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188.見守


 続けてオニキスが話したのはその大雨の中エデが、どのような心境であったか、ということ。


「日々、アメジストとジャニスの事を見守ってくれている(エデ)が『大丈夫だ』と判断した。だからこそ、クォーツの命を繋ぐことが出来たのだ」


 エデには絶大な信頼を寄せている、オニキス。

 彼はベルメルシア家専属の御者でありまた、同じサンヴァル種族であるジャニスティの事を見つけその魔力までも見出し、オニキスと引き合わせた。


 あの夜、“終幕村”で会ったベルメルシア家当主(オニキス)の鋭い眼光に(かな)ったジャニスティはその後、エデによる厳しい指導で、立ち直る。


 彼はジャニスティの保護者的な存在でありいわば、恩師でもあるのだ。


「いえいえ。助けることが出来たのは、アメジストお嬢様とジャニスティ、二人の力によるものでございます」

 馬車を運転するエデは振り返ることなく「私は何も」と、答える。


「ん~、果たしてそうだろうか? 助けられる命を、懸命に救助しようとする二人の姿を目の前に、君自身も決断した。アメジストたちの勝手な行動を許した君こそが――本当はその胸に誰よりも一番の()()を抱えていたのであろう?」


 クォーツを助けた大雨の日、アメジストの強い想いと意思を感じ取り助力しようと決めたのは、ジャニスティだけではない。


――そう、エデもまた。ジャニスティと同じ心であった。


 アメジストとジャニスティの二人が瀕死状態であるその命を助けると決意した瞬間から、万が一。何かよくない事態が起こったとしても自分が最後まで責任を持つ覚悟を、密かにしていたのである。


「ふふ、さすがはベルメルシア家当主。全てお見通し、ということですな」


「ははは、いや違うさ。それは私の事を買い被り過ぎだというもの。ここから先は、何も――『私は何も』考えていないのだよ」


 さらりとエデの言葉を借りつつかわしたオニキスは両手を握り締め「兎にも角にもあの子(クォーツ)が助かって、本当に良かった」と改めて自身の心に生まれた悦びを、確認する。


「フッ、そうですか。では旦那様、続きを――。結果的には命を助けることができたクォーツ様が、元気に生きて屋敷にいるという事は大変喜ばしく、お嬢様とは大変素晴らしい出会いだったと私は思っております」


「うむ。私も心から、強くそう感じているよ」


 この瞬間オニキスの頭の中では可愛い二人の愛娘が満面の笑みを見せそして、姿を思い出す彼自身もまた、その表情は父としての優しい顔に戻っていたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] これは本当に喜ばしい事ですよね(*^。^*)
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