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257.幸福


 その後エデの運転する馬車は無事にベルメルシア家の屋敷へと、到着する。


 先に馬車を出るジャニスティはアメジストが降りる際に手を乗せやすいよう高さを合わせ自分の手を、添えた。いつもと変わらないはずの何気ない彼の優しさに指の先まで伝わるような温もりを感じ彼女の染まる頬、胸は少しだけ高鳴る。


「お嬢様、足元にお気をつけ下さい」

「あ、りがとぅ」


(なんとも、フフ)

 二人から流れてくる雰囲気に微笑むエデの瞳には初々しく想い合う者同士に、見えていたのだ。


「では、私はこれで」

「あっ、エデ! あの……いつも安全な送迎と、心地良い時間をありがとう」

「いえいえ! 滅相もないことでございます」


 エデとの挨拶に感謝の気持ちを口にしたアメジストの表情は普段より、幸せそうである。その後ろ、ジャニスティは気持ちよさそうに眠るクォーツを静かに抱き上げ馬車から、降ろした。


「まぁ、クォーツったら! ぐっすり眠って」

「えぇ。私たちにとっては短い時間ですが、この子にとってお嬢様と離れている時間はとても長く寂しいようです。そして今、会えたことが余程嬉しかったのでしょう」


 顔を見合わせるアメジストとジャニスティ、そしてエデ。三人の目に浮かぶ光景は言わずとも分かる――可愛いクォーツの元気よく、はしゃいでいた姿だ。


「そうね、私も一緒。学校はとても有意義な時間を過ごせて、お友達もいて楽しいけれど……やっぱりクォーツと離れている時間は、とても寂しかったわ」


 うふふとはにかみ笑った彼女の髪に当たる陽光が美しく輝き、目を細めたジャニスティもまた嬉しそうにこくりと頷く。


――心配はいらぬようだ。

 その幸福感はエデの心にも沁み入り安心感を、持たせた。


「それではアメジストお嬢様、ジャニスティ様、そしてクォーツ様共に、これからの三人に――幸運を」


「ありがとう……エデ、本当にいつも。ありがとう」


 笑顔で手を振り歩き出した彼女の後からクォーツを抱きついていくジャニスティは最後エデに「では今夜、店で」と一言伝え、離れた。



 コンコン、コンコン。


「はい、誰かね?」

「お父様。ただいま帰りました。アメジストです」

「あぁ、入りなさい」

「失礼いたします」


 ガチャ――キィ。


「おぉ、待っていたよ。私の可愛いアメジスト。無事にお帰り。今日の学校は楽しかったかい?」


「はい、お父様」


 ジャニスティがクォーツを寝かせるため自室へ行くとアメジストは約束の時間、父オニキスの部屋へと赴いていた。

 

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