主オニキスの言葉が最地下の部屋に、響く。


 淀みのない透き通るような声と奥深い赤茶色をしたその鋭く美しい瞳からは揺るがぬ固い、決意が見えた。




 どんなに話術に自信があり技術の腕が良くとも、全ての商談が必ず成功するという保証などこの世界にはない。世の厳しさを知りそれでも強い意志と覚悟を持たなければ、商人としての仕事は辛く苦痛に感じ、その時点で向かないであろう。


 そんな厳しい世界でカオメドは常識的な禁忌を冒し、あろうことか周囲の者たちを魔法で従わせるという悪質な商法で取引先や顧客を取っていることが、今回街で行われた祭典での一幕により(あら)わになった。


「相手の感情や心理状態を読み、言葉巧みに話を進める。それは間違いなく彼の能力。だから十分、商談に必要な話術を持ち合わせているはずだ。しかし、その技術がありながら、なぜ魔法を使う必要があるのか」


 魔力を持たないオニキス。

 それでも彼は自身の持つ実力でコツコツと働き現在は街一番と言われる程に会社を大きくした。


 ベリルがいなくなった後は皆の協力で当主としての業務も完璧にこなしベルメルシア家を死守。周囲からは全幅の信頼を寄せられるまでの存在だ。


 懸命に働き人々の為に尽力してきたオニキスにとってこの世にカオメドのような者がいること自体が信じられず、強い衝撃を受けている。


 その彼が起こした異常行動。

 若き権力者として噂になっていた彼の裏の顔((からくり))を知った今、他の街でも同様に騙された者がいるのではないかと考え心は痛みまた、商品の流通を扱う同業者――つまり“商人”としても理解し難く、オニキスは憤慨する思いであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オニキス様の矜持と決意は尊いですね。 ジャニス様やエデ様のお言葉もひしひしと染み入ります(#^.^#)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ