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210.応援


 職員室は少し離れた隣の校舎にある。そこへ向かう足取りは思っていたより、重くない。


「大丈夫……きっと悪いお話ではないわ」

 多少の不安はあるもののアメジストの気持ちは前向きで、落ち着いている。


 その理由は恐らく沈んだ気分も吹き飛ばす程の明るい皆の笑顔と、応援。フレミージュやクラスにいる仲間の存在が今何よりも心強く感じ、支えとなったからだ。


 いつもこうして彼女の周りには優しさと思いやりが、溢れている。窓から射していた陽光のようにぽかぽかと、温かく幸せな気持ちを学校(ここ)は与えてくれるのだった。


「静かな、ところ……」

(あまり職員室へは行かないから、この辺りは人通りが少ないのね)


 隣の校舎へ行くために通る渡り廊下に差し掛かったところでふと立ち止まり屋根の隙間から、空を見上げる。


 それは朝に見た清々しい青空とはまた違う美しさを感じた。


(これから、もっとたくさんの方と出会いたい)

「私は、この学校がとても好きだわ」


 そうポツリと呟き少しだけ熱くなる頬で一人微笑むとまた、歩き出す。


 アメジストの心身に染み付いた責任感はいつ如何なる時も「自分はしっかりしていなくてはいけない」という思いと、緊張があった。しかし今はなぜか、その自制する感情が少しだけ和らぎ解放されていた。


「えっと、職員室は……あった」


 コン、コン、コン、コン――。


「はい、どなた?」

「こんにちは先生、ベルメルシアです」

「あら、早かったわね。お入りなさい」


 ガチャ、キィー。


 アメジストは控えめに「失礼します」と職員室の扉を開けた。その言葉へ返事をした女性の柔らかな声は年の功を、感じさせる。ホッと安心させる穏やかで優しい口調はつい先程までアメジストが抱えていた不安を一瞬で、忘れさせる。


「お呼びだと聞き、参りました」

「えぇ、いらっしゃいアメジストさん。こちらへお座りなさい」


 先生が右手のひらを向け手招く先には、応接室にあるような綺麗なソファが並んでいる。アメジストは「生徒である自分などが座っても良いのだろうか?」と少し戸惑いながらも背筋を伸ばし、浅く座る。


「授業疲れたでしょう? 今、お茶を入れるわね」

「え、あの先生!! そんな」

「少し待っていてちょうだいな」

「はい……」


 昼食の時間――待つ間ふと辺りを見回すとまるで人払いでもしたかのように静かな、部屋。


(他の先生が、誰もいない)


 この後、彼女は自分が何故此処へ呼ばれたのかをすぐに理解できる重要な話を、聞くのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] この先が、読み切れないです。 アメジストちゃんは、何で、職員室へ一人だけ呼ばれたのだろう? そして、先生から何を、告げられるのだろう? 推理小説を読んでいるみたいに、次々と、謎が出て来ます…
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