表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/471

148.計略


(目を通すまでもない。それ以前の話だ)

 終始このような態度で話す彼に呆れ返っているオニキスの頭には、もう契約成立の可能性は無い。


「あぁ、ありがとう。それで、せっかくの御社からの提案だが」

「はい! どうぞこちらに――」

「すまないが、今回は見送らせていただくよ」


 そのオニキスの一言で、彼の表情は一変する。


 バーンッ!!!!


「なッ……! 何故です!? 見たでしょう!!」

 先程までの軽い感じで上機嫌だったカオメドは急に、豹変する。声を荒げテーブルを叩き、勢いよく立ち上がった彼は怒りをあらわにした。その行動にもオニキスは涼しい表情のまま全く動じる様子もなく、答える。


「あはは、いやいや。君を否定をしているわけではない。それぞれに商売のやり方はあるだろうからね」

「そう! そうでしょう? では――」

「そう、だからこそ。君との契約はないと言っているんだが」

「んなッ!? な、何故……こんな事、有り得ない!! そんな、そん……な」


 一瞬、落ち着くような素振りを見せたカオメドはオニキスのサラッとした冷静な一言に再び、激高し始める。


「カオメド様、落ち着いて下さい」

 興奮状態で怒鳴り始めた青年を(なだ)めるように声をかけ抑えたのは執事のフォル。その視線は凄まじい鋭さで表情は鬼のように、厳しい。


「あぁ、どうも。いや、だって、おかしいんだ。何故――」

 ソファにドスンと腰掛け頭を抱え独り言のように呟いていた彼はハッと、何かに気付き顔面蒼白。それから「ハハッ、ハハハ……」とバツが悪そうに笑う。


「カオメド君、()()()聞いても良いかい? その『何故』という言葉の意味を。あぁ! そうだな、これは私の勝手な想像なのだが、その手に光る何らかの“魔法”が、私に全く効いていないことへの疑問――というところだろうか」


 どうかね? と笑顔で訊ねるオニキスの顔を見ることも出来ず下を向いたままのカオメドはしばらく、黙りこくっていた。


「――クッ!!」

 唇を噛み悔しそうな声を上げた彼はいきなりサッと、顔を上げる。そのまま開き直るかのような満面の笑みで、答え始めた。


「……は、ははッ、オニキスさん。それはまた大きな勘違いですよ~。僕にはそんな大層な力なんて、ありません! それに」

 そう言いながら彼はおもむろに立ち上がり部屋の入口へと、歩き出す。


「フフッ、まだ終わっていませんので。しかし一旦、この場は失礼しますよ」

 そして扉に手を置くと鼻で笑うように話し言葉を吐き捨て、去って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カオメド君。 作戦失敗で退場ですね。 ぷちざまぁですね(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ