244.友達
というより彼女はその見下されているような空気も全く、気に留めない。
そのためか「聞いてあげる」との御嬢様の受け入れの言葉を素直に喜び屈託のない笑顔で「ありがとうございます!」と答え自身の自己紹介に挨拶、そして“言いたい事”の続きをサラッと、話し始めた。
「では、えーっと。まずは……(すぅ~ッ)失礼します! お初にお目にかかります、私フレミージュと申します。それであの、回りくどい説明とか、とても苦手なので。単刀直入に、不躾な発言をお許しくださいね!」
そう言うとさらに御嬢様方へ、近付く。
ずいーッ!!!!
「ちょっと、あなた! 近いわよ」
「話して良いとは申し上げましたけど、調子に乗らないで!」
「何がしたいのかしら? 不躾って――」
「フレミージュさん!?」
様子がおかしいとアメジストは名を呼び近くへ行こうとすると彼女は再びこちらを向き手で制止し「大丈夫だから」と、笑う。
(一体、何を……)
「ではお姉様方へ!! 陰でコソコソ、ヒソヒソ、ごにょごにゅと! そんなのは、素敵な淑女のなさることではないと思います! それに、何より、私の大切なお友達――アメジストちゃんに失礼じゃないですかッ!」
なんとフレミージュは「先程からお話が丸聞こえだったのですよ」と、上級生でもある御嬢様方に一言“物申した”のである。
「――!?」
(フレミージュさん! そんな私の為に、どうしてそこまで!?)
アメジストは驚き声も出ない。
自分の口を両手で抑えそして友人からの『大切なお友達』との言葉に思わず、瞳を潤ませる。
「そんな。私たちは、別に」
「悪気はなくて……ねぇ」
御嬢様方が苦し紛れに言い訳をしようとした、その時――。
パン、パン――ッ!!
「フレミージュさんの、言う通りですね」
その手をゆっくりと叩く音が聞こえた途端ざわついていた校庭内から出入り口門前は一瞬にしてシンと、静まり返る。
響いた声は厳しく、強く、ぶわっと痛い風の感覚がその場にいた者の身体中に吹き抜けるようだった。恐る恐る皆の視線が向いた先に現れた人物に生徒たちは、息を呑む。
「せ、先生……」
「あの違うのです、先生! 私たちは、ただ」
「そうです! 『素敵ですねぇ』と、話して……」
ゆっくりと瞬きを一回。それから先生は口を開く。
「そうですか……しかし、私も聞いていましたが。貴女方の言動は否めないでしょう」
「うぅぅ、そ、それはぁ……」
御嬢様方を注意しているのはアメジストを呼びだした、あの先生だ。




