313.庇護
(お嬢様の開花した素敵な力に、微力ながら私の支えと援護を……)
――『ストゥニール』。
ジャニスティはアメジストとクォーツに気付かれぬよう“心の中”でその魔法を、唱える。
元々、回復を主とする彼だが自分が傍にいられない時間も彼女を護るため日々、庇護魔法の鍛錬にも励んでいるのだ。
「んにぅ……?」
じぃーーーー。
「ん?」
(あぁ、はは。さすがレヴシャルメの子だな。二人に感じ取られないよう細心の注意を払いながらかけた魔法。どうやらクォーツには解るらしい。隠しても無駄ということか)
不思議そうに見つめてきた可愛い妹へにっこりと笑顔で応えるとジャニスティは胸のポケットから懐中時計を取り出し、確認。
(もうこんな時間か……)
「随分と遅くなってしまいました。お嬢様、お時間頂き申し訳ありません」
「私の方こそ」
無事に部屋へ二人を送った後に色々と話していたジャニスティは「そろそろ失礼します」と、挨拶をした。
それはいつもと変わらぬ、やり取り。
しかしアメジストにとっては何かが違うと感じられた、時間。
――大切な、貴方へ。
「ありがとう、心より感謝を……」
――親愛なる、貴女様へ。
「いえ、お嬢様。当然のことです」
ジャニスティとアメジスト。
二人は声に出せない互いへの想いを無意識に心の中で、呟いていた。
すると!
“ぴょ~んッ!!”
「ぁ、ぇ?」
アメジストの前に仁王立ちしたクォーツは自信満々な顔で、一言。
「ぇー、えっと。んぁ……、ダイジョブ? ですのよぉ、お兄様!」
「「エッ?」」
「お姉様には、私がお守りにくっついているのです」
驚くジャニスティとアメジストは互いの顔を、見合わせる。
それからすぐにクォーツへと視線を戻した二人はなぜか? 自慢気な可愛い妹にクスクスと、微笑していた。
「うふふ……なんて心強いのかしら」
「はは、そうですね」
「にゅあ!」
すると両手をめいっぱい広げレヴ語で返事をしたクォーツへ、再度ひざを曲げ腰を落としたジャニスティは妹の目線になると、言葉をかける。
「うん本当に。ずいぶんと頼もしく、可愛いお守り天使様だ」
「わぁ~い、えっへ~ん♪ すごい?」
「あぁ、すごいさ。ではそんな君にぜひ、“お守り”をお願いしようかな」
「おまもーぅ?」
可愛らしく小さいその手を取ったジャニスティは想いをギュッと、込める。
キラッ―――――(『ディファ―ンドル』)。
一瞬の光。
それはジャニスティが二人を“護りたい”とそう思う心から出た、魔法だった。




