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301.性質


 そしてふと、彼は何かに気付き再度彼女へと質問を始めた。


「いや、待て。それにしても不自然だ。エデやマリー、それに君までも。何故、今まで親子だという事を黙っていたのか」


 疑問を持つと無意識に身構えてしまうジャニスティは腕を組み首を傾げ少しだけ、眉をひそめた。しかしそんな視線を全く気にする様子のないノワはその問いに「ではその事についてもお話しいたします」と、いつもの抑揚なきトーンで答え始めた。


「この街に来てから、サンヴァル族であるエデと人族のマリー。両親二人は私が子供であるという事実はもちろん、存在自体を隠していたのです。私はそうして、育ちました。その一番の理由は、ハーフである私の成長を懸念してのことです」


「成長……?」


 ノワは彼の反応にゆっくり頷いて応えると「他種族である前に、サンヴァルとのハーフであるが故の……」と、重い口を開く。そして淡々と発せられる力強い声の拍子はいつも以上に彼女の思考がひしひしと、伝わってくるのだ。


「ジャニスティ様自身もそうだと思いますが、純血のサンヴァル種族は、人族の三倍成長が遅いとされています。それは見た目で本当の年齢が判らない程に。そんな我々の種族と他種族の間に生まれた者――つまり私の事ですが。果たしてどのような成長過程を送るのでしょう」


「サンヴァル族固有の性質が、人族と交わった時にどうなるか? ということか」


「仰る通りです。ハーフは個体によって、その生命の長さが変わり、それは計り知れない。そんな中、種族違いの結婚があまり認知されていないこの街で、私が同年代の友人を作り関わるのは、大変難しいことです」


「なるほど。ましてや君の父、エデはサンヴァル族の気配を完全に消している。私も初見で、彼が同種族だとは全く気が付かなかった。それで、隠されたと?」


 ジャニスティから視線を外すと彼女はゆっくりと目を瞑りまた淡々と、話を続ける。


「どんなに愛し合う夫婦でも、仕方のない未来。サンヴァル族以外の種族の者がどんなに長生きしようとしても、運命に背こうと足掻いても。我々、サンヴァルが病気や不幸などで命を落とさない限りは、他種族である家族が先に逝ってしまうのは避けられないでしょう」


「あぁ……違いない」


 頭では重々解っていたその内容を改めて言葉にして聞きジャニスティの心臓はえぐられる様にズキズキと痛み、苦しくなる。(うつむ)き加減で声にならず無言のままの彼にノワはさらに、話を続けた。


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― 新着の感想 ―
[一言] この運命はまさに心をえぐられます(:_;)
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