289.意識
◇
部屋の扉が丁寧に優しく叩かれたのはいつもの時間、ノワが去ったすぐ後のことである。その音にアメジストはゆっくり瞬きをしながら浅呼吸を一回、平常心を保ちながら自室の扉を開ける。
ガチャ、キィー……。
「本日もお疲れ様でございます、御嬢様。お迎えに上がりました」
そこには声で予想した通りの人物、ジャニスティが立っていた。
「ありがとう……ジャニス」
(何かしら、この感覚。それにジャニスの雰囲気が少し違う気がするわ)
迎えに来た彼からはいつも以上の温もりを、感じる。それは毎日会っているジャニスティではないような大人しやかな雰囲気をも、醸し出していた。
「御嬢様、いかがなさいましたか? どこか、具合でも」
「ふ、ぁぃえ、いいえ、ジャニス! 何でもないの、気にしないで!!」
ぼーっと彼を潤んだ瞳で見つめしばらく沈黙するアメジストの様子に首を傾げたジャニスティは真剣な眼差しで、それを窺う。その言葉でハッと我に返った彼女は自身の顔の前で大きく両手を振り慌てて、答えた。
頬を真っ赤というより、淡い桃色に染めながら。
「それなら、良いのですが。何なりとお申し付けください」
「えぇ……ありがとう。行きましょう」
いつもと変わらぬ笑顔で話したアメジストに彼も安堵し笑み、頷く。
コツ、コツン、コツ。
部屋を出てから通路をゆっくりと歩き食事の部屋へと向かっていた、二人。まるで何事もなかったかのような雰囲気で、会話をする。
「お食事までに、少し時間があるみたいなの」
「えぇ、そのようですね」
この日、それぞれの身に起こった出来事――驚きと感情を乱され、それは稀にも通常ではあり得ないような経験を含む濃い一日を二人とも過ごした。
しかし互いに心配させぬようにとの考えが無意識に頭の中で、働く。
――心の中に抱える様々な思いを悟られまいと、振る舞うのだ。
「あれからクォーツは、大丈夫かしら?」
「はい、ご心配には及びません。部屋へ戻りしばらくで目を覚まし、冷め止まぬ御嬢様との貴重なお時間を思い、楽しそうに話していました」
「そう! 嬉しい……本当に良かった」
数時間前、アメジストへ早く会いたいというクォーツの思いを汲み取ったジャニスティは学校の迎えへ一緒に連れて行った。
その馬車内でクォーツは会話出来るようになったことへの喜び、自分で勉強をしているという報告を元気いっぱいで話す。はしゃぎ疲れ眠った妹を屋敷到着後、ジャニスティは抱きかかえ自室へと運んでいた。
皆さま、レヴシャラ~をご愛読下さりありがとぉございます。
☆ん~、雑談(*´▽`*)
サブタイトルはいつも二字熟語を使っておりますが、ふと思いました。
「日本語にはたくさんの言葉があるのだなぁ」と(笑)
(誤字脱字など、何か気になる点がありましたらご報告下さい)
もし皆さまのお時間がありましたら、ご感想等頂ければ幸いです。
(励みになりましゅ(/ω\)きゃ)
ここまで連載してきて。
結末は決めている、最後まで、書けるかな、描きたいな。
今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします♪




