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243.信念


 フレミージュのおかげで沈みかけていたアメジストの表情は明るくなり委縮するような緊張もなく自然な笑みが、零れる。


「今日はいつもよりたーくさん、楽しかった! あっ、明日もまたみんなで一緒にお昼ご飯食べましょうよ♪」


 此処で起こっていた状況などお構いなしで気さくに話しかけてくれるその言葉が今のアメジストにはとても、ありがたかった。


「私もです! 皆様と和やかに過ごせて、本当に楽しかったです。それに今日は色々と……フレミージュさん、ありがとうございました」


「えぇ? 私は何もしてないよ~…って、もうこんな時間!? それじゃあアメジストちゃん。また、明日ね」


「はい、ありがとうございます。また、明日――」


 頬を赤らめたまま、はにかみ会話をするアメジストの気持ちを感じそれに応えるよう満面の笑みで返事をしたフレミージュは数秒、ニコニコ無言。その後、サッと表情を締めジャニスティへ向かって、一礼をした。


「――ん?」

(なんだろうか、あの子は何か、私に伝えたいことでもあるのか?)


 ジャニスティはその時、初めて会うフレミージュの言葉や動作の奥にある何か強い信念と意志を、感じる。


「元気の良い、素敵なご友人ですね」

「えぇ、とても。クラスの皆様も明るく……仲良くしてくださって」


 アメジストはこの日あった出来事を(先生から呼ばれた話も含めて)思い浮かべながらジャニスティへ言葉少なに答え、話す。


 すると長い髪を勢いよくなびかせるフレミージュが突然ある方向へ振り向き足早に、歩いていく。


 くるんっ――スタスタスタッ!!


「な、何ですの!? あなた」

「あの、お姉様方。ちょっとよろしいですか?」


「突然、失礼じゃありませんこと!?」

「何よ、(わたくし)たちに、何かご用かしら?」


 彼女は上級生相手に周囲の度肝を抜くような驚きの行動に、出る。


「はい! ご用があります!! でも……すみません。先にご挨拶を」


 ざわざわ……。


 瞬く間に、注目の的となる。「なになに? どうしたの」と、遠巻きに帰り際の生徒たちが集まり皆驚き、足を止めた。


――それもそのはずである。


 彼女が強気で声をかけたのは学校でも有名な名家や旧家の、御嬢様たちだった。その中でも一番目立つ華美な御嬢様が一歩前へ出て、答える。


「あら? 少しは礼節を重んじる心がおありのようね、褒めてさしあげますわ。せっかくだから聞いてあげましょう? どうぞ」


 自分たちは優位だと言わんばかりの言動にもフレミージュは臆せず、動じなかった。


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