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321.推測


 驚いたジャニスティを横目にエデは顔色一つ変えずに淡々と『内なる考え』を、話し続ける。


「これはあくまでも私の推測ですが、三日後に予定されているベルメルシア家の茶会……この日は当然多くの取引先様や、他の街からご来賓の方々が出席なさる。その中に隣街から来たというカオメド氏がいたとしても、違和感を持つ者はいないでしょう」


「そんなこと……出来るはずは」


(いや、待て。奥様との関係がある以上、あの男が茶会へ潜り込むことぐらい……)


――その上、旦那様は遠方の仕事で屋敷をしばらく留守にする予定だ。


 ジャニスティは「不可能ではない」と小さな声で、呟く。


 三人が会合をしているのはいつもの場所、酒場の奥角にある小部屋である。そのカーテンの向こうでは普段通り楽しそうに盛り上がる客たちの笑い声が、溢れている。その音に紛れ消えたジャニスティの声は傍にいる二人にさえも、聞こえていない。


「うむ、なるほど……確かに有り得る話だ。しかしなぁ……エデ。その方法だが、どうやって彼は警備の壁が厚いベルメルシア家の屋敷内に、忍び込む気だろうな」


「はい。実は私も、それについて頭を抱えておりましてな――」


「……」

(そうだ……エデも、旦那様も)

――私があの男(カオメド)を、屋敷内で見かけたことを知らない。


 遠くからの目視だがカオメドの顔や声色、その不信感を抱くような身振り素振りをする姿を実際に見聞きしたことをエデとオニキスに話せず、それどころか“密会”についても未だ、報告ができていない。


 そのためか?

 まだカオメドとの接触がない彼が沈黙している様子に「ジャニスティは自分たちの話を静かに聞き、思案しているのだろう」と思われそっと触れないまま、エデとオニキスは二人で蓋然(がいぜん)性の高さを話し合う。


 しかしジャニスティの心奥にある思いは、違っていた。


 オニキスの『どうやって()()()()気だろう』との言葉とその後エデとの会話でやはり二人は、スピナとカオメドの関係に気付いていないのだと確信する。


 そしてアメジストを迎えに行く馬車内で(クォーツを気遣い)エデに話すことの出来なかった裏中庭での(おぞ)ましい光景を今まさにこの時間、この場所で報告しなければ機会を逃すと焦るが、しかし――。


「ぁ……あの」

「うむ? ジャニス、何か思いついたかい」

「えぇ……」


(おや? ジャニーにしては珍しく、歯切れが悪い)

――どうしたのかねぇ。

 ふとジャニスティの苦慮を察したエデは黙って優しく、彼を見守る。


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