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354.関連


 今まで忘れようとしていた記憶なのか?

 オニキスは自身の中でその瞳奥深くに眠るあの日の光景を呼び起こすため、瞼を閉じる。



“十六年前”

“アメジスト誕生の夜”

“愛する妻の突然死”


 そして――。


“スピナの囁き声”



「仮死状態……スピナが言っていた『ベリルが自身で治癒魔法を施した』ことは、恐らく嘘ではない」


「えぇ、私もその件は同感ですな。後で駆けつけたというフォル様も、そう感じたからこそ平静を保てたと仰っておられた」


「そうか……恥ずかしい話だが、ベリルが息をしていない姿を目の前にした私は、とにかく平常心を失ったのだ。その時、フォルがいてくれて本当に助かった。心底、そう思うよ」


 オニキスは少しだけ話し頷くと再び、考え込む。



“息を引き取ったベリルの姿”

“本当は生きていると言われた瞬間”

“スピナの言った確実に目覚める保証はないとの言葉”



「そうだ、あの時に」

――冷静さを少しだけ取り戻すきっかけとなったことがある。



「香り……オレンジ色の、花が……」

「ほぅ、“花”でございますか」

「あぁ、そうだ。何かが“ふわっ”と揺れたように感じ、その一瞬ある香りと……オレンジ色の花が。自分を見失い、取り乱す私の視界に入ったのだが――」


 それは永い眠りについたとされるベリルの傍らに置かれていた、美しい花。その時に起こった不思議な感覚と光景をオニキスは、思い出していた。


「当時は、スピナが出産の祝いに持ってきてくれたのかと。だが、思えばその花を感じた後に少しだけ冷静さを取り戻せた……そのおかげで私は、『他言無用』と二人だけで話を進めようとしたスピナを止め、話し合いにフォルを同席させることが出来た」


 悲痛な涙を流した心情と白黒に薄れかけていた記憶に柔らかな色景が、差す。それはゆっくりと頭の中で映し出され始め彼の発声する言葉へと、変換されてゆくのだ。


「私一人だったら……ベリルの身体をベルメルシア家の庇護下に寝かせることも出来ずに、最悪……奪われていたかもしれない」


「なるほど」


「……旦那様、ひとつ質問してもよろしいでしょうか」


 エデとオニキスが話す詳細な内容と状況を知らないジャニスティは静かに聞いていた。そして今ふと気になった部分を聞こうと、思い立つ。


「あぁ、構わない。むしろ、この話を聞いたばかりのジャニスからの意見は多く聞きたいところだ」


 ありがとうございますと言ったジャニスティはまず、その“花”について気になったことを尋ねる。


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