表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
226/471

226.拠所 *

いつもご愛読頂きありがとぉございます。

こちらのスピナ専属馬車の御者さんは(/ω\)

『195.伝心』にて少し説明しております。


 その意味深な発言を聞いていたのは傍にいた、ノワだけである。


 彼女は屋敷にいる時と全く変わらぬ美しい姿勢で真っ直ぐと立ちスピナの後ろに、控える。一切顔色を変えない、人形のような整った顔で(まぶた)を少し閉じその長い睫毛(まつげ)はまるで作り物のように、均等である。


 それは言葉では言い表せない雰囲気を、(まと)っていた。


「用事も済んだことですし。ノワちゃ~ん、帰りますわよ」

「かしこまりました、奥様」


 カッカッ――……。


 凛とした花のように真っ直ぐと前だけを向きスピナについて行く。どこまでも従順に見えるノワの姿から感じるのはやはり感情のない、“無”の力。その視界にも気にも触れない程に薄い空気感がスピナにとって邪魔にならず、好都合であった。


 ガチャ、キィー。


「お疲れ様でございます、スピナ様」

「えぇ、ありがとう。お前がいてくれるだけで、私は安心して外出できるわ」

「なんと身に余るお言葉、恐縮至極に存じます」

「ふふっ、何言ってるの。お前だけは、そんなこと気にしなくて良いのよ」

(そうよ、ずっと。私を影で支え黙ってついて来てくれた。お前だけは、ね)


 キィー……ガチャ。


 スピナ専属の馬車は彼女が「お嬢様」と呼ばれていた幼少期、そして両親が亡くなってからも変わっていない。その為、自然とこれまで彼女が歩んできた人生の大半を知る御者とはスピナも笑顔で、言葉を交わす。


『何があろうと他言無用、余計な詮索や意見は一切しない』


 昔に比べ現在のスピナは人が変わってしまったにも関わらず何も言わず見守り黙って傍で仕える年老いた御者の名は、アンロ。


 彼は長年、彼女だけを馬車に乗せ続けている。その“スピナ専属”というだけあり変なこだわりと癖のある彼女相手に絶妙の拍子で馬車の扉を開け、閉める。


――スピナが全心を許し信頼する拠り所、この世で唯一と言えるだろう。


「ノワ様もどうぞ、お乗り下さい」

「はい」


 多くの馬車が着けるその場所でノワの瞳がふと、横を向く。燃えるようにギラリと光った赤の瞳は――クォーツがレヴシャルメ種族であるとスピナへ報告した、あの時と同じ。


 その一瞬だけ光ったノワの瞳孔が捉えたのは馬車へ戻ってきていた、エデだ。


「……」

「……」


 常に“無”であるが桁違いに強い気を持つ、ノワ。

 強大な“魔力”と気配を消すことの出来る、エデ。

 一秒にも満たない時間の中で、目が合う。


 まるで色の無い――可視光線のように、耀(あかる)


 しかしその不思議な出来事に気付く者は、誰もいない。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] カオメドとスピナには、これからもまたなかなか一筋縄にはいかないのかも知れないですね。 ノワの存在も独特で以前から気になっていますが、物言わぬ御者のアンロもスピナにとってはきっと大事な存在…
[一言] 姫様の気品を感じてしまいます。 私には書けない(^^;)
[一言] ノアさんとエデさん。実は親子か同類だったりして。 ふふっ色々予想するの面白いですね。 名探偵...いや迷探偵みことでしたぁ(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ