表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/471

230.根気


「ぼちゃ……ぼま? うゆぅ、それはどういう言葉ですのぉ?」


 この日も驚く速さで(ひと)族の言葉や様々な知識を習得していたクォーツは自分の中に吸収したものの中から『坊ちゃま』の意味を探す。


 それは小さな頭の記憶の引き出しを順番に開けていく、身振り手振りな仕草。


 時折り「うみゅいぅー……」と難しい顔で一生懸命に考える妹の姿がまたとても愛おしく感じ今のジャニスティにとってクォーツは、目に入れても痛くない程に可愛いかった。


「クォーツ、そんなに悩まなくていい。その言葉は気にするな」

「んなにゅ? そうなのですか? うー。でもぉ……」


 髪をふわりと撫でながら兄ジャニスティは優しい口調でクォーツに、話す。が、しかし――聞いた言葉の意味を自分の中にある言語とのすり合わせで見つけられない事に少々不満そうに頬を赤らめ“ぷくっ”と膨らますと「諦めきれないのです」と、ぽつり。


 学ぶ事に対してとても、意欲的な様子を見せた。


「いや……そういえばだ、クォーツ、その“おじちゃま”はどこで覚えたのだ?」


 話を逸らすように質問したジャニスティだがその言葉は本心で「まさか本に載ってはいないはずだが」と疑問に思ったのだ。


「んーえっと、あの、自分よりもたくさんお歳を取っていたら“おじちゃま”と書いてたのですの……」


 首を傾げながら透き通るようなお目めをくるんと潤ませ、答えた。その話の流れでジャニスティはふと、気付く。


「クォーツ、それはもしや“叔父さん”や“叔父さま”では?」


「んなふ! そうです? お兄様! 私、間違いで覚えているのですかぁ!?」


 りんごのように真っ赤っかな顔で腕をブンブン振り恥ずかしそうにエデの方を見ると目が合った彼は笑いながら、口を開いた。


「はっはは、大丈夫。私は、どちらでも構いませんぞ。クォーツお嬢様の呼びやすい方で」


 間違ってしまった自分に落ち込み一気に不安気な表情になっていたクォーツはエデの答えにパァ―ッと、明るい笑顔になる。


「はぁ……エデ。飛びついたことといい、重ね重ねすまないな」

 溜息混じりにジャニスティはエデにお詫びの言葉を、伝えた。


「いえいえ。しかし、クォーツ様の必死なお姿や何事も最後まで諦めずに頑張ろうとするその姿勢。まるで、アメジストお嬢様に似ていて驚きますな」


 エデはそう言うと抱いていたクォーツをゆっくりと下ろし瞳を合わせ、そして――。


「さて、ジャニスティ様」

 何事もなかったかのように彼はまた優しく、話しかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クォーツちゃんはアメジスト様の本当の妹のよう!! (*^。^*) ひたむきで可愛らしいですね(*^。^*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ