351.情報
――ジャニスティの頭には様々な思考が、交錯している。そしてスピナに対し、ある“疑惑”が浮かび上がっていた。
「先程も申し上げましたが、スピナ様がご発言の『計算だった』との言葉。そしてベリル様の枕元で、眠りの時が近付くそのお姿を『じっと見ていた』と、不審な表現をしています。その後には皆の目を騙す様に『嘘の涙』など……」
「確かにそうだ。その当時も、フォルがいなければスピナの手の届くところへ、ベリルを置かれるところだった……」
(しかし、それもどのような目的があったのか)
――真実を知った今、考えるだけでも恐ろしくなる。
推測含め、自分の思案する全てをジャニスティは話すのだと、腹を括っていた。というよりも今目の前にいる二人――オニキスとエデに対し全幅の信頼を寄せているからこその、決意。もう彼が気を遣い口籠ることはなくはっきりとした口調と自分の言葉で確実に話を、進めていく。
「仰る通り、フォル様は“ベルメルシア家当主様”をお守りするための正論を通され、スピナを黙らせたのでしょう」
「あぁ……“ベルメルシア家を受け継ぐ者”であるベリルが本当に仮死状態で生きているのであれば、ベルメルシアの庇護下に置くことは譲れぬ、とな――」
(フォルはあの時すでに、不穏な空気を感じていたのかもしれない)
オニキスはすぐに落ち着きその過去の記憶、スピナとフォルの三人でベリルの状態と今後について言い合った光景を鮮明に思い出していた。
「旦那様。私が裏中庭で聞いた『息を引き取る間際に頼まれた、代わりに旦那様とアメジスト御嬢様の傍にいる』との話は、スピナ様本人がご自身の口で『作り話だ』とカオメド氏へ話していたわけですが」
「そう、だな。あの時はベリルを自分の思うように出来なかった事で随分と声を荒げ、フォルに抗議していた。だがその後、急にベルメルシア家の奥様代役をすると言い出し……あとはジャニスの言う話と同じだったか」
「ふむ……なるほど。それはもしや急な方向転換、スピナ様の思いつきだったのではないですかな?」
「エデ、それはどういう事だ?」
ジャニスティは真剣な顔で強く、考えを聞く姿勢を向ける。
「いやいや、確証はない……私の言葉は、お二人の話を聞いての薄い推測に過ぎませぬぞ」
「それでも構わない。たとえ事実が違っていたとしても、可能性のある意見は今日この場で全て収集し、明日からすぐに情報を精査しておきたい」
――真実を、明らかに。




