362.任務
不思議そうに首を傾げるジャニスティを見たエデはフフッと、笑む。そう、彼には当主オニキスが口籠った言葉が手に取るように分かるのだ。
「それでは、旦那様。ベリル様の件、そしてマリーゴールドの花についての調査は、坊ちゃまに一任すると言う事で、よろしいですかな」
「あぁ、もちろんだよ。ジャニス以上の適任者はいない」
「旦那様……精一杯努めさせていただきます」
頼むぞと小さく声をかけられたジャニスティは「身の引き締まる思いです」と応え深々と、お辞儀をする。
そこからエデはさり気なく話題を変え隣街からの訪問者――“カオメド=オグディア”について、話す。
「さて。先程申し上げました通り、此度の祭典時に見せたカオメド氏の不審な行動は、とある捜査機関に報告済みです。彼自身も恐らく、監視対象になっているという事実には気付いていることでしょうな」
「うむ、そうだな」
オニキスの応えにゆっくりと頷いたエデはすぐに次の言葉を、続ける。
「しかし、坊ちゃまからの情報でカオメド氏はスピナ奥様と繋がっているということが判明。と、なりますと……」
「なるほど。カオメド氏は、まだこの街にいる可能性が高いということか」
「えぇ、恐らくは。ひっそり滞在しておられるでしょうな」
その後、順調に進んでいったエデの“推測”。
オニキスもジャニスティも彼の話を支持しカオメドが次に起こすであろう日時と行動についても深く、考察する。
「会話したことはありませんが、あの男は危険人物だと感じます。故に自身の理想が実現しないまま、この街を出るとは私も思えません」
そしてジャニスティが神妙な面持ちでそこまで言うと怒りからか黙り、拳に力が入る。
「同じ考えだな。では我々に報復する機会を狙い、仮に問題を起こすとすればだが……」
「……そう、私も思いますな」
以心伝心――目を合わせたエデとオニキスは同じ考えに、至る。
「やはり、か。カオメド氏が次に現れるとすれば、茶会であろう」
「なッ!?」
――茶会に現れる!?
「スピナとの関係がほぼ立証出来た今、招待状もすでに彼の手へと渡っているだろうからね」
「えぇ、恐らく」
「まさか、そんな……」
冷静な考察はオニキスとエデの確信を示す心を、表す。その横でジャニスティがカオメドへと感じる怒りは収まらずにそれどころか今にも沸点へと、達しそうであった。
(相手の目を欺くようなやり方で入り込み……その馬鹿にしているような態度も! 全てが卑怯だ!!)




