表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
348/471

348.魔毒


 しかし、やはり。

 あの密会を発見した瞬間から彼の心の中は嫌悪感で、いっぱいなのだ。


「ジャニー、よいか? このような重要な話を自らすると決めた以上、自我を見失うことは許されない。肝に銘じ、冷静に述べよ」


「はい、申し訳ありません」


 師であるエデは(げん)たる態度でジャニスティへ自らの行動を律することを、教育してきた。今もそう『大事な時だ、間違うな』と心奥深くへ響かせる声でエデは釘をさす。


「二人ともすまない。ジャニー、続きを聞いてもよいかね」


 オニキスは変わらず無表情で、訊ねる。その言葉に頷くジャニスティの瞳は鋭く真剣な眼差しに変化し「では改めて」と当主を見つめ、話を再開した。


「愛する奥様を失い、憔悴(しょうすい)しきっていた旦那様へ、ベリル様の良き友人としてスピナ様は貴方へと近付き、慰めたと言っていた。そして警戒が緩んだほんの一瞬、貴方は心の隙をつかれ、彼女から――ある毒を盛られたようです」


「……毒?」

「えぇ。それはどうやら、彼女が特別に調合し作った媚薬効果のある魔法が施された媚毒――いわゆる“魔毒”によるものです」


「彼女は……スピナは自分の持つ力を我々に話すことは無かった。そのような力があったとは」


「私も、これまでスピナ様の魔力がどの程度で、どのようなものなのか? 全く知り得ませんでしたので」


――ただ一つ。

(お嬢様への異常なまでの態度も含め、私はあの女(スピナ)には不快感しか抱いたことがない)

 ふと、ジャニスティは声に出せぬ思いを心の中でそう呟いてしまう。



「私も、同じく。スピナ様には専属御者の方がおられます故、あまり関わらなかったのですが。ふむ……その“毒”の話、少々気になりますな」


 エデは顔色を変えず様々な視点から相手の正体、目的を推測し考え始める。


「続けますが、彼女の創作だというその魔毒には――『自分を愛するように』との恐ろしい“魔法の言葉”を混ぜ、何らかの方法で貴方へ刺したと思われます。そうして、自分の言う事を黙って聞くよう仕向け、操ってきたのだと」


「なんという……」


 ジャニスティの話にオニキスは口に手を当て言葉を失う。これまでなぜ? 自分が厳しく彼女へ言えないのか、アメジストへの異常な躾にも口を出せなかったのか。自身の理解できない行動の原因が今はっきりと見えていた。


「まさか、そこまで卑劣な手段を……信じられませぬな」


 横に座るエデもあまりの衝撃的な事実に「んんー」と唸る声を出し腕を組むと、天井を見上げていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まったく卑劣です!!!"(-""-)"
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ