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21.末裔


「私の……種族は、人ではない……」

 突然打ち明けられたジャニスティからの話。しかしそれを聞いたアメジストは不思議と驚かなかった。


「サンヴァルの……末裔(まつえい)

 その種族の名を聞き「そうだったの。だから血を」と、彼女は納得した。



『サンヴァル種族』

 見た目は(ひと)族と変わらず見分けがつかないが、成長が(ひと)族よりも三倍遅い。その為、年齢不詳と言われるのだ。現代の生き残りは少ないとされる希少な種族である。

 昔は人から血を受け身体に入れ続けないと生きられなかった。その後、時代と共にサンヴァルの血統は薄まり(純血が減り)血を求めずとも生きられるよう変化したのである。



「魔水、の血を……か、回復して」


「はぅ?」

 可愛い声でジャニスティのおでこから手を離したレヴシャルメ族の子は、アメジストの顔をジーッと見つめた。まるで何かを伝えているかように。


「えっ?」

(私は、ジャニスを助けたい)


 ガラスのような瞳に見つめられ、自分の本心に気付いたアメジストは、思うがままの行動に出ていた。


「ジャニス、もう話さなくていいのよ。また元気になったらゆっくりと聞かせて」

 そう言うと彼女は急いで食器棚からスプーンを取ってきた。


「んあ!」

「うん、そうよ。私が飲ませてあげようと思って」


 レヴの子が話す声にふふっと、笑いながら答えるアメジスト。言葉が分からないはずの二人は、何故か通じ合っていた。


「ジャニス、少しでいいから口を開けて」

「……」


 とにかく魔水を飲ませないと、そう思ったアメジストは少し開いたジャニスティの下唇に、優しく触れた。そして少しづつ、少しづつ時間をかけ彼の口へ運んでいく。


「どうかしら? 顔色も変化ないし、良くなっているのかが分からないわ」


 彼の頬に触れ、体温を確認する。

(あまり温かくないみたい)


 それでもアメジストはじっくり、ゆっくりとジャニスティの身体へ魔水を流し込む。


(サンヴァル族って、鮮度の高い血を求めて生きていたって聞いているわ。この魔水には、それを保つ魔法がかけられているのね)


 様々な種族が生きるこの世界。学校で種族についての授業があり、簡単だが教育がされる。アメジストの知識はその程度であった。


――血があれば元気になるのかしら?


 色々な考えと思いが頭の中を駆け巡っている。そして『良い事ではない』と分かっている答えに辿り着いてしまう。


「……ジャニス」

 変わらず苦しそうなジャニスティの状態を見て、彼女はある決意をするのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり アメジスト様は自分の身に何かしてしまうのでしょうか??
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