表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/471

27.懸念


 その笑顔に不思議そうな顔で少し首を(かし)げる彼は、どうしたのか? と聞いた。するとアメジストの淡い桃色の頬はさらに濃く染まり、笑顔で理由を話し始めた。


「うふふ。ねぇ、ジャニス。私、この子にお名前をプレゼントしたいの!」

「名前……ですか?」

 一瞬で顔色を曇らせるジャニスティ。


 嬉しそうに話す声に明るく答えたかったが、それは思いもよらない提案だったからである。アメジストの言葉を聞いたジャニスティは難しい表情に変わり、しばらく考え込んでしまった。


(ジャニス、困っているみたい?)

 良い考えを思いついたと自信あり気に話したアメジストであったが今、目の前で彼が見せる眉をひそめた面持ちで、彼女の心には不安が生まれる。


 出来ればアメジストの願いは、極力叶えてあげたいといつも考えているジャニスティ。だが、この件に関しては様々な危険や予想される結果が、彼の頭を悩ませていたのである。


 その一つがレヴシャルメという特殊な種族であるがゆえの、不安要素。


 この子がいつの日かレヴ族の元へ帰る時が来る可能性を考え、レヴの(おきて)を破ったと言われ(とが)められるのは自分たちではなく、この子ではないのかと懸念したのだ。


(しかし、確かにお嬢様の言う通り。この世界で生きていくには、名も言葉も必要だ)


 たとえ少しの間だとしても、此処で一緒に暮らしていくのに話せないのは困難を極める。その上、名前がないとなればベルメルシア家の者たちに、不信感を抱かれるのは間違いない。


――そう特に、奥様には、な。


「ジャニス……どうかしら?」


 人族とはまた違う思想と考え。助けたとはいえ人が他種族レヴシャルメの掟を破るような行動を勝手に取るのは、当然良くない事と理解はしていた。


 しかしアメジストの中でその子の存在は大きく、これからずっと一緒にいるのだと感じていたのだ。根拠のない自分の直感を信じる彼女の表情は、強い決意に満ちている。


「承知しました。今後を思うとリスクは多くありますが。このまま何もしない、というわけにもいきませんので」


 ジャニスティは少しだけ眉を下げ、アメジストの提案に賛同した。


「良かった! 私……この子と一緒にいる為に、頑張る!」

「はい、お嬢様」

(私は、貴女(あなた)の為……仰せのままに)


 それから二人の視線はレヴシャルメの子に向けられる。


「ねぇ、大切なお話があるの。聞いて下さる?」


「なになに?」と言わんばかりに、その子は大きなくりっとした目できょろきょろと二人の顔を見上げていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛い絵が描ける人が羨ましい! [一言] 更新お疲れ様です。
[一言] お話が語りかけて来る優しさそのままの可愛らしく優しいイラスト こころに染み入ります(#^.^#)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ